飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ人気連載「猫をたずねて三千里」。今回お話を聞かせてくれたのは、家族と北関東に暮らすまゆみさん(53)。今年5月に別れたオス猫は、若い頃から何度か病気にかかりました。その都度治療をしてきましたが、高齢になって新たな病になった時に治療方針などでとても迷い、見送った後も色々思い返したといいます。それから半年経ち、「これでよかったのかも」とようやく思えるようになり、愛しき猫との日々を話してくれました。
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まず、私がこのコーナーに応募した動機についてですが、5月に我が家の猫を荼毘(だび)に付した帰りの車内でスマホを触り、たまたまネットで「猫をたずねて三千里」の「まだ逝かないで!」という記事を読んだことです。
そこには愛猫の病気が見つかって、治療に時間をかけてあげた女性の話が載っていました。自分も猫と別れたばかりだったので、読み進めるうちに「うちは闘病は1カ月。十分に手を尽くせただろうか」「これでよかったのか?」と揺れたりしました。でも、お葬式の日に偶然出会った記事に運命も感じ、何よりもうちの子の話も聞いてほしくなったのです。
■親猫が置いていった子猫を保護
出会いは16年前の秋。以前勤めていた職場の事務所の床下に、親猫に置いていかれた3匹の子猫がいたんです。2匹は大家さんにもらわれましたが、警戒心が強い1匹だけ捕まえられず、床下に残されました。日ごとに鳴き声が小さくなり、「今日保護しないと死ぬ」と思い、昼休みに牛乳を買って小皿に入れて事務所前に置くと、薄汚れたグレーの子が出てきました。
高校生だった長男が猫を欲しがっていたこともあり、うちで飼うことにしたのですが、洗うと毛が真っ白に。でも体はやせて、ぎりぎりの状態での救出だったようです。長女が「ノア」と名付け、次男も可愛がりました。私だけ、愛称で「のの」と呼ぶようになりました。