週刊朝日 2022年9月2日号より
週刊朝日 2022年9月2日号より

 なお、築40年以上のマンションは昨年末時点で115.6万戸に上り、マンションストック総数の約17%に当たる。これが10年後には約2.2倍の249.1万戸、20年後には約3.7倍の425.4万戸となる見込みで、今後20年で加速度的にマンションの老朽化が進むと見られている。

 老朽化したマンションであっても建て替えが進まない背景には、主に二つの要因がある。一つは、先の例のように、区分所有者の合意形成が難しいことだ。マンションの建て替えを決議するには、通常は区分所有者総数および議決権総数の5分の4以上の賛成が必要になる。しかし、区分所有者の高齢化により、建て替えという大きな出費を伴うことに対し、賛成が得られにくくなっている。

 かつてマンションは「いずれは住み替えるつもり」と考える人が多く、「永住するつもり」という人は少数派だった。しかし90年代の半ばからそれが逆転し、最新の調査によれば「永住するつもり」という人が過去最高の62.8%に上った。さらに60代、70代、80代以上と年齢が高くなるほど永住意識が高まり、マンションを「終のすみか」と考える人が増えている。その一方で、築40年以上のマンションでも「修繕または改修工事をしっかり実施すれば建て替えは必要ない」と考える人が半数以上を占めている。マンション終末期問題について詳しい米山秀隆さん(大阪経済法科大教授)は言う。

「建て替えには仮住まいを決めて引っ越すなど、多くの手間と労力がかかり、それなりの資金も必要。“自分が生きている間はこのままでいい”という高齢者が多い」

 建て替えが進まない二つ目の要因は、資金面のハードルだ。国は古くなったマンションの建て替えを促してはいるが、これまでに建て替えができたのは敷地や容積率に余裕があり、建て替え前より部屋数を増やして、売却益で費用の大半が賄える一部のケース。ディベロッパーが余剰床を売却して建設費用を捻出し、区分所有者にはそれほど金銭的な負担がかからない建て替えが多数を占めていた。

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