学校現場ではいま、深刻な教員不足に陥っている。若手の離職の増加とともに、教員採用試験の受験者数の減少も続いている。背景には「定額働かせ放題」ともいえる労働実態がある。そうしたなか、若手教員のサポートし、受験者数の増加につなげようと働き方改革に乗り出した学校も出てきた。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。
* * *
若手を中心に教員離れが進む中、教員採用試験の受験者数も減少している。22年春に採用された公立小学校教員の採用倍率は2.5倍で、3年連続で過去最低を更新。大分県の小学校では、21年度採用から3年連続で「定員割れ」をしている。
なんとか先生を増やしたい──。各教育委員会では、応募年齢の上限を引き上げたり、東京都では教員免許がなくても採用試験にチャレンジできる制度を新設したりしている。佐賀県では、他の都道府県(政令市)の小学校の現職教員を対象に、佐賀県への移住を条件とした特別枠での選考を実施している。
5月、そんなあの手この手の“争奪戦”を後押しするかのように、文科省が公立学校教員の採用試験について、来年度からは約1カ月早い6月16日を目安に始めるよう、各教育委員会に要請を出した。民間企業の採用試験の前に人材を確保するためだが、教員を支える学生団体「Teacher Aide」を18年に立ち上げた京都大学大学院の櫃割(ひつわり)仁平さん(28)は首をかしげる。
「かき集めている感が出れば出るほど、先生という仕事がチープになり、現場のモチベーションはさらに下がる。働き方が変わらない限り、離職する人は出てしまう」
まさに、その通りである。
文科省が4月に公表した公立学校教員の勤務実態調査(22年度)によると、残業が同省の定める月45時間の上限に達した教員は、中学校で77%、小学校で64%に上った。にもかかわらず、残業時間に応じた残業代は支払われず、「教員給与特措法」(給特法)に基づき、基本給の4%分が「教職調整額」として上乗せ支給されているのみ。5月に文科相の諮問機関「中央教育審議会」で「教職調整額」を10%以上に引き上げる案の検討が始まっているが、結局は「定額働かせ放題」に変わりない。