本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)
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 海外の電車やバスで、赤ん坊が力の限り泣き、それを当然のように受け止めている乗客の風景を見てきた僕としては、その姿はあまりに痛々しく、哀しく感じます。

 昨日も、電車の中で、ベビーカーに乗せられた幼児が泣き出して、母親がオロオロしていたので、ずっと幼児に対して変顔を見せ続けました。幸いなことに、幼児は笑ってくれて泣き止みました。母親が僕の変顔を見て、困った顔をしていました。少し恥ずかしかったです。

 ベビーカーで電車やバスに乗って、露骨に嫌がられたり、保育園や幼稚園が近くにできると子供の声がうるさいと、反対する住民がいたりします。それが新しい園を作ることを困難にして、待機児童の数を増やし、子育てをますます難しくしている理由のひとつになっています。

 海外の多くの国では、「子供はうるさくて当然」とか「みんなでベビーカーを運ぶのを手伝う」なんてことが当り前のことだったりします。

 ヨーロッパと日本の両方の地域で子育てを経験した日本人が、「本当に海外は楽」とか「赤ん坊が社会に受け入れられている」なんてよくネットに書いていたりします。

 また、りっちゃんママさんが書くように、日本は「娘にとって生きやすい国ではない」傾向が強いです。

 男女の格差を測るジェンダーギャップ指数は、2023年、去年より9位下がって、過去最低の146カ国中125位になりました。

 ルッキズムの差別もきついし、性の商品化も露骨です。

 これらは、本当に早急に改善しないといけないことです。

 でもね、りっちゃんママさん。

 子供が電車で泣いても露骨に嫌な顔をする人が少ないアメリカで子育てをしているとしたら、「子供は銃社会で成長する」という心配が出てきます。

「子供の通っている学校に、銃を持った人間が押し入って乱射するかもしれない」というのは、アメリカではリアルな恐怖です。

 街を歩いていて、銃の発射音を聞くかもしれないと心配もするし、テロが起きる可能性だって日本よりはるかに高いでしょう。

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