ジャニーズ性加害問題で同事務所が会見(9月7日、写真AP/アフロ)
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 哲学者の東浩紀氏は、閉塞感はびこる現代の日本社会において「訂正する力」が必要だと提案する。最近話題のジャニーズ問題については、沈黙がルールだったが、一旦風向きが変わると、ジャニーズを叩くことが新たなルールになっており、空気に支配されることは変わらないという。同氏の新刊『訂正する力』(朝日新書)から一部抜粋、再編集し、東氏が考える「訂正する力」と「声を上げること」の違いについて紹介する。

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批判を引き受ける力

 訂正する力は、現状を守りながら、変えていく力のことです。だから最近話題になる「声を上げる」に近いところがあります。でも違うところもあります。

 少数派であるとは、いまふつうに受け取られている価値観に違和感を抱くということです。だから「違う」と声を上げる。それに対して多数派は必ず「なぜそんなことを言うのか」と反応します。これは避けられません。

 つまり、声を上げることは必然的に反発を伴うということです。むしろ反発がないと意味がない。ところが最近は、「声を上げると周りから変なひとだと言われる、それ自体が圧力だから、『変』と言われないようにしてほしい」という要求が上がるようになってきた。

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違反によってルールの弱点が見えてくる