地震計の〝ノイズ〟が防災に役立つという
地震計の〝ノイズ〟が防災に役立つという
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 データには「ノイズ」という不要な情報がある。地震計のノイズには「スロー地震」という、巨大地震を予測できるかもしれないお宝情報があることが発見された。これを防災に役立てようと世界中で研究が進められている。

 地震大国の日本が警戒するものに、首都圏直下地震のほか、南海トラフ巨大地震がある。政府の中央防災会議は「科学的に想定される最大クラス」とし、静岡県から宮崎県の一部で震度7クラス、周辺の広い地域で震度6を想定する。

 地震発生の仕組みを解明しようと、日本や周辺域の地震計データの解析が進められている。

 20年ほど前のこと。四国付近の地震波形から、普通の地震よりもゆっくりした微動が発見さられた。従来は“ノイズ”とみられてきた。これが東海地方や紀伊半島、四国、さらに世界各地で発見され、「スロー地震」と呼ばれるようになった。

 伊藤喜宏・京都大学防災研究所准教授は「日本でのスロー地震の発見によって、世界中の研究者が気づくようになった」と解説する。

 地球は中心から核、マントル、地殻の層構造で、上部マントルと地殻の付近に硬い板状の岩盤(プレート)がある。プレートは、地球内部を対流するマントル上で、わずかずつ動く。たとえば、大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込むと接触面が固着し、ひずみができる。これを修正する動きが地震を引き起こす。

 南海トラフで、なぜ巨大地震が起きる可能性があるのか。加藤愛太郎・東京大学地震研究所教授によると、このあたりは年間4~6センチくらいの速度で海洋プレートが沈み込んでおり、固着のひずみが大きくなっているという。広範囲にわたる接触面のひずみを修正する動きが、巨大地震を引き起こす。

 地震の規模を示すマグニチュード(M)と固着のひずみの関係は、M1クラスで1センチ程度、M6で1メートルくらい、M8になると10メートル程度とされる。

 南海トラフ域は1946年の昭和南海地震や44年の昭和東南海地震があった。それより大規模だったのは1854年の安政南海地震と安政東海地震、さらに1707年の宝永地震。安政や宝永の地震と同規模の地震が起こるとすると、少なくとも百数十年のひずみの蓄積がある。

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ひずみを解放する速度が遅い