写真家・山岸伸さんの作品展「瞬間の顔」が5月20日から東京・新宿のオリンパスギャラリー東京で開催される。山岸さんに聞いた。
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「ぼく、71歳なんですけど」という言葉に軽いショックを受けた。
山岸さんというと、昔、カメラ雑誌「CAPA」の表紙を撮っていたころのエネルギッシュなイメージが私の頭の中にあり、なんとなく、50代くらいの印象をずっと持ち続けていたのだ。
しかも、慢性骨髄性白血病という病を背負った身だという。
「生きているのが奇跡と言われるんですよ」。そう、明るく笑い飛ばされると、どうリアクションをしたらいいのか、戸惑ってしまう。
「瞬間の顔」というのは、山岸さんが14年前から始めた男性のポートレートシリーズで、写真展は今回で13回目。これまで撮影してきた人数は915人にもなる。
写真展会場には遠藤龍之介(フジテレビジョン 代表取締役社長兼COO)、澤和樹(東京藝術大学 学長)、塩崎恭久(衆議院議員)、氷川きよし(歌手)、尹晶煥(ジェフユナイテッド市原・千葉 監督)と、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。その数、100人。
■自分の写真として残したい
でもなぜ、男性だけなんですか? と、たずねると、「やっぱり、男の人って、いさぎがいいじゃないですか」と言う。
「自分が『いいですよ』と返事をした以上、『あなたが撮りやすいように撮りなさい』、という感じなんです。特に、大物といわれる人はそうですね」
さらに、「写真チェックの有無は約束していないので、撮ったものをぼくが選んで出させてもらっている」。
毎回、写真展のたびに図録をつくり、それを開催前に撮影した人に送るので、その際、「自分がどう写っているのかが、わかる」のだが、この流れで女性を撮影するのはほぼ無理だろう(たぶん、クレームの嵐となる)。
ちなみに、このシリーズで「いちばん最初に撮影を思いついたのは西田敏行さん。ぼくは西田さんを『もしもピアノが弾けたなら』(1981年)の前から撮り続けてきたんです。でも、それはあくまでも仕事だった」。