保護後は、出会いの時のひ弱さを忘れてしまうほど丸々と太っていき、オス猫らしいヤンチャぶりを発揮。以前は庭先に出していたのですが、庭からベランダの2階まで昇ってきたり、また飛び降りたりと元気いっぱいでした。
それでも数年経つと、体調面で不安が出てきました。母猫は育たない子の選別をして置きざりにすることがある、と聞いたことがありますが、ののも、野良のままでは生きられない子だったのかもしれない、と思いました。
■犬に多いけど猫では珍しい腫瘍が
ののは、4歳の秋に尿に血が混じっているのがわかり、調べたら尿路結石があると言われました。石を取ったのですが、それから1、2カ月して、大みそかの日にとつぜん震えて動かなくなりました。慌てて病院に連れていくと、腎不全を起こして命が危ないと言われ、そのまま1カ月入院しました。
退院してから体調はまずまず安定しましたが、その後、10歳の時に、左の頬に腫瘍(しゅよう)ができました。はじめ、ほっぺに傷でもできたのかな?と思ったのですが、なかなか治らないので病院に連れていくと「アポクリン腺腫瘍」といわれました。
先生によれば、この腫瘍は「犬に多いけど猫では珍しい」ということで、全身麻酔で手術をしました。良性腫瘍だけれど、犬だと、足の付け根とか、あごとかいろいろなところにできるので、「もしかしたらののちゃんも再発するかも」と言われました。
その言葉通り、4年後、ののが14歳の時に右頬にもアポクリン腺腫瘍ができました。事前の検査で、「腎臓の数値はよくないが心臓はOK。麻酔は大丈夫だろう」といわれ、手術をしましたが、この先何かあった時は年齢を考えて積極的な手術は控えた方がいいのかな、と思ったものです。
最初の腫瘍が出来る前に現夫と出会ったのですが、彼は動物好きで優しく、ののを子供のように可愛がってくれました。ののも彼を一番慕い、一番甘えていました。私からごはんをもらうのに、抱っこやスキンシップは彼におねだりするんです。よく彼の傍らで添い寝をしてなでてもらっていました(笑)
2年くらい前から、夜のルーティンとして、夫がお風呂上がりにちゅーるをあげていたのですが、ちょうどお風呂からあがる時にののは浴室前にいき、にゃあ~と待っていました。
強い絆があったので、この後、ののがまた体調を崩した時は、夫も動揺したと思います。
■病院に連れて行くと不服そうな表情?
ののは、今年の2月ごろから寝ている時間が増え、足腰も弱くなりました。
老化の一環かなと思ったのですが、4月末に急に食事を残すようになったので、病院に連れていき検査をすると、「腎不全のほか、おなかに腫瘍と腹水がある」と告げられました。
「どうしたらいいんですか?」と尋ねると、長い針を見せられて、「無麻酔でお腹に刺して細胞診をしたら(良性か悪性かみて)治療方針が決まる。でも検査で死ぬ場合もある」と先生に言われ、私は若干パニックに。その日は皮下点滴だけしてもらい、自宅に戻りました。
2年前から2世帯で暮らしていた次男に様子を話すと、「違う病院で診てもらってもいいんじゃない?」という考えでした。夫も同じ意見だったので、数日してセカンドオピニオンを取りにいくと最初の病院と同じような見解で、「16歳近いし、調べて悪性とわかっても腎臓の状態から手術などは難しい。緩和的なケアをした方がいいのでは」と先生に言われました。
結局、アポクリン腺腫の転移か新たな腫瘍かはわからないまま、その病院で腹水を抜いてもらい、皮下点滴もしてもらいました。すると少し元気になり、ウェットフードを少し食べたのですが、次の日から、“香箱座り”をしたままじっと動かなくなりました。それが楽な姿勢だったのでしょうか……。
数日して2度目の病院にまた連れていって皮下点滴してもらったのですが、待合室でも、帰ってきてからも、ののが「なんで病院に連れていったの? 家にいたほうがよかったのにぃ」というような不服そうな表情をしたのです(私にはそう見えました)。