佐藤優氏(写真:朝日新聞出版写真映像部・東川哲也)

佐藤:だから文系の基礎中の基礎である西洋哲学は、人文社会科学の土台であるにもかかわらず、理系の人のほうが哲学に関する知識があるという逆転現象が起きている。

伊藤:はい。自分ももともと、日本史の講師としてキャリアをスタートして、そこから世界史、地理、政治・経済、倫理……と手がける科目を増やして、今では社会科の全科目に広げてきましたけれど、正直、学んでいて一番意味があったのは、倫理だというのが実感としてあります。そうじゃないと、外国の人と話をする土台がないですよね。共通のリングに上れない。どこがリングなのか土俵なのかもわからないことになってしまいます。

約30年ぶり、学習指導要領改訂で社会科系科目はこう変わった

佐藤:付け加えておくと、「僕は世界史(選択)でしたから」「私は日本史でしたから」というエクスキューズ(言い訳)は、今、30代、40代の人でも言う人が多いけれど、それはもう通用しない時代です。

伊藤:そのとおりです。実は、2022年に高校の社会科系科目に関する学習指導要領が30年ぶりに改訂されました。「倫理」と「政治・経済」という公民科の発展科目の基礎科目として「公共」が設置されています。そして、「日本史探究」「世界史探究」という歴史の発展科目の基礎科目が「歴史総合」、さらに「地理探究」という地理の発展科目の基礎科目が「地理総合」で、2単位の基礎科目「公共」「歴史総合」「地理総合」はすべて必修になりました。4単位から3単位に減らされた「探究」科目と「総合」を合わせ、地理や歴史は計4単位から5単位となり、地歴なら1単位分増え、社会科の重要度が増します。倫理と政経はそれぞれ2単位で、さらに「公共」と合わせる形に。

佐藤:だから本当は大学に入った段階で、入試で使っていない科目でも、基礎的に必要なものは全部、大学の授業が始まる前にチェックしなくちゃいけない。そして、知識の欠損があるなら、大学の1、2回生のときに埋めておかないといけないはずなんですよね。これは大学の責務です。

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