防災科学研究所の研究発表によると、地震計のノイズで洪水の発生を予測しようとしている。

 人口の多い下流域で洪水被害を抑えるため、多くの支流が複雑に分岐する上流域すべてで流量を観測するのは現実的でない。一方、地震計のノイズには河川の流量の増加も記録されている。

 そこで地震計のノイズと、地震計が近くにない地点でも水の流れを数値計算で再現する手法などを駆使し、上流域の河川流量を推定したという。検証すると、実際の流量にかなり一致した。この手法を全国に広げ、近い将来、地震計の観測が洪水観測にも使えるかもしれないという。

 さらに、伊藤さんは「大雨が降り、地滑りに伴う振動が地震計で観測されると、将来の地滑りや土砂災害に役立てられるかもしれない」と話す。

 地震計以外にも、東大地震研の加藤さんは「光ファイバーケーブルを使った振動計測が最近行われている。ここ5、6年の技術で、世界的に脚光を浴びている」という。

 高速情報通信の光ファイバーケーブルは海底を含め、世界中に張りめぐらされているが、地面の揺れの計測にも使えるという。

 光ファイバーケーブルに計測器をつけ、光パルス(矩形波)を入射するとファイバーの不純物で散乱された光が計測器に戻る。ケーブルは振動で伸び縮みし、振動で戻ってくる信号が変化する。この変化を解析する。

 ケーブルの伸縮は任意の地点で検出できる。何メートルか間隔を設定し、たとえば10メートル間隔なら、100キロメートルのケーブルに1万の観測点ができる。その間隔で、ひずみの計測ができる。

 地震が起きると、地震波の進行方向に振動する縦波のP波が出る。一方、地震波の進行方向と垂直に振動する横波のS波も出て、地面を大きく揺らす。P波を素早く解析し、S波の前に情報を伝えるのが緊急地震速報だ。

 光ファイバーケーブルの振動計測では、画像処理でP波やS波をきれいに見ることがきる。P波の画像処理を素早くすれば、S波の前に緊急地震速報を出せるという。

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