飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ人気連載「猫をたずねて三千里」。今回、お話を聞かせてくれたのは、大阪府在住の介護職員の浅野さん。1年半前に駐車場で保護した雄猫は、事故で満身創痍(そうい)でしたが、懸命に生きて、後から迎えた雌猫の子とラブラブになります。でも蜜月は長くは続かず……。喪失を(人と動物が)どう超えるのか、胸に染み入る物語です。
* * *
最愛の猫、ゆずの“猫生”はまさに波瀾(はらん)万丈。
ゆずと出会ったのは2021年4月1日でした。スーパーで買い物を終えて駐車場に戻ると、私の車の横に倒れていたのです。外傷はないけど目やにがひどく、失禁もしていた生後3カ月くらいのキジ柄の雄猫でした。
当時、わが家には雄のチワワ「ライム」(12歳)と、雌猫「レモン」(1歳)がいたのですが、スーパーの店長に聞いても見たことのない猫だというので、うちで預かることにして、かかりつけの動物病院に連れていきました。
主治医の先生は、小刻みに揺れるゆずの頭をみて、「バイクか何かに当たって脳振盪(しんとう)を起こしているようだ」とおっしゃいました。脳震盪を起こすと48時間以内にてんかん発作の症状が出る可能性があり「危険」だというので、そのまま入院しました。
48時間を越えたら退院する予定でしたが、ゆずはその1日後にてんかん発作を起こしてしまい、呼吸困難となりました。事故時に横隔膜に開いた小さな穴がてんかんのせいで大きく裂け、横隔膜ヘルニアを引き起こしたようです。それで(横隔膜を縫う)緊急手術となりました。その後の検査で腸骨(骨盤の骨)の軽度の骨折もわかりました。
先生は経過をLINEで送って下さったのですが、こんな文字に目が留まりました。
<いろいろ大変なことが重なりかわいそうな状態ですが、本人は頑張って生きてます>
強く生きようとするゆずに、私は心を動かされました。