(C)Tokuko Ushioda, Courtesy PGI
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■夫婦で同じ部屋の中を写した

 一方、家の中を写していたのは潮田さんだけではなかった。夫の島尾さんも日々の生活にレンズを向けていた。

「島尾の『まほちゃん』(Osiris)という写真集があるんですけど、それを盛んに撮っていた。何しろ、子どもの世話はお父さんが一手に引き受けていたから、うまいものですよ」

 島尾さんの写真集には、おかっぱ頭の「まほちゃん」が一生懸命に歯磨きをする姿や、友だちといっしょにベッドの上で遊ぶ姿など、楽しそうに暮らす日々が収められている。潮田さんは言う。

「そんなふうに軽やかに、島尾が身のまわりのことを作品にできるのはうらやましく思ったり、(こうやって撮るのかあ)、なんて思いながら見ていた。だから、私はさらさら『作品』を撮ろうっていう気持ちにはなれなかった。絶対にこの人のまねになると思ったから」

 しかし、そうはならなかった。島尾さんは同じ部屋の中で写した2人の写真の違いについて、こう語る。

「私は意図して撮っていたんだけど、潮田さんは何げなく撮った。目的がないから、対象に向かって集中するんじゃなくて、自分の内側を撮るような感じなんだ」

(C)Tokuko Ushioda, Courtesy PGI
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■自分の元の姿を取り戻した

 潮田さんは4年前、写真集『本の景色 BIBLIOTHECA』(ウシマオダ)で土門拳賞を受賞した。

「最近、この洋館で写した写真を見返しているうちに、(ああ、これは、いまにつながっている)と、思うようになったんです。自分の家の中を撮り始めたときと同じように、いま、本を撮っている。そういう物を撮るのが楽しいの」

 そう語る潮田さんに対して、島尾さんは、「自分の内面に向かって写真を撮っていたということに、本人がいまごろになって気がついた。というか、自分の元の姿を取り戻した、ということなんでしょう」。

 潮田さんの原点となった作品は、撮影当時はあまりにも斬新すぎた。洋館の片隅に40年間、タイムカプセルのように眠っていた写真がようやくいま、掘り起こされ、日の目を浴びようとしている。

アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】潮田登久子写真展「マイハズバンド/My Husband」
PGI(東京・赤羽橋) 1月26日~3月12日

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