東京大、京都大いずれも年によっては1割以上が不合格だ。医学部は他学部に比べ、難易度が年々高まっている。優秀な学生が医学部を目指しているはずなのに、なぜだろうか。東京大医学部教授で同大卒の医師などによれば、東京大の医師国家試験合格率の低さの理由について、次のようにみることができるという。
(1)大学受験最高峰の「理III」合格を達成したため燃え尽き症候群となり、大学受験時以上の勉強ができなくなった。
(2)大学受験は学校や塾で徹底した受験対策を行ってきた。東京大医学部では一部の私立大医学部のように医師国家試験対策を行わない。そのため、強制ではなく自ら勉強して医学知識を覚えることが実は不得手だった。
(3)大学受験はゲーム感覚でクリアできたが、医学に興味を持てず、勉強する意欲がわかなかった。
(4)理IIIに合格したという自信から「医師国家試験ぐらい少し勉強すれば合格できる」となめてかかる、あるいは油断してしまう。
(5)いくつかの特定分野で深く勉強しすぎてしまい、基本的な知識を広く身につけることができなかった。
医学の世界で日本の学歴を考えるとき、東京大、京都大がこの体たらくというのはまずい。自分の頭の良さを証明するために、特に東京大理IIIに入学する者がいるという話は、灘、開成両高校の教師からよく聞く。東京大理IIIが入試で面接試験を復活させたのは医師の適性に欠け、医師国家試験に受からないような受験生を拒否したいからだろう。
■合格率トップを独走する自治医科大
一方、医師国家試験合格率ランキングで上位を指定席としているのが自治医科大である。大学のウェブサイトで「第1期卒業生が受験した1978年から2022年までの45年間、医師国家試験で全国トップの合格率が21回という高い合格率を誇っています。2022年に実施された第116回医師国家試験では合格率100%で10年連続全国1位の成績を収めました」とアピールするが、確かにすごい。2000年96.6%(1位)、2010年96.2%(5位)、2014年99.1%(1位)、2016年99.1%(1位)、2018年99.2%(1位)、2020~2022年100%(1位)で、最近10年の各年の不合格者は0~1人だ。
自治医科大が合格率でトップを走り続ける要因は「学生の医療に対するモチベーションの高さ」、「勉強への熱心さ」にあると、同大学はもちろん他大医学部、医学部予備校の関係者は見ている。自治医科大の学生は全員、6年間の学費2200万円を「修学資金貸与制度」により貸与され、卒業後、学生の出身都道府県が指定する病院への勤務が修学期間の1.5倍の年数(6年で卒業ならば9年間)義務づけられる。この条件を果たせば、貸与分は免除になる。つまり、学費はタダになるわけだ。自治医科大の入学者はこのことを十分にわかっており、それゆえ、卒業後は地域の病院で患者の病気を治そうという熱い思いが、医師国家試験合格への取り組みに反映されていると言えそうだ。