「かし亀」3代目店主の駒剛行さん。高級中華での修行経験もある(筆者撮影)
「かし亀」3代目店主の駒剛行さん。高級中華での修行経験もある(筆者撮影)

 ある日常連客から「チャーハンに肉を乗せてくれないか」とオーダーを受ける。バラ肉のニンニク炒めをチャーハンの横に乗せ、「肉乗せチャーハン」が誕生した。すると、絵力のあるこのメニューがTwitterで話題になる。「インスタ映え」という言葉が流行る前の話で、今で言う「バズ」だった。それに合わせて「チャーシューチャーハン」「唐揚げチャーハン」などいろんなチャーハンが生まれた。

「みんなが好きなものをチャーハンの横に乗っけるというシンプルな発想です。中華の一品ものはチャーハンによく合うんです」(駒さん)

 その頃、店の常連からのうわさで「オランダ軒」の存在を知る。実際に行って生姜醤油ラーメンを食べてみると、そのおいしさに感動してしまった。うちでも出したいと生姜醤油ラーメンの試作を始め、「オランダ軒」山本店主にアドバイスをもらいながら完成させる。それまではオーソドックスな醤油ラーメンを出していたので、専門店顔負けの生姜醤油ラーメンの登場にラーメンファンたちは沸きに沸いた。

生姜醤油チャーシュー麺。「オランダ軒」山本さんは「町中華の域を超えている」と評する(筆者撮影)
生姜醤油チャーシュー麺。「オランダ軒」山本さんは「町中華の域を超えている」と評する(筆者撮影)

 こうして、「かし亀」は普通の町中華から、ラーメンファン、デカ盛りファンの集まる店に変貌(へんぼう)した。町中華の再ブームやSNSでの反響もあって、行列店に成長。今をときめく町中華として話題になっている。

「オランダ軒」山本さんは、「かし亀」の味のクオリティを絶賛する。

「町中華ですが、マスターは高級中華料理店で修行された勉強熱心な方です。提供するラーメンは町中華の域を完全に超えていると思います。通常メニューのラーメンもおいしいですが、黒板メニューの限定ラーメンもオススメです」(山本さん)

「オランダ軒」山本さんもおすすめする「黒板メニュー」(筆者撮影)
「オランダ軒」山本さんもおすすめする「黒板メニュー」(筆者撮影)

「かし亀」駒さんは「オランダ軒」との出会いがターニングポイントだったと語る。

「お客さんに教えてもらって食べに行きましたが、こんなにもおいしいラーメンがあるのかと感動しました。生姜だけでなく独特の香りがして、それがクセになります。ラーメンを研究するきっかけになりました」(駒さん)

 温故知新でオリジナリティーを追求する店主の一杯が、老舗の町中華の未来を変えた。おいしい一杯の可能性は果てしない。(ラーメンライター・井手隊長)

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