健康と要介護の間の虚弱な状態「フレイル」に該当する患者が、40代と50代にも増えているという。医師にその背景を聞いた。AERA 2023年10月9日号より。
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若い頃に比べると、昼まで寝ようとしても早く目が覚めて熟睡感がない。何だかなぁ──。
「史上最高に暑い夏」がやっと一段落、秋の気配が見えてきた今日この頃。現在50代の記者は、すっかりバテ気味だ。目の前に「老い」もちらつき始めてショックを感じていたあるとき、さらに追い打ちをかける驚きの情報を知った。
日本生活習慣病予防協会が6月末、加齢にともない筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態「フレイル」に該当する患者が、40代と50代にも増えている、という調査結果を発表したのだ。
フレイルであるかどうかの診断基準は、(1)体重減少(2)主観的疲労感(3)日常生活活動量の減少(4)身体能力(歩行速度)の減弱(5)筋力(握力)の低下の5点とされる。
アンケートは今年3、4月、フレイルに関する患者と接点の多い医師計330人からインターネットで回答を得た。
フレイルに該当する患者の増減について、8割以上の医師が「増えている」と回答。どの年代で増えたと思うかを複数回答で聞いた結果では、60代、70代以上に比べると少ないものの、50代男性が36.7%、50代女性36.3%。40代男性21.1%、40代女性17.4%と、高齢者のイメージの強いフレイルが、中年期にも広がっているという内容だった。
同協会専務理事でアンケートを監修した吉田博さん(東京慈恵会医科大学附属柏病院病院長・同教授)は、「大切な警鐘を鳴らす結果だ」として、こう話す。
「背景の一つは、コロナ禍で在宅勤務が増えたことによる運動不足。『通勤』という身体活動がいかに大事だったかがうかがえます。もう一つは栄養摂取面。社会活動が鈍る中で収入も減り、お金のかかることが多いたんぱく質豊富な食事よりも、ラーメンやおにぎりなど手っ取り早い糖質の多い食事に偏ったこともあると思います」
調査では約9割の医師が「フレイルはこれからも増加すると思う」と答えた。