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ベネズエラ ハイパーインフレで失ったのはお金や物だけじゃない
ベネズエラ ハイパーインフレで失ったのはお金や物だけじゃない
AERA 2017年7月31日号より  わずか数年で物価が何十倍にも高騰する社会。南米の国ベネズエラで、人々は今、「ハイパーインフレーション」に苦しんでいる。ある家族の日常を追った。  世界一の原油埋蔵量が確認されているベネズエラは、天然ガスや鉄鉱石などにも恵まれた資源大国だ。ギアナ高地のエンゼルフォールに代表される美しい自然でも知られる。そこで暮らす人々が今、すさまじい物価上昇が続く中で、毎日の生活を維持するのに必死になっている。 「独善的な政治による混乱と、ハイパーインフレーションによる経済危機が、国民を追い詰めている。お金がない。食べ物がない。治安も極度に悪い。人々の道徳心すらも消えていく。信じてきたあらゆる価値観が失われていく」  そう嘆くのは、ガブリエルさん(48)。販売員として働くショッピングセンターがある首都カラカスから約20キロ離れた町で、妻と15歳の息子とともに暮らしている。 ●日本の人に伝えたい  今回、筆者はSNSを通じて、ガブリエルさんを取材した。米国に住む共通の友人から紹介されて知り合った。同じく接触を試みた他のベネズエラ人たちは、「政府のスパイが取材と偽っているのではないか」「話すこと自体が危険」などとして取材を拒否。それでもガブリエルさんは「国民の窮状を日本の人たちに伝えたい」として、ファーストネームだけの開示を条件に応じてくれた。  ガブリエルさんの朝は早い。首都へつながる自動車道の交通渋滞がひどいため、午前5時には車で自宅を出発。妻はカラカスの教育施設で午前7時に始業、その施設が関係する学校に息子も通っているため、毎朝2人を送っている。自身の仕事が始まる午前10時までは、市場へ寄り、副収入のために毎晩自宅で作っているゼリーやケーキを売る。休日には、車磨きなどをしてさらに副収入を得ている。  それでも妻とあわせた収入は月約60万ボリバル。公式レートでは1ドル=10ボリバルだが、ガブリエルさんによると、実際の市場では1ドル=7千~8千ボリバルの闇レートが妥当だという。その計算だと、ガブリエル家の月収は80ドル前後。日本円で1万円以下の価値にしかならない。  一方で物価はうなぎ登りだ。3年前は商店でフランスパンが50ボリバルで買えたが、昨年は500ボリバルと10倍になり、今年はさらに10倍の5千ボリバルになったという。ガブリエルさんは怒る。 「物価の上昇は年ごとではなく、月ごとだ。知恵を絞って副収入を得るようにしているが、どれだけ頑張っても安定した生活なんて送れるはずがない」 ●デフォルト懸念の声も  ベネズエラ政府は、2015年以降の経済指標を公表していないため、正確なインフレ率は不明だ。それ以前に公表された公式統計の信頼性も不透明であるため、国際通貨基金(IMF)などの国際機関や各国経済学者らは、闇レートを基準に独自の推計値を出すが、実態の把握は難しい。その推計値も過去5年間のインフレ率を数百%とするものから、20年には4千%になるとするものまで様々だ。  ただ、一般的に月間インフレ率が50%を超える状態とされるハイパーインフレに、ベネズエラがすでに陥っているとみる傾向は強く、財政破綻によるデフォルト(債務不履行)を懸念する声も出ている。  数値がどうであれ、国民の生活が一向によくならないのは事実だ。物価高騰に加え、市場に出回る食品や生活必需品が圧倒的に不足している。そのため、物品の購入日は国民ごとに決められているという。 ●夜の外出は殺人が怖い  ガブリエルさんの購入日は毎週火・土曜日、妻は水・日曜日だが、 「店には夜明け前から長蛇の列ができていて、何時間も待たされる。平日に並ぶには仕事を休まないといけない。