「僕は『もっと大きな視点で、フィギュア選手を育てるための環境づくりをし、世界に向けてスケートの魅力を伝えられるようなプロデューサー的な役割を果たしてほしい』といった話をした。結弦の今は、多くの人に支えられてある。感謝を込めて、世界のスケート界に貢献するような仕事に携わってほしいと話した」
そのときに明確な発言はなかったが、当然、興味は持っているはずだという。
「結弦は小さいときから、自身や演技の見せ方といった演出的な視点もたけていた。プロデュースの立場に回ったらどうするか、といったことは、彼なりに常に考えていることだと思う」
前出の田中さんは、羽生のセルフプロデュースについてこう見る。
「羽生さんは“羽生結弦選手”という、周りが求める自己像を主体的に作り上げることができる」
自分の中で選手生命の期間を決めているなら、その期間を“振り付ける”という感覚だ。
国際イメージコンサルタントの神津佳予子さんは、「自分の中に、自分のプロデューサーを持っている」と羽生の自己分析力に舌を巻く。特筆すべきは、アスリートには珍しく、自分の言葉で伝える力があること。