医学部の場合、学費が安ければ優秀な学生が集まるという図式が成り立っている。国立大医学部の難易度がどこも高いのはこうした理由によるものだが、私立大も似たようなことがいえる。
私立大医学部には「御三家」と言われるところがある。慶應義塾大、日本医科大、東京慈恵会医科大だ。歴史と伝統があり、学費も安い。それが人気や難易度につながって、優秀な学生が集まり、国家試験の合格率も高い水準にある。しかし、いま、順天堂大が御三家の一角に入りこもうとしている。順天堂大は2008(平成20)年に6年間の学費総計を900万円も値下げしたことで人気が高まり、入試難易度で日本医科大より上になることがあった。また、順天堂大医学部は2021(令和3)年、元ラグビー日本代表の福岡堅樹が入学したことでも話題となった。
なお、関西医科大は2023(令和5)年から学費を6年間で670万円引き下げると発表している。これによって、同大に優秀な受験生が集まり、同じ関西の大阪医科薬科大や近畿大医学部より難易度が高くなるのではないかと、医学部予備校関係者はみている。一方、東京女子医科大は、2021(令和3)年から学費を6年間で計1200万円値上げした。その直後の入試では、受験者が前年比で約6割に減少している。その分、難易度も下がって入りやすくなったという見方もある。だが、それによって医師国家試験合格率に影響しないか、そんな懸念の声が大学OGからあがっている。
医師国家試験の平均合格率は、例年90%前後である。1大学につき不合格者は1人から多くても十数人である。医学部の質はかろうじて保たれている。だが、2018年に発覚した、東京医科大などの女子受験生の入学制限は、優秀な学生を排除したことになる。こうした不正入試がなおも続けば、医学部の質の低下を招かざるをえないだろう。
※『日本の「学歴」 偏差値では見えない大学の姿』から抜粋