佐藤優氏と伊藤賀一氏(写真:朝日新聞出版写真映像部・東川哲也)
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 コロナ禍に世界が覆われたとき、さかんに言及されたのがカミュの小説『ペスト』だった。中世のペストについて知識を得るにはどうすればよいのか? 「私はの話から入ります」と話すのは同志社大学で学生指導にあたる佐藤優氏だ。「日本一生徒数の多い社会科講師」スタディサプリ講師・伊藤賀一氏と、現代に生きる西洋哲学と思想の意義について語り合った共著『いっきに学び直す 教養としての西洋哲学・思想』から一部抜粋・再編して紹介する。

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平気で「事実誤認」する特任教授

佐藤優(以下、佐藤):ソフィストというのは、西洋哲学史において重要です。ソフィストといわゆる哲学者の違いは何かと言うと「対価を取るか取らないか」なんですね。でも対価を取らないと、「親分・子分」という関係になりがちです。だから対価を払うことによって、「知はいただくけれど、あなたに従いたくありません。私は私の人生を歩きます」とある意味でドライに知を獲得できます。

伊藤賀一(以下、伊藤):なるほど。

佐藤:ソクラテスは死刑判決を受けて毒杯を持ってなお、「死んでも魂が……」と言っていたといいます。そんなことをしないで隣の町に逃げれば良かったんです。こういう先生に師事する弟子は大変です。その点、ソフィストのほうが、「偉くなりたいのなら」「弁論が上手になりたいのなら」「私に任せておきなさい」と結果に見合う方法論を教えてくれる。

伊藤:そう考えると、小・中・高校には教員免許がありますが、塾・予備校の講師は免許はありません。「教え方のプロ」「受験対策の専門家」として知識を切り売りしている面があります。べつにそれを恥ずかしいと思ったことはないですけれど。佐藤先生は、大学の教員についてどう思われますか。

佐藤:大学教員は「デタラメ率」がかなり高いです。市場原理が働いていないから、ソフィストにはなれていないと思います。

伊藤:そもそも免許もないですからね。

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大学教員、デタラメ事例