鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)

 ウクライナ戦争、中東……凄惨なニュースを見て、もし有事が起こってしまったらと、不安で「気がおかしくなりそう」と吐露する29歳女性。このどうしようもない現実の受け止め方を問う相談者に、鴻上尚史が勧めた「変更可能性を検討できる、着実な方法」とは?

【相談208】もし有事が起こってしまったらと思うと、明日を生きるのが怖くてたまりません(29歳 女性 読子)

 最近、政府が急ピッチで有事に対して具体的な対策を行っているというニュースが続いており、本当に戦争が起こるのではないかと不安になっています。

 ウクライナで戦争が起こったというニュースを会社のテレビで見た時、呆然として足の力が抜けました。中東での凄惨なニュースをSNSで見た時、もし自分がその場にいたらと、ゾッとしました。

 世界がどんどん不安定になって、いつ自分が戦争に巻き込まれるのか分からない、次は自分かもしれないと思うと、明日を生きるのが怖くてたまりません。こんな現実で生きないといけないことが怖くて仕方ありません。

 SNSでは、政府は必要最低限の対策をしているだけだという人もいれば、それだけ有事が近いのだと分析する人もいて、何を信じれば良いのか分かりません。私自身も安心しようとして、自分に都合のいい情報を探そうとしてしまいます。

 仕事をしている間に、寝ている間に、もし有事が起こってしまったら……と考えてしまい、一日中落ち着きません。夜眠るのが怖くなり、テレビの緊急速報の音で心臓が跳ね上がります。

 SNSや関連のニュースを見るのをやめようと思っても、何が起こっているか知らないことが不安で、SNSで情報を集めてしまい余計に不安になってしまいます。

 家族や職場ではなんともないように振る舞っていますが、正直気がおかしくなりそうです。

 家族の前で不安をこぼしたことがありましたが、死ぬ時はみんな一緒と突き放されてしまいました。

 私は子どもの頃から、死ぬこと、とりわけ戦争で死ぬことが怖くてたまりません。もし自分が、家族が、友人が戦災に巻き込まれたら……と想像するだけで、血の気が引きます。病院に行って薬を貰ったところで、戦争への不安は無くならないと思います。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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