そうよね、狭いキャリーバッグに入って、こわい思いをして病院でずっと待つくらいなら、大好きな家で時間を過ごしたほうがいいよね。夫とも相談して、その後は病院には連れていかずに自然に任せようと決めました。
別れは思った以上に急でした。
ののは(旅立つ)1週間くらい前から、目を開いたまま意識がとんだような感じでした。
3日前から、寝室のベッドに連れていき、夫と”3人“で川の字で寝ました。
2日前には、様子が気になって、私は会社を早退しました。
1日前には、次男のお嫁さんが、「お顔を見たい」と来てくれたのですが、それまで寝ていたののが、むくっと起き上がろうとしました。まるで「来てくれたの?」と喜ぶように。
お嫁さんは学生のころから次男と付き合い、ののをずっと可愛がってくれていたんです。
「最期にへんに元気になることがあるというけど……」とお嫁さんと話していたら、本当に翌日、亡くなってしまいました。
ののが選んだ旅立ちの日は土曜で、家族がそろっていました。
朝、いつものようにののを窓辺に連れていったら、7時半くらいに急に声をあげて、口から水を出し、あわてて駆けつけた夫の腕の中に包まれて、そのまま旅立っていったのです。次男もお嫁さんもきて、皆に見守られて天に昇っていきました。
翌日、火葬(合同葬)をしたのですが、だめですね。いろいろと事前に決めていたのに、いざ手を離れると、揺れて悔やんで悲しくなって。
でもその後、涙をぐっとこらえたんですよ。夫が「あまり泣くな」というので。
多分、“泣くと自分も悲しくなるから”。そう言ったのだろうと思います。夫は私より少し年上で、男たるもの泣いてはならぬ、と言われて育った世代なので。本当は夫もショックで泣きたかったに違いないし、実際にお風呂場から男泣きが聞こえて、もらい泣きしました。