中国の耕地面積(牧野・家畜放牧場を除く)は約1億3000万ヘクタール、そのうち2億3000万戸の農家が農業生産を請け負っている農地(請負土地経営権農地)が9200万ヘクタール、さらにこのうちの3400万ヘクタール(約37%)が、農家から他の農家などへ権利移転している(2017年、中国農業農村省)。権利移転面積は年々増加、現在では請負土地経営権農地の半分以上に当たる5000万ヘクタール近くに達しているとみられる。

 権利移転を受けるのは農家にかぎらず、むしろ企業経営体に注目が集まっている。その規模はケタが違うとはこのことで、数万ヘクタールはざらで、中には数十万ヘクタールの規模の農業経営体まで各地に登場している。

 これが現在の中国の資本制農業経営の一般的なかたちであり、農地制度自由化の実態である。今後は農業経営体の定義が広くなり、地域の商工業者資本の参入が可能になったことから農業経営への参入自由化の波はさらに広がっていく可能性が高いとみられる。

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高橋五郎

高橋五郎

高橋五郎(たかはし・ごろう) 1948年新潟県生まれ。農学博士(千葉大学)。愛知大学名誉教授・同大国際中国学研究センターフェロー。中国経済経営学会名誉会員。専門分野は中国・アジアの食料・農業問題、世界の飢餓問題。主な著書に『農民も土も水も悲惨な中国農業』2009年(朝日新書)、『新型世界食料危機の時代』2011年(論創社)、『日中食品汚染』2014年(文春新書)、『デジタル食品の恐怖』2016年(新潮新書)、『中国が世界を牛耳る100の分野』2022年(光文社新書)など。

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