旅行に持ち込んだ長女の医療機器/江利川さん提供
旅行に持ち込んだ長女の医療機器/江利川さん提供
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「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害を持つ子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出会った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

■医ケア児の長女との家族旅行

 コロナ禍で、なかなか自由に移動ができない日々が続いています。感染が比較的落ち着いていたお正月に、わが家は2年ぶりに近場のホテルに2泊しました。このホテルは真冬でも温水プールに入ることができますが、今回はプールや温泉を控え、敷地内を散歩したり部屋から見える海を眺めたりしながら、ゆっくりと過ごしました。多少の制限はあっても、やはり日常から離れるとホッとしますね。今回は、障害のある子どもの旅行や外出についてです。

 旅行は医療的ケアが必要である長女も一緒でした。彼女が人工呼吸器や酸素ボンベを使うようになってからは、旅行時はレスパイトケア(病院などが、家族が行っている介護を一時的に代替するための入院のこと)を利用していたため、本格的な医療機器を持参して出かけるのは、初めてでした。

■現地で困るよりずっといい

 私は長女が小さな頃から、彼女を連れて遠出をする時には、可能な限り滞在先にこちらの情報を伝えるようにしています。宿泊するホテルや移動手段について調べ、どんな情報を伝えればスムーズかを考えてから連絡をします。手間のように見えるかもしれませんが、実は現地で困るよりずっと楽なのです。

 今回もチェックインの前日にホテルにTELをしました。

「娘は医療的ケア児という医療機器が必要な子どもで、人工呼吸器や酸素ボンベを持ち込みたいのですが、あらかじめお伝えした方がよいかと思い、連絡させていただきました」

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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