2軍監督時代に「変化」
ソフトバンクで監督の有力候補と目され、21年に1軍のヘッドコーチに就任したが、このときも試練を味わう。前年までパ・リーグ史上初の4年連続日本一を飾っていたが、8年ぶりのBクラスに転落。工藤公康元監督が退任し、小久保監督は翌22年から2軍監督に就任し、1軍監督は藤本前監督が就任した。ファームの監督を2年間経験する間に、小久保監督に近い関係者は「ある変化」に気付いたという。
「表情が柔らかくなりましたね。侍ジャパンのときのように日本を代表する選手たちが集まっているわけではない。1軍の選手とも違い、2軍は発展途上の選手たちばかりです。思うようにいかないことの方が多い中で、個々の能力をどう伸ばすかを考えたときに厳しさだけでは心が離れてしまうと感じたのでしょう。厳しさは当然ありますが、選手に笑顔で話しかけて雑談をするなど視線を下げて接しているように感じました。小久保さんは堅いイメージがあると思うのですが、くだけた感じになると面白いですよ。読書家で博識ですし、好奇心旺盛です。若い世代の考え方を否定するのではなく、学ぼうとする柔軟性があります」
黄金時代の再構築を目指す小久保監督はV奪回だけでなく、数年先を見据えてチーム作りを行っているように感じる。
その象徴的な存在が柳町達だろう。ミート能力に長けた巧打者だが、今年は開幕2軍スタート。外野陣は柳田、近藤、周東佑京と盤石の布陣で、ウォーカーも控える。柳町の能力の高さを認めているからこそ、「準レギュラー」という役割に甘んじるのではなく、もう一皮むけてほしいという願いがあった。指揮官の期待に応え、5月下旬に1軍昇格すると打率3割を軽く超えるハイアベレージで外野の一角に定着している。
柳町に限らず、結果を残せば若手を使い続ける。正木智也、廣瀬隆太、川村友斗、育成枠から復帰した佐藤直樹と、熾烈な競争を勝ち抜くために必死でアピールしている。
「若手が活躍しても小久保監督が褒めることが少ないのは、ここで満足してもらったら困るというメッセージです。『褒めて伸ばす』令和の指導法と逆行したやり方かもしれませんが、期待が大きい選手ほど厳しく接している。新庄剛志監督(日本ハム)のように派手なキャラクターではないので目立たないですが、育成と勝利を両立している。もっと評価されていいと感じます」(前出の関係者)
ペナントレースはここから勝負所を迎える。このまま独走するのか。苦境に直面するのか。4年ぶりの優勝に向けて、小久保監督の真価が問われる。
(今川秀悟)