カスハラやゴミ出しのルール違反で、「実名公表」の条例を施行する自治体がある(写真はイメージ/gettyimages)
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 三重県桑名市ではカスハラ行為、福島市ではゴミ出しのルール違反。これらを繰り返す住民について、悪質な場合は氏名を公表できる条例が、この春に施行される。個人の氏名を公表する条例は全国初だというが、踏み込んだ背景には何があるのか。実効性はあるのか。

【実際の惨状】ルール違反だらけの「ごみ出し」、氏名公表もやむなし?

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カスハラで「実名公表」の条例

 全国的にカスタマーハラスメントへの対策が進んでいる。応対した相手に強い言葉を浴びせ続けたり、しつこく謝罪を迫ったりするなどのカスハラを行えば、この春からは実名をさらされるかもしれない。

 三重県桑名市では昨年末、市内で働く人をカスハラ被害から守るための「カスタマーハラスメント防止条例」が可決成立し、この4月から施行される。

 悪質な場合は違反者の氏名を公表できる規定を明記した。市によると、氏名を公表する規定を設けた条例は全国初だという。

 市は、「要求の内容に妥当性がなく、手段が社会通念上相当でないものであって、就業者の就業環境を悪化させるおそれがある行為」をカスハラとして定義。市役所に相談窓口を設け、事業者などから相談があった場合に、弁護士らで作る対策委員会に諮問し、カスハラに当たるかを判断する形だ。

 カスハラと判断された場合は加害者に警告を行い、それでも繰り返した場合、加害者と委員会に意見を聞いたうえで、氏名を公表するか判断する。同姓同名の人がいる可能性に配慮し、居住地の一部も公開する。

 市の担当者によると、主にサービス業を中心に、カスハラ被害に悩む声が数多く寄せられてきたという。

「世の中のハラスメントに対する意識の高まりや、東京都のカスハラ防止条例の動きなどを受け、事業者が安全・安心にサービスができるよう、桑名市でも対策に動いた」(担当者)

「やりすぎ」「社会的に抹殺される」の声も

 全国初となる「氏名公表」が報じられると、市内だけではなく全国から反響があったという。

「条例があると助かる」という前向きな声が大半だが、「やりすぎ」「公表されたら社会的に抹殺される」「従業員に非がある時もあるはずだ」など、否定的な意見も一部寄せられた。

 担当者は、「制裁が第一の目的ではありません。『氏名公表』を規定し周知することで、抑止効果が働くことを期待しています」と強調する。

 福島市では、分別ルールに違反したゴミの開封調査を行ない、悪質な場合は事業者名や個人の氏名を公表できる条例が、この3月から施行される。事業者だけではなく、個人名の公表に踏み切った自治体は全国で初だという。

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ゴミ分別の意識がなかなか育たず