資源物の日に出された、ペットボトルラベル未分別のごみ(福島市提供)

注意より実効性ある

 カスハラ問題やサービスを受ける側の心理に詳しい関西大学の池内裕美教授(社会心理学)は、

「抑止力という点では、注意するだけよりも実効性はあると思います」としつつも、自治体が氏名を公表する動きには懐疑的だ。

「今の時代、一度個人の名前がネットに出されると、瞬く間に拡散されて消すことはできません。住所を特定されたりして、加害者が深く苦悩し心を病んだり、家族や親族にまで大きな被害が及ぶ可能性もあります。最悪の事態まで自治体は想定しているのか。条例が施行されたら『即公表』とはならないと思いますが、やりすぎだと感じる面は否定できません」(池内教授)

 ただ一方で、カスハラの被害者やその家族、ゴミ出し違反で迷惑を被る側の立場では、見方は変わってくるだろうとも話す。

処罰よりも価値向上が有効では

 池内教授は、処罰よりも、価値向上による手段が有効ではないかと提案する。例えば厚労省は、女性活躍を推進している企業に対し「えるぼし認定」を出している。取得した企業は、企業イメージの向上につながり、取引先からの信頼感や、優秀な女性の人材を確保しやすくなるといったメリットが生まれる。

「カスハラ対策をしっかりしている企業や、ゴミ出しルールを順守している事業者に何らかの認定を与えるのも、一つの手段ではないかと考えます。たとえ抑圧によって行動を変容させたとしても、消費者一人一人が自発的に意識と行動を変えなければ、本当の意味での、『よりよき消費社会の実現』にはつながらないと思います」(池内教授)

 桑名市と福島市の担当者も、「できれば、公表はしたくない。そこまでたどりついてほしくない」などと本音を漏らしていた。

 苦しみ続ける被害者を守るため、“力技”に踏み切った形だが、批判を覚悟しての苦渋の決断だったことも事実なのだろう。

(ライター・國府田英之)

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