慌てて家に戻ると、娘は気丈にも箱の中に、ゆずを寝かせてくれていました。動物病院にも連絡しましたが、急なことに先生も驚いていらっしゃいました。
友人に連絡すると、きれいなお花を届けてくれたので、ゆずの周りをお花で飾り、色紙に家族のメッセージを記して上に置きました。ふだんうちに色紙などないのですが、職場の施設で使う(利用者様へ寄せ書き用の)残りがたまたまあったのです。
レモンとこなつも、事態がよくわからなかったのでしょう。2匹はそわそわしてゆずを探し、ゆずがいたベッドなどをのぞきこみました。とくにこなつは、冬用ベッドに替えてしばらくすると、すごい目つきで“ふみふみ”と“チュパチュパ”をして、低い声、高い声、甘えた声と七色の声で鳴いて、主人や私に甘えて、服や体でも(チュパチュパを)始めました。かと思えば、レモンの新しいベッドを食いちぎったり……。
■1カ月後に兄弟猫を迎えて
私も苦しくて、「あの朝になんでちゃんと顔を見てあげなかったのか」という思いにさいなまれたものです。
ゆずのいないケージは寂しく、「もう片付けようか」と悩んでいました。
でもそんな時にこなつの兄妹をもらった方から「引き取り手を探している子がいる」と保護猫のことを聞きました。気になって保護主さんのお宅に伺ってみると、兄弟でくっついていたので、2匹一緒にわが家に迎えることにしました。そして、2匹に“ゆずのいたケージ”を使ってもらうことにしたのです。ゆずがいなくなって1カ月後のことです。
娘は、私が「ねこねこネットワーク」(猫界で作られたとされる架空の連絡網)に登録されて、「猫を育てるために選ばれたのでは?」といいましたが、本当に「ゆずが運んでくれた縁」かもしれないですね……。
新たな猫たちは、沈んでいた家に優しい光をともしました。ペットは今5匹。にぎやかになり、家族に笑顔も増えました。こなつが鳴いてゆずを探すこともなくなりました。