ただし、中国はいまも原則、留学生を受け入れていない。
「早稲田大学は現在、現地と調整を続けています。でも、それ以外の国への留学については、むしろ原則、渡航してください、と学生に伝えています」
半年以上の中長期留学の場合、人気の渡航先は断トツでアメリカだ。昨年度は218人が米国留学を果たした。イギリスは91人、フランスは38人、カナダは36人だった。
1年間で費用1千万円超えも
ところがいま、海外の物価高や円安の影響が学生たちに重くのしかかっている。想定外の留学費用の増加によって、留学期間の短縮や留学の断念を余儀なくされる学生もいるという。
実際、留学費用はどれくらいかかるのだろうか?
留学支援最大手の「留学ジャーナル」によると、比較的学費の安い米国4年制州立大学の場合、1年間の留学費用の目安は340万円である(大学開校期間の9カ月の授業料、滞在費、食費を合わせた金額)。しかし、これは同社が昨年適用した為替レート(1ドル=107.81円)での金額で、現在は大幅に膨れ上がっている。
例えば、日本人学生に人気の州立大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の1年間の授業料と滞在費は昨年約644万円だったが、取材時のレート(1ドル=135.98円)で約813万円。私立のハーバード大学は昨年約798万円だったが、いまは約1006万円。
「交換留学の場合、提携大学の授業料はかかりませんが、円安と物価高で滞在費と食費だけでもかなりの金額になります」
先の早稲田大学担当者は、そう話す。留学先は知名度のある大学に集中するため、交換留学の枠を巡っては10倍、20倍の競争率になるという。
「原則、交換留学の辞退は認めていません。ほかの人と競争してつかんだ枠であり、行けなかった人がいるわけですから。なので『辞退はなしだよ』と、学生たちには口を酸っぱくして言っています。ところがこれだけ短期間で急激な物価高、円安になると、それを理由に辞退されても、認めざるを得ない。金額が非常に大きいので、学生から相談されても正直、力になってあげることができない。こちらも歯がゆい思いをしています」(同)