並んでも、何が手に入るかは分からない」  店は指定日以外には売ってくれないし、指定日であっても、牛乳や砂糖、トウモロコシ粉などは容易に手に入らない。  治安が極めて悪いため、長時間並んで待つことは、銃撃やもめごとに巻き込まれる危険と隣り合わせだという。そのため、物品を転売する闇商人から購入する人たちも少なくない。もちろん価格はさらにつり上がる。店では800ボリバルで買えるトウモロコシ粉を闇商人は4千ボリバルで転売する。そこで物がなくなれば、別の闇商人を紹介されるが、そこでは8500ボリバルを支払うという。 「店で買うよりも何倍も支払うことになるが、列に並ぶより安全だし、購入日に関係なく、いつでも買えるため、仕方がない」  とガブリエルさんは話す。  午後5時ごろの帰宅後は、翌日に売るためのゼリーやケーキなどを午後10時ごろまで作り続ける。出費がかさむ外食や娯楽はあきらめている。そもそも夜間は殺人などが怖くて出歩けない。食事は一日平均2食。朝と昼の間に、トウモロコシ粉を使った生地にチーズなどをくるんだ伝統家庭料理「アレパス」を食べ、昼と夜の間にコメやパスタを食べる。鶏肉などを時々食べるのが楽しみだが、それができるのは月に計10日くらいだ。 「育ち盛りの息子に十分な食べ物を与えられないのが悲しい。息子の将来を考え、多くの人がそうしているように、国外へ逃げる選択肢もあるが、それには資金が必要だ。国の権力者は国民の生活を守ってくれない」  経済だけではなく、政治も混乱を極めている。マドゥロ政権下、無理な価格統制や主要輸出品である原油の価格下落が経済の悪化を招いたと言われているが、その対応に国際社会が介入することを極度に嫌い、国際支援や協力を得る環境にはない。 ●心の澄んだ人たちの国  15年12月の総選挙で3分の2の議席を獲得した野党との間では政治対立が激化し、今年4月以降、反政権デモが各地で発生。欧米メディアによると、治安部隊との衝突などで、これまでに少なくとも70人が死亡している。その状況を米ニューズウィーク誌は「ほぼ内戦状態」と描写している。 「生き続けるため、毎日が戦いだ。教育や医療なども機能していない。国民の生活を尊重しない政権が全ての元凶だ」とガブリエルさん。それでも希望は捨てていない。日本の人たちにぜひ伝えたいことがあるという。 「危機に直面し、悪い印象ばかりが目立つが、私の母国は本来、美しい自然に囲まれ、心の澄んだ人たちが暮らしてきた国だ。この国の人々の良心が、いつか本来の国の姿を取り戻す原動力になると信じている」  年率2%のインフレ目標も達成できない日本にいると、物価が何十倍にもなるようなハイパーインフレが現実に起こりうること自体に驚く。人々の苦しみは想像以上だろう。それだけに欧米では深刻な問題として頻繁に報じられているが、日本ではあまり取り上げられない。  日本と関係がない国ではない。日本の外務省によると、同国へは日本企業22社が進出し、昨年10月現在で409人の在留邦人がいる。危険を覚悟してまで実名で取材に応じてくれたガブリエルさんの勇気に応えるためにも、ベネズエラ国民が直面する窮状に、日本でも関心が高まることを願う。(編集部・山本大輔) ※AERA 2017年7月31日号
AERA 2017/07/26 16:00
“過労死続出法案”を許す 連合に遺族が激怒
“過労死続出法案”を許す 連合に遺族が激怒
連合の本部前であった抗議集会=19日  労働組合はいったい誰の味方なのか。国内最大の労組の中央組織「連合」が、高年収の人を労働時間の規制から外す制度について、容認するかのような姿勢を見せたのだ。  深夜や休日に仕事をしても割増賃金などは支払われなくなり、連合は制度を導入する労働基準法の改正案について「残業代ゼロ法案」だと批判してきた。  ところが、神津里季生会長は7月13日に安倍晋三首相と会談。連合が求める働き過ぎ防止策が受け入れられれば、容認することを示唆した。官邸と太いパイプがあるとされる逢見直人事務局長ら、一部の執行部が主導したようだ。  