写真=坂茂建築設計提供

「日本ではいまだに、避難所の環境対策が不十分だということを痛感させられました」

 こう嘆くのは建築家の坂 茂さんだ。災害多発国なのに他国より劣る日本の避難所の環境改善を図ろうと、坂さんは被災者家族ごとのプライバシーを守る間仕切りや簡易に組み立てられる段ボールベッドを考案。2004年の新潟県中越地震以降、避難所に届けてきた。国は東日本大震災後、ガイドラインを作って市町村に避難所生活の質の向上を促したものの間仕切りなどが行き届いていないことは今回の震災でも浮き彫りになった。

「プライバシーは最低限守られるべき人権です。間仕切りがないため東日本大震災までは、特に女性が車中泊を続け、エコノミークラス症候群で亡くなられています。新型コロナ蔓延後、間仕切りは飛沫感染防止にも役立っています」(坂さん)

 坂さんは、より質の高い施設がトレーニングされたスタッフによって設営・運営されなければならず、そのためには国のさらに踏み込んだ対応が不可欠だと指摘する。

「公的避難所の設営・運営の知識が十分でなく、いつも場当たり的に作られているせいで、今回のように十分な避難所を確保できず、農業用ハウスに自主避難する状況まで生んでしまいました」

 能登半島地震の避難所にも間仕切りや段ボールベッドを配送、設営した坂さん。被災者は避難所で数カ月過ごした後、復興アパートに移されるというイタリアとの違いに言及しこう訴えた。

「今回の震災でも避難所での生活を最短にしてホテルや旅館に移っていただき、その後は仮設住宅ではなく、恒久的な復興住宅を建設し、そこで安心して暮らしてもらうシステムを構築することが急務です」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2024年1月22日号

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