
「働くのは負け」「子育て中も自分のキャリア考えなきゃ」 専業主婦と働く女性の埋められない溝
子どもを慌ただしく保育園に送り届けるワーママと余裕のある佇まいで幼稚園に送る専業主婦──。働く女性と専業主婦との差は日常的に存在している(写真:Getty Images)
何のために働くのか、または働かないのはなぜか。働く女性も専業主婦も、それぞれの意思や必要な状況で生活しているが、その価値観は度々すれ違う。私たちは互いに「わかり合えない」のだろうか。AERA 2024年11月18日号より。
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東京都の会社員の30代女性は子どもの育休中、月齢が近い子どもと親が集まる自治体主催の会での出来事が忘れられない。何げなく、復職する予定だと話したところ、参加者のママたちから「働くって何ですか?」と言われたのだ。女性は「住む世界が違いすぎてショックを受けた」と振り返る。
別の会社員女性(44)にも似たような経験がある。育休と夫の海外赴任が重なり、現地で暮らしていた時のこと。日本人コミュニティーで出会う「妻」の多くが専業主婦だったが、その中のひとりが「私、働くのは負けだと思ってるんだよね」と口にしたのだ。
「一瞬フリーズしてしまって、この人は何を言ってるのだろう?と。生きがいを持って働くことが『負け』という発想が理解できず、頭痛がしました。同時に、何を言っても分かり合えないだろうから、ほっとくしかないと思いました」
そんな働く女性たちの声がある一方、専業主婦からも「相手のことがよくわからない」と感じた経験談が聞こえてくる。
小1と2歳の2人の子どもを育てる大阪府の専業主婦の女性(34)は最近、大手飲料メーカーでバリバリ働いていた高校時代の同級生が出産。LINEでお祝いの言葉を贈ったり、赤ちゃんの写真が届いたりといったやり取りをする中で、同級生から「おっぱい、オムツ、沐浴で1日があっという間に終わってしまう」とメッセージが届いたので、「そうだね。そんなかんじであっという間に小学生になっちゃうよ」と返信すると、「焦るね。自分のキャリアのことを考えなきゃ」と返ってきたという。
「キャリアって……。生まれたばかりの赤ちゃんを前にそんなこと考えるんですか? 腹が立ったわけではなく、驚いて言葉が出てこなくて、既読スルー状態になってしまった」
AERA 2024年11月18日号より
働く女性との間に溝
働く女性と専業主婦の間に存在する溝。今年10月、アエラが実施した「働く女性と専業主婦」のアンケートで、「専業主婦」と「ワーママを含む働く女性」の間に感じた価値観の違いを尋ねたところ多くのエピソードが寄せられた。一部を紹介したい。
まずは働く女性側から。
「PTAなどで集まる時、何時でもいいという自由さが専業主婦にはある」(46歳・会社員)
「外資系企業で管理職をしながらシングルマザーとして子育てしているので、子どもがいるから働けないというのが全く理解できない。ベビーシッターを頼んで海外出張もしています」(48歳・会社員)
一方の専業主婦を経験した女性からは、こんな声が届いた。
「専業主婦だと楽していると思われる。ワーママに愚痴は言いづらかった」(50歳・パート)
「専業主婦であることを伝えたときに、『家事と子育てだけなんて私には無理!』とワーママの方に言われてきました。実際は、家庭に閉じこもって1日中家事・育児をしていたわけではなく充実感があった。『専業主婦=世界が狭くなる』というのは思い込み」(40歳・自営業)
(フリーランス記者・小野ヒデコ)
※AERA 2024年11月18日号より抜粋