伊藤賀一氏(写真:朝日新聞出版写真映像部・東川哲也)

伊藤:はい。英語とか数学に関しては、リメディアル教育(治療教育)が盛んで、大学に入ったときについていけない学生さんたちに対してフォローアップするための映像や補習などが充実しています。でも、倫理を含めた社会科全科目の知識の不足を埋めるのは、今おっしゃったようにすごく大事なことだと思うんです。今こそそういう講義を導入してもらいたい。その先駆けとして、今回の本があると自負しています。

今の大人は若者についていけなくなる

佐藤:そういう意味でこの本は、基礎的な西洋哲学や西洋思想の知識を身につけるのに役立ちます。そして、受験に役立つと同時に、実用性もあるわけです。大学卒業後のキャリアパスをつけるさまざまな資格試験でも有用です。国家公務員試験、地方公務員試験、教員採用試験では、必ず「教養」を問う試験がありますから、だいたい2割弱はこれでカバーできるんじゃないでしょうか。

伊藤:そうですね、司法試験予備試験や行政書士試験にも一般教養が出題されますから、各種資格試験でどんどん出てきていると思います。

 あと、自分も43歳の時に、一般入試で再受験した早稲田大学教育学部に通っていて実感したことですが、外国からの留学生の方がたくさんいます。そういう人たちと話をするときに、相手を傷つけないで話をすることがとても大事になってくるんですね。宗教的なこと、思想的なこと、道徳的なことに自分が無知、無自覚であることはとても危険です。いわば「地雷」がいっぱい埋まっているわけです。とんでもなく失礼なことを言ってしまう可能性があります。そして、日本人としても、自分たちについて、相手を傷つけないように文化を紹介したり、聞かれたときに答えたりしないといけない。

 また、日本史選択とか世界史選択とかいう言い訳が効かなくなるのは本当にそのとおりで、さきほども言ったように、今の高校3年生から「歴史総合」という科目が始まっています。「近代(実質は近世)以降」の日本史と世界史を合体させた「歴史総合」が今年度の受験生から始まっています。そして、「公共」という科目は従来の「現代社会」をアレンジしたものです。それから、約半世紀ぶりに地理が必修になりました。社会科は地歴公民すべての科目が必修ですから、現在の高校3年生以降の人たちが大学に入ったり社会に成人として出ていったりするときに、今の大人たちは、そういう知識をしっかり学んだ若者たちが出てくるという意識を持ってないと、ついていけなくなるような気がしますね。

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