※写真はイメージです。本文とは関係ありません(iStock / Getty Images Plus)
作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします

 インバウンドで日本に来る海外の観光客は、日本の治安の良さを絶賛します。

 子供たちだけで、登下校できるというのは、欧米では、なかなか信じられないことです。

 親が責任をもって子供を学校に送り、迎えるのが当り前の国が多いからです。

 僕は1年間、イギリスの演劇学校に留学しましたが、そこで出会ったクラスメイト達には、「イギリス階級社会」が体に深く刻まれていました。

 エリートの私立学校に通った学生は、体もエリートでした。聞けば、体育の授業が充実していて、ストレッチも入念に受け、開脚して胸が床につく学生が多数でした。

 労働者階級出身で、公立の学校に通った学生は、体育の時間はただ遊ぶ時間だったと言いました。開脚しようとして床に座ると、体が硬すぎて脚がうまく開けず、そのまま後ろに倒れました。

 イギリスの中学生活を描いたブレイディみかこさんの名著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』では、同じプールで同時に行われた水泳大会での、私立中学校と公立中学校の「あらゆる違い」がくっきりと描かれています。

 日本の差別と貧困化は重大な問題ですが、その未来の姿が欧米にはあります。海外には、日本の何倍もの差別と格差社会が存在します。

 りっちゃんママさん。

 どこの国でも、100%文句のない所はないだろうと思います。

 ですから、「娘に対して産んでしまって申し訳ないと感じ涙」することはないと僕は思います。申し訳ないなんて、全然、思わなくていいと思うのです。

 もちろん、日本の問題点を改善する必要はない、ということではありません。

 どこの国でも、よりよい状況に向かって進んでいく必要があるし、国民が力を合わせてよりよい状況にしないといけないと思います。

 そして、どうしてもその国ではダメだと思えば、自分がいい国だと思う所に脱出すればいいと思います。

 りっちゃんママさん。

 親としてできることは、絶望したり、反省することではなく、前向きに子供に対することではないでしょうか。

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