連合が求める防止策については、不十分だとの指摘がある。年104日以上の休日取得の義務づけなどだが、労働問題に詳しい今泉義竜弁護士はこう語る。 「土日さえ休めばあとは24時間働かせることができるという危険性が、まったく解消されていない。これまでも長時間労働は蔓延(まんえん)してきたが、割増賃金の残業代を支払わなければならないことが抑止力になっていた。新しい制度が実現すれば、奴隷的な働き方を強いられる恐れがある」  対象者はいまのところ年収1075万円以上の専門職だが、将来基準が引き下げられる可能性は高い。「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西笑子さんは、夫を過労自殺で失っている。この制度では過労死が続出しかねないと懸念する。 「残業代ゼロに反対の声を上げていたことを忘れたのか。なぜ方針転換したのか理解できません。命の危険がある制度を受け入れるのは裏切られた思いで、本当に怒り心頭です」  傘下の労組からも執行部を批判するような意見が出ている。非正社員らでつくる全国ユニオンは、「修正内容以前に組織的意思決定の手続きが非民主的で極めて問題」としている。  7月19日夜には連合本部前で、抗議集会があった。労組関係者や市民ら約100人が集まり、「私の残業、勝手に売るな!」「労働組合の看板を下ろせ」などと叫んだ。  批判が噴出したことで、当初7月19日までに結ぶ段取りだった政府や経営者側との合意を、延期せざるを得なくなった。連合は「制度を導入すべきではないという考えは変わらない」としているが、労働者や過労死の遺族らの信頼を取り戻すのは難しそうだ。 ※週刊朝日  2017年8月4日号
仕事働き方
週刊朝日 2017/07/26 07:00
山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介 ドラマ「コード・ブルー」が帰ってきた!
山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介 ドラマ「コード・ブルー」が帰ってきた!
7年のときを経て主要キャスト5人が再結集(※写真はイメージ)  最初の放送は2008年。10年にセカンドシーズンが続き、今回、7年のときを経て主要キャスト5人が再結集した。互いに「戦友」と呼び合い、過酷な現場と向き合う決意を語り合った。 ──3rdシーズンが始まります。皆さんと顔をあわせて、どんなお気持ちですか? 山下智久:続編を求めてくれる方たちの声や、多くの人の協力があって実現したこと。まずは素直に感謝したいですね。 比嘉愛未:仕事場でみんなに会うのは、前シリーズが終わってから7年ぶりです。プライベートでは1年に1回くらいの頻度で「コード・ブルー会」を開いて会っていたんですけどね。その席ではいつも続編の話をしていたから、本当に実現できてうれしいです。 戸田恵梨香:新シーズンのスタートが決まってから以前の映像を見直しているのですが、最初の放送のころの自分って、いま見るとだいぶ恥ずかしいな、と……(笑)。 比嘉:わかる。みんな20歳前後ですよね。あのころって、大人でも子どもでもない年齢ですしね。 新垣結衣:私は、ちょうど撮影中に、20歳の誕生日をお祝いしてもらいました。今回も、撮影に入ってから誕生日を迎えました。ある意味、自分の成長をこの作品に見守ってもらっているような気がします。 ●「戦友」がしっくりくる 山下:キャスト5人がこの7年間、それぞれ懸命に活躍を続けてきて、今回も誰一人欠けることなく同じメンバーがそろった。これは、本当にかけがえのないことだと思っています。 比嘉:私はずっと、みんなの活躍が気になっていました。同じ現場で共演できることはなかなかなくても、「今度はあの映画をやるんだ」「あの作品に出るんだ」と、みんなの情報は必ずチェックしていたんですよ。この「コード・ブルー」という作品を通して「仲間」意識が芽生えたから。いつもみんなのこと、陰ながら「がんばれ!」