一つの授業内でも、子どもたちは適性に応じて別々の課題に取り組んでいた

教室に「一体感がない」理由

「数学の問題でも自分一人で悩むのではなく、『この問題では何を問われているのか』『どの知識を使えば解けるのか』などとディスカッションしながら取り組みます。またチームの中には、数学が得意な子もいれば、問題文を理解するための英語力が優れた子もいるので、お互いの強みと弱みを把握することも大切。社会に出たら大半の仕事はチームで取り組むので、そのためのスキルは小さなときから身につけたほうがいいと考えています」(チンさん)

 授業を見ていて、日本の学校との違いが顕著だったのが、良い意味での「教室内の一体感のなさ」だ。多くの子どもたちが車座になって先生の問いかけに答えるなか、数人の児童が隅っこに固まって机に向かい、別の先生にアドバイスをもらいながらプリント学習に取り組むといった様子もちらほら見られた。

 チンさんによると、これは子どもたちの個性を尊重しているからこその姿だという。

「一人ひとり学力は違いますし、映像で学ぶのが向いていたり、ワークシートをこなすのが得意だったりと、適した学習方法も違います。その子にとって最適な方法で学びを深められるよう、先生はさまざまな教材を用意して授業に臨みます」

 きめ細かな教育だけあって、学費は当然高額だ。2021年度の文部科学省の調査によると、私立小学校の学費の平均額は年間約167万円だが、同校は施設設備維持費や給食費などを除いた授業料だけで約230万円となっている。

 それでもグローバル教育のニーズの高まりや、IB修了生専用の入学制度を設ける大学の増加といった追い風を受け、人気は右肩上がりだ。同校の全校生徒は、15-16年度は370人だったが、24-25年度は約800人まで増えている。

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