週刊朝日 2022年9月2日号より
週刊朝日 2022年9月2日号より

「マンションという集合住宅は、管理組合の多数決で決まる民主主義の世界です。“人生のタイミング”が異なる複数の世代が交じることで、将来を見据えた維持管理の合意形成を得ることが難しくなる場合も多い」

『60歳からのマンション学』などの著書で知られるマンショントレンド評論家の日下部理絵さんは言う。マンションは大勢の人が住む共同住宅であり、建物や敷地などを管理するため、マンションの購入者(区分所有者)全員で管理組合を設立する。一戸建てと違い、自らの懐具合や人生のタイミングで修繕したり、「古くなったから」「空室が目立つから」といって簡単に建て替えができるわけではない。

 ひと昔前まで、新築マンションを購入するタイミングといえば、新婚時や1人目の子どもが小学校に入学する前というのが一般的だった。入居後には、さほど年齢の変わらない世代が同じように年を重ね、ある程度懐具合も似通っていたため、合意形成を図りやすい側面もあった。

 ところが今は、都市部を中心に新築マンション価格が軒並み高騰し、中古マンションのほうが売れている時代だ。新築時からいた世代に加え、中古マンションを買った若い世代が、新たな住人として入ってくるようになった。日下部さんは言う。

「例えば、同じマンション内に、独身者、子どもが小さな若夫婦、年金暮らしの老夫婦、不動産投資家などが存在すると、生活ぶりも大きく異なることで、修繕工事ひとつとっても話がまとまりづらい。特に年金暮らしで毎月の支払いがやっとという住人に、値上げや一時金の話をしても、すんなり合意形成が得られるわけがありません」

 マンションは私有財産である一方で、規模が大きくなればなるほど、その管理状況は地域にも影響を与える。建物がいよいよ老朽化すれば、いずれ必要になってくるのが「建て替え」もしくは「解体」だ。しかしマンションにおける建て替えや解体は極めて困難で、なかなか進まない現状がある。マンションの老朽化とともに件数自体は増えているものの、建て替えに着手している数字は、実施中・準備中を含めても累積で316件に過ぎない。

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