って応援してました。 戸田:みんなの活躍は本当に心強いです。自分も頑張ろうって思えるから。 山下:過酷な撮影の日々を一緒に乗り越えてきた仲間だから、僕にとっては「戦友」という言葉がぴったりきますね。 浅利陽介:うん。わかる、わかります。すごくしっくりきますね、その表現。 新垣:そう、ただの友達や仲間じゃなくて「戦友」!  比嘉:精神的にも体力的にも、つらい撮影がたくさんありましたよね(笑)。 ●リアルに限界を超えた 戸田:またあの日々が始まるのか……。私、全力で走れるかな(笑)。スピード感がある展開だけに、現場での撮影はとても大変でした。ただでさえ医療用語がたくさん出てくるのに、処置の手数や段取りの多さも、なかなかこたえましたよね。 新垣:現場に入ったら、自分の記憶力が心配かも。あの難しい医療用語をまた覚えられるかな、と。前の2シーズンを見返したら、「よくこんな難しいセリフ言えたな」って感動する場面がいっぱいありました。 比嘉:よく頑張ったよね。本番中、みんなで見守りながら「よし、言えた!」って一緒に喜んだりしてましたよね。 浅利:覚えてる? あのトンネルのシーンの撮影。キツかったよね……。暑いし、閉鎖された空間の中でずっと、お芝居とはいえ血だらけの患者さんの処置ばっかりしていて、気持ち的にもしんどくなっちゃって。 山下:現場のあちこちで、精根尽き果てたみんながゴロゴロ眠ってたよね。 比嘉:そうそう、ずっと暗闇の中にいたから、時間感覚もまひしてきて、いまが昼なのか夜なのかわからなくなって。 戸田:トンネルを出たら、本当に朝で、びっくりしたことを覚えてます。 浅利:このドラマの撮影中は常に興奮状態だから、眠れないし、オンとオフの切り替えが難しかった。 山下:救命の方々は実際に、極限状態の中で人命救助をされているわけだけど、僕らもリアルに「限界を超えた撮影をしているな」と感じるときがかなりあったと思う(笑)。 ●後輩に背中を見せる ──前作から7年がたちました。ご自身を含め、5人が変化したと思うことはありますか? 新垣:1st、2ndシーズンもそうだったけど、私たち5人の関係って、ドラマの中の役柄の関係性とすごく近いものがあると思うんです。ライバルであり、仲間であり、戦友であって、それぞれの年齢と役柄が絶妙にリンクしていますよね。7年前は、若手の役者として撮影現場でジタバタしているリアルな姿と、研修医という役柄が合っていたけれど、今回は後輩に指導する立場だから、作業に慣れて周りを見渡せる余裕を出していかないといけない。何年も経験を積んできた自信がにじみ出るような演技ができたら、と思っています。 山下:この7年の間に自分自身も後輩と一緒に仕事をする場面が増えたし、自然と、自分のことだけじゃなくて彼らのために何かしたいと思えるようになった。もちろん僕自身、まだまだ未熟な部分はあるけれど、この間に少しは成長できたと思うから、いままで積み重ねてきた人生を「コード・ブルー」の「藍沢」という役柄に込めていけたらと思っています。 浅利:そうだね。今回は藍沢先生と後輩医師の絡みとかが面白いんじゃないかと思います。「天真爛漫(らんまん)すぎる後輩に振り回される武骨な藍沢」という図ですよね(笑)。 比嘉:私たちの年代って、役者としても役柄としても、大先輩と若手の後輩たちの間に挟まれているのかもね。1stシーズンの頃の柳葉敏郎さんや勝村政信さんの気遣いが、いまになって身に染みることが多いです。お二人が私たちにしてくださったように、私たちも背中で後輩にいろいろなお手本を見せないと! 今回は私が、現場の空気を和らげるムードメーカー役をやろうと思ってます(笑)。 全員:えっ(笑)。 浅利:いや、始まったときからずっとそうだから! 戸田:ホント、初めからあなたがムードメーカーです! 比嘉:不思議と私の周りで面白いことが起きることが多くて。私も大人になって、みんなを笑わせる腕を磨いたから、いまならちゃんと、ムードメーカーになれます! こういう生死を扱う作品には、メリハリも必要だと思うので。 