「The Noodles & Saloon Kiriya」のkiri_Soba(潮)は一杯850円。2種のチャーシューがおいしい(筆者撮影)
「The Noodles & Saloon Kiriya」のkiri_Soba(潮)は一杯850円。2種のチャーシューがおいしい(筆者撮影)

■住宅街の一角に驚くほどの行列 車屋から転身したラーメン店主

 東武アーバンパークライン(東武野田線)の初石駅から徒歩4分。住宅街の一角に驚くほどの行列を作る人気店がある。「The Noodles & Saloon Kiriya」だ。看板メニューの「kiri_Soba(潮)」は、鶏の淡麗のうまみに魚介系を巧みに合わせ、ダシの分厚さと複合的な味の構成で、口に入れた後の味の広がりが素晴らしい一杯だ。

 ウッド調でカフェのようなおしゃれな店だが、なぜか店のテントには「造って売る店…! 和菓子おおつき」と別の店の名前が書いてある。以前入っていた和菓子屋の看板が残るこの店は、店主の青木成憲(よしのり)さんが開業資金70万円で作った手作りの店だという。

 青木さんは幼い頃から千葉県流山市の初石で育った。先祖代々からこのエリアにゆかりがあり、昔は広い農地を持つ農家だった。その後、森や畑だった場所が住宅街になり、街が栄えていく。

 両親がラーメン好きで、母がよく車でラーメン屋に連れて行ってくれた。親が共働きだったこともあり、家では1人でインスタントラーメンをよく食べていた。この頃、サッポロ一番に納豆をかけて食べていたのがヒントになり、現在は店でもメニュー化している。

幼い頃に食べたラーメンをヒントにした「煮干納豆」ラーメンもある(筆者撮影)
幼い頃に食べたラーメンをヒントにした「煮干納豆」ラーメンもある(筆者撮影)

 大人になり、車の整備士として働いていた青木さんは、20歳の頃からラーメンの食べ歩きを始める。21歳で出会った妻の父が東京都江戸川区の名店「ちばき屋」店主の千葉憲二さんと同級生だったこともあり、「ちばき屋」が2人の思い出の味になる。他にも、「和風らーめん夢館」(柏市)、「一三湯麺」(松戸市)、「元祖一条流がんこ十三代目」(松戸市)など千葉県のラーメン店によく通っていたという。

 27歳で実家の車屋を継ぐことになり、仕事をしながら、口コミサイト「ラーメンデータベース」でレビューを書いていた。発信を続けていると、徐々にラーメンの仲間が増えていった。一方で、本業の車屋では不景気もありディーラーからの仕事が激減。車屋を続けるのは厳しいだろうと判断する。このとき、青木さんは一生続けられる仕事とは何なのか考え始めたという。

「年をとって1人でもできる仕事と考えて、パッと出てきたのが大好きな“ラーメン”でした。自作ラーメン仲間も多かったですし、レシピを参考にラーメンを作ってみようと思い立ちました」(青木さん)

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当時40歳。家族もいる。