
幸せになれるなんて保証はない
では、どんなタイプの生徒が「海外大学向け」なのか。入谷さんは言う。
「内向き、外向きとか陰キャ、陽キャといった性格は関係ないと思っています」
一方でこうも言う。
「海外大学で学ぶ必然性がある、と客観的に感じられない生徒には無理におすすめすることはありません。海外大学に行けば幸せになるなんて保証は全くないわけですから」
Route Hは約3カ月にわたる「自己分析」の講座を設置。海外大学で「何を学びたいのか」「なぜ学びたいのか」「どう学びたいのか」という問いと徹底的に向き合う時間を確保している。自己分析の講座を経て、「やっぱり自分は日本の大学で学んだほうがいいことが分かりました」と考えを翻す生徒もいるが、Route Hはこうした判断をむしろ歓迎しているという。
というのも、海外大学を目指すこと自体、「ハイリスク、ハイリターン」との認識があるからだ。
なぜハイリスクなのか。まず挙げられるのが、海外の大学を志望すると決めた後の中学・高校での過ごし方が一般受験とは大きく異なる点だ。かりに東大に一般受験で合格を目指す場合、高校2年の段階で合格ラインに達しているようなごく一部の優秀な生徒を除けば、夏季講習など学校内外の学習の場で「過去問」を解くテクニックにかなりの時間を費やすことになる。しかし、海外大学受験の場合、求められているのは筆記試験の満点にどれだけ近づくかではなく、これまでの人生でいかにユニークな個性を発揮し、自己探求を深めることができたのかを示す評価や実績だ。
海外進学の決断はかなりのリスクテイク
「それに本気で取り組むには生半可な『好き』や『興味がある』ではダメで、中高時代の課外活動に相当な時間とエネルギーを費やす必要があります。国内の通常の受験勉強に時間を割けないという意味でも、海外大学進学を決断するのはかなりのリスクテイクになるという覚悟が必要です」(同)
また、本人が何を「挑戦」と捉えているか、という点も重要だと入谷さんは指摘する。
「例えば、国内トップの東大を目指す生徒の多くは、合格を勝ち取ることを『挑戦』と考えている人が多いように感じますが、海外大学の場合、圧倒的に大学に入ってからの『挑戦心』が求められます。大学の4年間を通じてより高みにトライしたいというチャレンジ精神にあふれた人、社会に出てこんな貢献をしたいというビジョンが明確な人は海外で強い。逆に、そうした意志を欠く人が海外大学を目指すのはリスクになります」
将来の活躍の場を「グローバル」に求め、努力を重ねることもいとわない若者が大きなリターンを得る可能性が高いのは言うまでもないだろう。