新垣:確かにそうですよね。あの頃はずっと処置室にこもりきりで、煮詰まってくると柳葉さんや勝村さんが笑わせてくださった。おかげで一気に雰囲気が和んで、撮影がスムーズに進んで。今度は私たちがその役割をやらなくちゃ。 山下:当たり前だと思っていたことが当たり前じゃなかったことを、7年たったいま、感じられるようになったよね。ありがたいことです。 戸田:先輩と後輩に挟まれた私たち5人がどう変化し、成長していくのかも、今回の大きな見どころ、ですよね。 山下:僕ら自身もこの7年間、それぞれが違う現場で戦って、「代表作」と言えるものを手に入れることができました。それって素晴らしいことだと思う。その5人が胸を張って再集結して作るドラマですから、僕自身もとても楽しみにしています。 ●役に向き合って緊張 ──「コード・ブルー」という作品は、みなさんの役者人生にどんなものをもたらしたのでしょうか。 戸田:役者としての「スタートライン」を与えてくれた作品ですね。「役作りってこういうふうにやるんだ」とか「コミュニケーションってこう取るのか」とか、役者としての土台を教えてもらった現場でした。この作品だったからこそ、役者としてきちんとしたスタートが切れたんだと思っています。今回、いただいた台本で私が演じる「緋山(ひやま)」という役柄と久しぶりに向き合って、ちょっと緊張してしまいました。正直なところ、また彼女に戻れるのか、ちゃんと演じられるのか、不安も感じていて。再び彼女を演じられるうれしさも懐かしさもあるけれど、緋山という役は私の役者人生を切り開いた大切な役だから、また本気で向き合うのだと思うと、どうしても緊張してしまうんです。 新垣:その気持ち、すごくわかります。私にとってこの作品は、いい意味で役者としての課題を与えてくれる存在だと思う。新シーズンをやるということになったいまも、単純に「よかったね、楽しみだね」だけの感情では入っていけません。いいタイミングで、自分にとっての課題をはっきりさせてくれる作品が巡ってきたと感じます。そして、全編を通してすばらしいセリフが多いのも、この作品の魅力。生きていくうえで「出合えてよかった」と思える言葉たちにめぐり合うことができた。今回も、そういうセリフとの出合いを楽しみにしています。 浅利:7年前の僕は、「みんなの中で自分が一番実力がない」と感じていました。その劣等感が役柄とリンクして、等身大で演じられた部分が大きかったと思います。いまもやっぱりみんなはすごいわけだけど、自分も一つ一つ積み重ねてきた自信があるから、今度は肩ひじ張らずに演じたい。「藤川」という役柄とずっと付き合う中で、僕自身も大きく成長できました。 ●みんな勝ち残ってきた 山下:僕が藍沢という役を演じることを通して教えてもらったのは、苦しみや葛藤、成長、そして希望という言葉の意味です。成長し続けるためには、苦しみもがき続けなければならないし、学び続けなければ希望はやってこない。  いま、新しい台本を読んでいるところですが、やっぱり今回も、藍沢と向き合って悩み続けているし、役者として学び続けているなと実感しています。これは、何かを成し遂げようとするときには必ず繰り返さなければならないサイクルなのかなって。挑戦し続ける気持ちは、この作品を通して学ぶことができたものだから。藍沢の、どんなに苦しんでも絶対に負けない精神力の強さは、自分が仕事をするうえでもとても刺激になっています。  今回、再び集まることができた5人は、それぞれが違う現場で戦って、ある意味勝ち残ってきた素晴らしい役者ばかり。経験値を積み重ねて強くなった5人の背中を後輩に見せつつ、新たな作品の魅力を切り開いていけたらと思っています。 (構成/ライター・まつざきみわこ) ※AERA 2017年7月24日号
AERA 2017/07/24 16:00
パワーレンジャーには「時代劇の演出」が生きている?
パワーレンジャーには「時代劇の演出」が生きている?
