佐藤優氏(写真:朝日新聞出版写真映像部・東川哲也)

水の使用量でわかる生活の乱れ

佐藤:もう一つ、私が注目しているのは「水道の哲学」です。マルクス=アウレリウスは帝国を牛耳ることができましたが、ギリシアとローマの違いは何かといえば、水道という技術の有無だと思う。ギリシアは井戸を造っただけでした。それでは水の確保ができないから、都市国家よりも大きくはならない。ところが、ローマは水道を造った。だから帝国にまで強大化しました。古代中国の帝国でも治水を重視していた。だから水を管理できることと帝国とには大きな関係があります。エジプトもメソポタミアも水道は重要でした。ところが、ギリシアにはあれだけ優秀な人たちがいたにもかかわらず、水道の哲学を唱える人がいなかった。もし、ギリシアで水道について思想と技術を確立できる人がいたら、ギリシアは巨大国家になっていた可能性があります。

伊藤:うーん、なるほど。

佐藤:こうした考えは、近代以降になると「インストルメンタリズム」になります。プラグマティズムのような「道具主義」という思想です。道具の思想というのは重要です。なぜなら、大学生になって娘や息子が下宿するようになったときも、生活の乱れをチェックするためには、水道の使用量を見たらわかるからです。下宿先に新しく一人加わっても電気代は増えないけれど、水道は生活用水に比例して増えるからすぐにわかる。逆に、水道を全然使っていないということは家に帰っていないということです。水道使用量の推移を見れば、生活の乱れはだいたいわかる。だから古代から水は重要です。都市国家で終わるか、巨大帝国になるかは水次第です。

「汚い水」によって人間ができた

佐藤:伊藤先生は、受験生に対して、どうやってユダヤ教とかキリスト教とかに関心を持たせていますか。

伊藤:まず、世界人口81億人のうち、キリスト教徒は世界に26億人以上、イスラム教徒(ムスリム)は20億人以上いる。でも、同じ神を崇拝している一神教なので、ユダヤ教があって、ユダヤ教が一番上、次がキリスト教、そしてイスラーム。この三きょうだいだと教えています。ヤハウェとアッラーが同じ神様だと知らない生徒がほとんどで、中学生までだとほぼ知らないです。

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ユダヤ教について教える際のポイント