■ランキングの読み方と病院選び
現在、腎がんの全摘除は開腹手術と腹腔鏡手術が、部分切除については開腹手術・腹腔鏡手術に加えて、ロボット手術が保険適用になっている。ロボット手術での全摘除は、承認されていない。
腎がんを治療する病院なら、全摘除、部分切除、どちらも実施しているのが通常だ。
ロボット手術の普及で、部分切除の手術数が増加傾向にあるという。腎がんは人間ドックなどで偶然見つかるケースが多いが、血尿などの症状が出てから見つかるケースもまだあり、発見時に進行していることも少なくない。したがって、全摘除が極端に少ない病院には不安がある。
「全摘除症例数と、ロボットによる部分切除の手術数が3対7くらいなら、適切なバランスで治療をしている病院だと思います」(近藤医師)
手術数の多い病院は技術、経験値ともに高く、前述の(1)制がん性(がんを確実に切除する)、(2)腎機能温存、(3)合併症(術後出血など)予防の三つの目標を、高いレベルで達成できていることが多い。
また、手術数の多い病院では、例えば、全摘除が考慮される場合でも、部分切除で腎臓を残すことができるケースや、転移があって手術不可能で薬物療法のみが勧められた場合でも、手術+薬物療法を組み合わせるなどで、生存期間を延ばせるケースもある。
では、手術数を具体的にどう考えればいいのだろうか。
「腎がんはそれほど患者数が多くないので、年間の手術数が30~40例あるというのが、信頼度の一つの目安になるでしょう」(近藤医師)
日本泌尿器内視鏡学会の定める「泌尿器腹腔鏡技術認定医」の資格をもつ医師は、血管のはく離の仕方など、細かい部分で安定した手技をおこなえる一つの目安になる。ロボット手術については、同学会の「泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医(手術指導医)」がいる病院であれば、さらにいいだろう。
転移がある場合は薬物治療がおこなわれる。がんが進行している場合でも、免疫チェックポイント阻害薬は生存期間を延ばす可能性の高い治療法だが、全身にわたりさまざまな副作用があらわれる。そのため、コントロールが難しく、他科との連携が不可欠なこともあり、手術数の多い大学病院や総合病院の受診が勧められる。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』には独自調査した病院ごとの手術数を掲載しているので、参考にしていほしい。
根治率だけでなく、治療後のQOL(生活の質)を低下させないためにも、腎がんと診断されたら、幅広く情報を求め、正しく取捨選択をして最適の治療法を選びたい。(文/別所 文)
≪取材した医師≫
東京女子医科大学東医療センター 泌尿器科部長・教授 近藤恒徳 医師
京都府立医科大学病院 泌尿器科部長 教授 浮村 理 医師
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より