鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)

 出産後、日本は生きづらい国だと気づいたと悲嘆する35歳の母親。我が子の教育をどうすべきかとその不安を問う相談者に、鴻上尚史が伝えた、「絶望」と「反省」よりも、いますべき大切なこととは。

【相談207】より厳しくなるこの日本で、我が子をどう教育したら良いでしょうか(35歳 女性 りっちゃんママ)

 先月、第一子となる娘を出産しました。育児はとても大変ですが、日々成長していく姿は親として温かい気持ちになります。

 出産前には思いませんでしたが、テレビやSNSをみると今の日本がとても子育てしにくく、娘にとって生きやすい国ではないと思えてきました。出産後メンタルが不安定なこともありますが、少子化や貧困化、子どもに対する性犯罪等ニュースを見るたびに辛くなって、娘に対して産んでしまって申し訳ないと感じ涙が出てきます。

 もちろんこの先、親として全力で娘のために働いてお金を稼ぎ、愛情をもって育てていくつもりです。生きていくのがより厳しくなるこの日本で、この子が幸せに生きるために親としてどう教育したら良いでしょうか? 私に何ができるのでしょうか?

【鴻上さんの答え】
 りっちゃんママさん。まずは出産、おめでとうございます。今はなかなか寝られない時期ですよね。でも、ちゃんと息抜きはできていますか? ずっとワンオペではなくて、誰かに頼れていますか? 大変な時は大変と声を出せる環境ですか?

 まだまだ子育ての大変なピークは数年間続きますから、ガンバリすぎず、根を詰めすぎず、なんとかうまく切り抜けて、ほがらかに過ごせることを祈ります。

 さて、りっちゃんママさんが書くように、「日本がとても子育てしにく」いというのは、残念ながら当たっている部分が多いと思います。

 海外の電車やバスに乗っていて、赤ん坊が泣きだしても、それが当然だと思う人が多いです。でも、日本だと、親がすぐに「すみません」と周りに謝り、赤ん坊を必死にあやしたり、少し大きい子供だと「シーッ」と繰り返したりします。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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