アメリカの名門ハーバード大学を卒業後、ひらがなも読めない状態で日本を訪れて30年。日本語と英語を自在に操り、その知性を発揮する「パックン」ことパトリック・ハーランさんが、日本の英語教育、そして自身の子育てについて語った。『AERA English特別号「英語に強くなる小学校選び2024」』(朝日新聞出版刊)から抜粋して紹介する。
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芸人、コメンテーター、著作活動、そして東京工業大学の非常勤講師。言語の壁など感じさせない活躍ぶりだが、「どんなに頑張っても日本語のネイティブスピーカーのようには話せない。悔しい」と意外な一面を見せる。
「だから、語学を習得するならできるだけ早いほうがいいと思います。特に英語は」
英語で得られる情報は日本語の何十倍にも
日本社会で暮らして30年。英語を使えることがいかに有利かを実感してきた。
「英語を使って入手できる情報は、日本語の何十倍にもなります。僕はそれで稼いでいると言っても過言じゃない(笑)。英語が使えることで得られる知識、出会える人、所属できるコミュニティーは変わる。『AIがあれば語学は学ばなくていい』と言う人もいますが、語学が堪能な人を上回るレベルにはまだまだ達していません」
異なる言語を知ることで、考え方の幅も広がる。
「僕自身も日本語を学ぶことで、英語には置き換えられない表現を知りました。『わびさび』とか『遠慮する』とか。数え方もそう。犬は1匹、クマは1頭。じゃあイノシシはどっち? 外国語を知ることで、内なる宇宙が膨らんでいくんです」
しかし、諸外国に比べると日本の英語力は低い。非英語圏の比較調査(国際教育機関「EFエデュケーション・ファースト」による英語力調査。年々参加国が増えるにつれて、日本は順位を下げている)では、111カ国・地域中80位だ(2022年)。
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