新型コロナウイルスによる入国規制を緩和する国が増えるとともに、海外で勉強したいという学生たちの動きが熱を帯びている。だが、懸念材料もある。最近の顕著な円安や物価高だ。円安は今春から急激に進行し、7月に入っても1ドル=135円前後を推移している。また、人気の留学先であるアメリカの5月の消費者物価指数は前年同月比で8.6%上昇。約40年ぶりの高い伸びとなった。留学費用が想定外に膨らみ、断念せざるを得ないケースもあるという。最新の留学事情を取材した。
* * *
「これまでも経済的な事情を理由に『交換留学を辞退したい』と相談されることが少なからずありましたが、今年は円安の影響で辞退を申し出る学生が例年以上に多いと感じています」
早稲田大学留学センターの担当者は、そう語る。
6月末には一時、1ドル=137円台にまで下落し、約24年ぶりの円安ドル高の水準となった。影響は各所に出始めているが、それは教育の現場もしかり。海外留学に円安の“影”を落としているのだ。
まずはコロナ禍以前の留学事情から振り返ってみよう。
日本学生支援機構によると、新型コロナ感染拡大前となる2019年度、最も多くの学生を海外の教育機関に派遣したのは早稲田大学で、2914人が留学した。だが、コロナが世界的に拡大した20年度、その数はなんと36人に激減した。
「20年3月、留学生に対して帰国勧告という強い対応をとらざるを得ない事態になりました。学生を海外に派遣することもできなくなりました。それが36人という数字です」(早稲田大学担当者)
風向きが変わってきたのは1年ほど前。同大担当者はこう続ける。
「21年6月ごろ、一定の条件を満たせば渡航を認めるという措置を学生に示しました。21年の秋入学を目指して留学を再開したということです。学生たちは留学準備を急ピッチで進めて、500人弱が無事に渡航しました。今年の春は約100人、秋には700人くらいを送り出す予定です」