SNSの普及などの影響で海外はもちろん留学への心理的ハードルが下がっている。結果、海外進学を検討する人が増えている(photo GettyImages)
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 海外トップ大学進学のトレンドはどうなっているのか。海外トップ大進学塾「Route H」の担当者に、海外大学が向くタイプや受験に向けた準備、日本とは異なる就職活動の実態などを聞いた。

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 教育大手のベネッセ(岡山市)が運営する海外トップ大進学塾「Route H」。2009年の開講以来、主に米英のトップ大学に毎年合格者を出し続け、「海外トップ大進学塾のさきがけ」と評価されている。知る人ぞ知るこの名門塾がいま、転機を迎えている。

 23年度にオンラインベースの塾として受け入れ体制を拡充したのに伴い、受講生が急増しているのだ。24年度の受講生は80人前後。対面指導が主だった22年度までの4倍に膨らんでいる。大幅な受け入れ増に踏み切った背景には国内外のニーズの高まりがある。

「ここ数年、中高生の保護者向けイベントや教員向けセミナーに招かれる機会が急増しています」

 こう打ち明けるのは統括責任者の入谷和良さんだ。

 グローバルを舞台に活躍できる人材育成に向けた国際教育が活発化する中、「海外大学の進学指導はどうなっているのか」という保護者の声に押される形で、中学・高校側も対応に乗り出さざるを得なくなっているのだ。こうした傾向は、東大合格者が多い首都圏の私立の中高一貫校で顕在化しているという。

「今までは東大合格者数のみで『名門』のブランドを競い合っていたのが、少子化や多様化を背景に他校とは異なる特色が必要になり、それが『国際』や『グローバル』というキーワードや、海外トップ大学合格者数をアピールするトレンドに反映されているように感じています」(入谷さん)

心理的ハードル下がるも「本人の本気度」が大事

 入谷さんは海外大学進学への関心が高まる背景の一つに、「留学の心理的ハードルが下がった」こともあるのでは、と指摘する。

「YouTubeなどで海外大学のPR動画も気軽に閲覧できるため、寮生活も具体的にイメージした上で憧れを抱く人が多くなったように感じます」

 国内の大学入試で国立・私立を問わず総合型選抜や学校推薦型選抜へのシフトが進んでいることも要因の一つに挙げる。総合型選抜で重視される面接や論文、プレゼンテーションなど受験生の個性や特技、活動実績などを幅広く考慮して評価する方式は、主体的な探究学習を評価する海外大学の入試スタイルや教育の素地と共通するからだ。

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