2018年の西日本豪雨の際の建築家・坂 茂さんが考案した間仕切りが並ぶ避難所=2018年7月、岡山県倉敷市真備町

 巨大地震が襲った能登半島。避難生活が長引くことで懸念されるのが災害関連死だ。どうすれば防ぐことができるのか。AERA 2024年1月22日号より。

【写真】「避難所」の写真をもっと見る

*  *  *

 軒先でたき火を囲む人。農業用ハウスの中で過ごす家族。避難所では毛布をかぶってじっと支援物資を待つ人も。多くの家屋が倒壊した能登半島地震。避難生活が長引くにつれ懸念されるのが、災害関連死の増加だ。

「関連死を出さないためには、死亡原因に至るプロセスをいかに早い段階で止めるかにかかっています。医療の助けが必要になる手前の段階であらゆる手立てを講じ、被災者の生活環境を改善する必要があります」

 こう強調するのは総合防災・減災が専門の関西大学社会安全学部の奥村与志弘教授だ。

 奥村教授は1995年の阪神・淡路大震災以降の主な災害における最大避難者数と関連死の発生率(避難者1万人あたりの災害関連死者数)の関係に着目。関連死の発生率は最大避難者数の増加に伴い、右肩上がりの曲線を描いて増えることを明らかにした。このデータ分析によって阪神・淡路大震災以降、関連死の発生率を下げる有効な対策が実施できていない現実も浮き彫りになった。奥村教授は言う。

「能登半島地震は周辺地域も含めて最大5万人規模の避難者が発生したと推定されます。その場合、従来通りの措置や対策にとどまれば、20~30人が関連死で亡くなることが予想されます。ただし、東日本大震災時の被災地のような深刻さが続くと、100人以上の犠牲が出てしまう可能性もあります。そうした事態は何としても回避しなければなりません」

在宅避難者の問題も

 関連死はどこで多発するのか。これも過去の災害が参考になる。関連死が震災犠牲者全体の8割を超えた2016年の本地震。避難所での関連死は5%だったのに対し、病院介護施設が46%、自宅が40%だった。東日本大震災でも避難所での関連死は12%に対し、病院・介護施設が41%、自宅が24%。多くの被災者が身を寄せ合う避難所に目が向きがちだが、関連死対策を考える場合は病院や介護施設、自宅にいる高齢者の存在にも留意する必要がある、と奥村教授は言う。

著者プロフィールを見る
渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

渡辺豪の記事一覧はこちら
次のページ