小学2年生の娘と保育園年長の息子を持つ30代の父親。やんちゃで手のかかる息子のしつけに、秋田の「なまはげ」の動画を使っていますが、妻から「恐怖を植えつけてしつけるべきでない」と責められています。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の疑問に答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:8歳の娘と5歳の息子を持つ30代の父親】

 小学2年生の娘と保育園年長の息子を持つ30代父親です。5歳の息子は、姉の髪の毛を引っ張ったり、マンションの駐車場で大声を出したり、保育園の昼寝の時間に暴れまわったりと、かなりやんちゃです。息子が悪さをするたびに、私が使うのが、秋田の「なまはげ」の動画です。スマホを掲げて「やめないとなまはげがくるよ」と脅すと、ぴたっと悪さをやめるので、手に負えない時に「なまはげ」の動画は欠かせません。しかし妻は、そんな私を「恐怖を植え付けてしつけるなんてただの心理的虐待だ」と非難します。息子が善悪の区別をつけるために効き目があると思うのですが、私は、息子を脅しているだけなのでしょうか?

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「子貢曰(しこういわ)く、我(われ)人の諸(これ)を我に加うることを欲せざるや、吾(われ)も亦(ま)た、諸(これ)を人に加うること無からんと欲す」(公冶長第五)

・「曾子(そうし)曰く、士は以(もっ)て弘毅(こうき)ならざる可(べ)からず。任重くして道遠し。仁(じん)以(もっ)て己(おの)れが任と為す」(泰伯第八)

【現代語訳】

・子貢(孔子の弟子の一人)は言う。「私は、人が私にして欲しくないと思うことは、私自身、人にしないようにします」

・曾子(孔子の弟子)が言う。「道を志す人は、大きな包容力と強い意志を持っていなくてはならない。なぜなら、その人の任務は重く、その人生行路ははるか遠いものだからである。その任務とは何か。それは、“仁”を実践し普及することである」

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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