一流のアスリートが、挑戦を重ねるのは自然なこと。新しいジャンプの基礎点が採点表に載るなど環境や条件が許せば、「将来的に5回転を跳ぶ選手が出てくるだろうと私自身は見ています」と吉岡さんは語る。
採点方法の見直しと競技のレベルの進化はある意味、ニワトリと卵のような関係と考えれば、羽生の4回転半へのこだわりは、環境の変化や先を読む力を備えている証し。その羽生が見据える先はどこなのか。
羽生の母校、東北高校のフィギュアスケート部で顧問を務めた五十嵐一彌学園長は、
「右足が完治した段階で、世界で戦って、『行ける』と思えば、北京五輪を目指すと表明すると思います」
とはいえ、いつかは現役を退く日はやってくる。引退後はプロ転向というのが定石だが、前出の長久保さんの元には、2連覇達成の翌日に羽生からこんなLINEが来たという。
「いつかコーチングのことを教えてください。先生のとこ行きまーす」
指導者を超えた存在になってほしいという声もある。前出の都築さんは昨年、羽生に直接要望した。