
義母の料理「手伝ったほうがよかったかも」不安に “義実家との付き合い方”正解あるのか
写真はイメージです(写真:Getty Images)
年末年始、義実家で過ごす人にとって、義父母との付き合い方は頭の痛い問題だ。中でも悩みが発生しやすい場所は「台所」だろう。義実家でどう振る舞えばいいのか。AERA 2024年12月9日号より。
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令和の時代は、かつてよりも義父母は優しくなっているようだ。嫁イビリをする義父母、泣く妻。わかりやすい不仲はそれほど見聞きしなくなったように感じる。
「昭和から平成の初めの20世紀は、嫁姑問題が社会問題でした。お嫁さんは『家風に合わせなさい』と厳しくしつけられ、嫌みを言われることがありました』」(くらし文化研究所主宰、作家・生活史研究家の阿古真理さん)
それが変わってきたのは、嫁姑問題を経験した60代以上が「自分と同じ目に遭わせたくない」と思う傾向にあるからという。だが、義父母といい関係を築けているように見えても、緊張が走る瞬間がある。義実家との間で「駆け引き」が起きる時だ。
東京都の30代の会社員女性は、この駆け引きが苦手だ。
「明るい義母ですが、怖いなって思った瞬間があったんです」
義実家で「手伝いましょうか」と伝えたが、「気にしなくていいから座ってて」と言われたので、お言葉に甘えてリビングで夫とアルバムを見てくつろいでいた。気づいたら、義母が料理を作ってくれていたので、「おいしそう!」と喜んだところ、視線を落とした義母に「無理しなくていいよ」と小声で言われた。
「本当は手伝ったほうがよかったかも」「私、だめなことをした?」と不安になった。義母の本音がつかめず、義実家が苦手になったという。
台所での悩みが多発
台所は悩みが発生しやすい場所だと、前出の阿古さんは言う。
「台所は主に使う人が便利なように、アイテム数が多い調理道具や食品類の置き場所が決まっています。しかし、特に台所の担い手が1人の場合、そのルールは他の人にはわからないことが多く、台所の担い手自身も自覚していないルールが多いので、他の人が使った場合にトラブルが生じやすいのです」
上の世代の価値観アップデート、コロナ禍に帰省しない期間が続いたことで、付き合い方はいまどうなっているのか(撮影/写真映像部・松永卓也)
料理に求めるものも違う。
「料理の仕上がりに美を求めるか、時短を求めるか、料理に向き合う姿勢は人によって違う」(阿古さん)
東京都の教育関係職の女性(48)は、料理するときに時短を心がけるが、義実家は違う。
「義母は料理上手で、義妹にはうちの料理の流儀がわかっていないと怒られます」
悩んだ結果、今は「手伝えることがあったら言ってください」と伝え、子どもたちと料理の配膳、片付けを率先して行うようにしているという。
別の会社員の女性(50)の場合は、年末年始になるといつも義母が夕飯を作ってくれていたが、あるとき「今年は買ったものを食べよう」ということになった。「義母に無理をさせていたかもしれないと後々思った」という。
悩むのは妻ばかりではない。埼玉県の会社員男性(30)も「食事の準備をどのくらい手伝うべきか悩む」とこぼす。別の会社員男性(32)は「自分の実家に帰省するとき、妻だけでなく、私もエプロンを持っていった方がいいんじゃないかと思っています」
義実家での自分の振る舞いが正解なのかわからず、実は自分のいないところで悪口を言われているんじゃないか、と疑心暗鬼になる人は多い。
ベストな立ち位置探る
阿古さんは、「本当の親子ではないから、義父母が何に喜び、不快に思うかわからないのが当たり前です。自分がダメだと思わないでください」とアドバイスする。そして、義父母にもタイプがあるとして、こう話す。
「自分の言葉の裏の意味を汲んでほしい人もいれば、直接伝えるタイプの人もいます。台所は人に荒らされたくないし、一人で料理したい人もいます。一方で昔と違って、体力が落ちて手伝いが必要になってきた義父母もいます」
義父母に、心配なことは聞き、嫌なことは伝えて、関係を深めていくしかないという。そうすれば、ここまでは甘えていい、ここは怒ってもいいと見えてくる、と阿古さんは考える。
もやもやしたり、気疲れしたり。義実家との距離感は頭の痛い問題だが、たまの帰省は視点を変えてみるチャンスでもある。
AERAが11月に実施したアンケートでは、コロナ禍を経て、数年ぶりに遠方の義実家に帰省したところ、「義父母の体が一回り小さくなっていた」「会える機会は限られていると気づき、積極的に帰省しようと思った」という声も寄せられた。年を重ねていく姿に、「宿泊を伴う帰省は義父母の負担になるからやめよう」と付き合い方を見直した人もいた。
義実家との付き合いに正解はない。
「仕事の人間関係はどこまで付き合うか条件が決まっていますし、仕事を成功させて利益を上げる目的もあり単純明快です。ですが、プライベートな家族との関係は、どこまでプライバシーを開示して、どのくらいの頻度で付き合うか、人によります。お互いのベストな立ち位置を探していきましょう」(阿古さん)
ベストな立ち位置を探る年末年始にしたいものだ。(編集部・井上有紀子)
※AERA 2024年12月9日号より抜粋