これには課題もある。「日本では光ファイバーをなかなか使わせてくれない」と加藤さんはいう。国土交通省は国道沿いにも光ファイバーケーブルを設置しており、加藤さんたちは、四国でこのケーブルを使わせてもらい、テストを行っているという。
光ファイバーケーブルに振動計測器を設置できても、1本のケーブルの情報では精度が低いという。複数本のケーブル情報を多面的に解析すると精度が上がる。さらに、P波を見つけ出す「画像処理を即座にしないといけない」(加藤さん)。
モウラスの観測網で、地震以外のシグナルを防災に役立てる取り組みもある。伊藤さんは「ハワイでは火山帯近くでスロー地震が起きている」と話し、火山噴火が起きやすくなっているという。防災科学研究所の研究発表によると、地震波ノイズが地下構造の変化を監視するのに役立つ。いくつかの火山で噴火前に地下の変化を捉えることができたという。
まだ課題もある防災研究だが、実用化に向けて着実に歩み始めている。
(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日オリジナル記事