本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)
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 このような、個人の気の持ちようで解決しようのない、どうしようもない現実を、どう受け止めたら良いのでしょうか。

【鴻上さんの答え】
 読子さん。「明日を生きるのが怖くて」たまらないのですね。

 確かに、ここ数年、Jアラートがよく鳴り響いていますからね。

 今年の夏、沖縄に行った時、深夜3時54分に、大音量が鳴って飛び起きました。いつもはスマホは「おやすみモード」にしているので、鳴ることはないのです。「緊急速報 ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、又は地下に避難して下さい」(総務省消防庁)という文章が表示されていました。

 再び寝始めると、4時7分にまた鳴って、「ミサイル通過。太平洋へ通過したものとみられます。避難の呼びかけを解除します。不審な物には決して近寄らず直ちに警察や消防などに連絡して下さい」と表示されていました。

 読子さんは、こういうアラートに、「心臓が跳ね上が」るんですよね。本当に大変だと思います。

 僕は、寝ている時はびっくりして心臓の鼓動が高まりますが、起きている時は、Jアラートに対しては、もどかしい思いになります。

 それは、「こんな大雑把な情報で緊急速報を流していたら、本当に大変な時に国民はちゃんと反応するのだろうか」ということです。

 アジア・太平洋戦争中の空襲警報は、もっと緊急で具体的な警報でした。

 各軍管区や各鎮守府から発せられた情報は、どの方面からどの方面に米軍機が進み、どの地域が危ないかを住民に伝えました。

 例えば、「東部軍管区情報。房総半島より本土に侵入せる敵B29は、先頭梯団は帝都に侵入しつつあり。後続梯団は伊豆半島上空より北進し、富士山付近にて向進しつつあり」

 というような実例です。

 本当の緊急の情報だからこそ、具体的に伝える必要があったのです。

 米軍機と違って、北朝鮮のミサイルは、そんなに具体的に分からないから出すのかもしれませんが、それはまるで、(日本までの距離は異なるものの)B29がサイパンやテニアンの基地を出撃したのを探知した瞬間に空襲警報を出すのと同じだと感じます。

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