ただこれは、昨年11月のNHK杯の練習で右足を痛める前の話。自律神経研究の第一人者で、トップアスリートの指導に関わってきた、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんはこう話す。

「軸はしっかりしているし、(4回転半は)あとはジャンプの高さだけという域では。だからこそ、ケガの完治が重要。痛み止めもそのうち効かなくなります。今はイメージトレーニングの期間にすべきです」

 前出の長久保さんの見立てはこうだ。

「そう簡単には治らないですよ。私に言わせれば半年はかかると思う」

 その間に燃え尽きてしまわないか……。脳科学者の篠原菊紀さん(諏訪東京理科大学)によると、新たな技の構築の際のハードルの一つが、やる気と楽しさの維持だという。

「羽生さんの場合、個人的な楽しさ、やる気というレベルでは、すでにメンタリティーの維持は難しく、世のため人のためという意識が支えになっていると思います。ただその場合でも、これからさらに上を極めるにあたっては、個人的な楽しさが犠牲になると厳しい」

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