AERA 2023年6月19日号より
AERA 2023年6月19日号より

 教員の仕事の実態について19年から実名で発信を続けている岐阜県立羽島北高校(岐阜市)教諭の西村祐二さん(44)は、

「給特法を廃止すれば、残業は『子どもたちへの愛情』ではなく、コストとして意識できる。その結果、無駄な業務の見直しが進む」

 と訴え続けている。教員の労働問題に詳しい名古屋大学大学院の内田良教授(教育社会学)はこう指摘する。

「今の若い世代は教員に限らず、長時間労働やクラブ活動の付き添いなどで土日が奪われていくことや給与に敏感に反応する。働き方改革こそが教員不足の解消につながります」

 まずやるべきこととして、

「無理やりにでも時間の枠をかぶせ、その中でより良い学校運営をするようにシフトしていくべきです。掃除時間は毎日必要なのか。運動会は午前中だけでいいのではないか。卒業式の練習に時間をかけすぎではないのか。見直せるところはいくらでもある。保護者も意識を変える時です」(内田教授)

 教員採用試験での「囲い込み」ではなく、働き方を変えよう。そんな意識は少しずつではあるが、広がりつつある。中でも教育関係者の間で注目を集めているのは、山形県内の公立小学校で今年度から始まった大卒の新採用の教員に一人で担任を持たせないようにする制度だ。

 同県では、採用5年目までの若手教員退職者数は17年度は13人だったが、21年度は30人と2倍以上に増加。そのうち、精神疾患を理由にした退職は17年度の2人から21年度は7人に増えた。県教委の担当者はこう説明する。

「若手教員の離職率が高く、危機感があった。保護者も子どもたちの課題も多様化し、若手がひとりで担任を持つ負担は大きすぎるという声が発端だった」

 新制度は、県内に223校ある公立小学校のうち、一定規模以上の24校で実施し、新採用の教員はクラスの副担任をしながら、教科担任として週17コマを目安に授業を行うという。また、新採用で担任を持つ場合には、非常勤講師や再任用短時間勤務職員などを支援員として配置。若手が授業づくりやクラスの運営を、余裕を持って行えるようにすることが狙いだ。

 同県の教員全体の採用倍率は13年度は7.6倍だったが22年度は2.6倍。特に小学校は5.2倍から1.5倍まで低下している。県教委では、新卒教員のサポート体制の充実が、受験者数の増加につながればと願う。(編集部・古田真梨子)

AERA 2023年6月19日号より抜粋

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