早朝の東京・銀座。パワーレンジャー(左)と、テレビ朝日系列で現在放送中の「キュウレンジャー」との初共演がAERA誌上で実現(撮影/今村拓馬) 不思議なコインを手にし、超人的なパワーを与えられた5人のティーンエージャーが悩みや葛藤を乗り越えてヒーローへと成長する (c)2017 Lions Gate TM&(c)Toei & SCG P.R. レッド、ピンク、ブルー、イエロー、ブラックと5色のスーツをまとった戦士が6500万年前から存在していた悪の勢力に立ち向かう。日本語吹き替え版声優はレッド・レンジャー役を勝地涼、ピンク・レンジャー役を広瀬アリスが務める(c)2017 Lions Gate TM&(c)Toei & SCG P.R. アメリカで定期的に行われるパワーレンジャーをメインとした特撮系イベント「パワーモーフィコン」には毎回多くのファンが参加する(写真:東映提供)  世界にはばたいた“クールジャパン“が今夏、日本に逆上陸する。7月15日公開の映画「パワーレンジャー」は、20年以上、アメリカで戦い続けてきた“アメリカ版スーパー戦隊“だ。ロングヒットを続けるまでに成長した秘訣をひもとく。 *  *  *  日本を守ってきた戦隊ヒーローがアメリカに渡ったのは1993年。日本で放送されていたスーパー戦隊「恐竜戦隊ジュウレンジャー」をベースに、アメリカでローカライズされた作品は「パワーレンジャー(英題:Power Rangers)」(初代は「マイティ・モーフィン・パワーレンジャー」)として生まれ変わる。以後、パワーレンジャーは、副題(パワーレンジャー・ターボ、パワーレンジャー・スーパーサムライなど)を変えながら日本の最新作品をベースにリメイクを続けてきた。  初上陸のインパクトは強烈で、放送を開始すると人気は瞬く間に広がり、社会現象になった。テレビシリーズと、今回の映画版でプロデューサーを務めたブライアン・カセンティーニさんが振り返る。 「年末のクリスマス商戦では、フィギュアなどの玩具を求める列に徹夜で並ぶ親子の姿がニュースで取り上げられ、ユニバーサル・スタジオでパワーレンジャーショーを開催した時には、近くの高速道路があまりの渋滞で閉鎖されるという事態も起こりました。ある放送回では、2歳から11歳の視聴率が90%以上を記録。ほとんどの少年が観ていたという驚異的な数字を出したんです」 ●ヒーローは1人が常識  1作目でブームを巻き起こしたパワーレンジャーだが、放送までの道のりは決して平坦ではなかった。それは日米の文化の違い。まず、アメリカ側の制作チームに、“グループヒーロー”というスーパー戦隊の定義を理解してもらう必要があった。  当時のアメリカのヒーローは、「スーパーマン」「スパイダーマン」「バットマン」など、1人のヒーローが世界を救うストーリーが主流。そもそもアメリカの文化にはキリストという唯一無二の絶対的存在が根付いており、ヒーローも1人という考え方が常識だった。5人(複数)のヒーローがいることの説明に苦労したという。 「キリストはひとりです。5人はいないのです」  アメリカのディレクターによるこの一言は、番組関係者にとって忘れられない一言だったという。  また、スタントマンに、独特のアクションとポーズをやってもらうことも、ハードルが高かったという。長寿番組となった要因は、ドラマパートでコメディー要素を入れるなどアメリカ側の制作スタッフの創意工夫があったことはもちろんだが、日本のスーパー戦隊がシリーズを通じてこだわり続けた演出を受け継いだことも大きい。 ●時代劇から続く文化  見せ場となる名乗りのポーズや必殺ポーズをはじめ、5人のヒーローが順序良くアクションを重ねる演出が日本と同様にアメリカの子どもたちの心をつかんだ。この戦隊流のアクションは、時代劇の演出をベースとする動きだという。 「日本のヒーローアクションというのは、格闘技でもない、体操でもない。どうすればヒーローをかっこよく見せることができるかをとことん追求したアクションです。間の取り方から顔の角度まで、怒った時はぐっとあごを引くとかね。独特の表現方法です。これは日本の時代劇から特撮ヒーローへ続く、長年培われた文化ですよ」  こう話すのは、パワーレンジャーのテレビシリーズにスタント、監督、プロデューサーといった立場で15年以上関わった坂本浩一さんだ。  だが、当時のアメリカは戦隊アクション未開の地。幼い頃から時代劇の見えや殺陣を観て親しんでいる日本人とは異なり、独特の表現方法を知らないアメリカ人のスタントマン(スーツアクター)は、見よう見まねでやってみても当初はうまくできなかったと語る。 「例えば、格闘技の経験者を呼ぶと蹴りがうまい人はいるし、パンチがすごい人もいる。でも、一瞬の力強さだけは表現できても、流れるようなアクションはできないんです」(坂本さん)  日本でスタントマンとして活動していた坂本さんは高校を卒業すると、映画監督を目指して18歳で渡米。アメリカでもスタントマンの活動を続けているうちにパワーレンジャーの制作スタッフから声がかかった。 「スーパー戦隊のアクションの色が出せないから手伝ってほしいということでした。駐車場に行って、戦隊流のアクションを演じて見せました。日本では、週末は遊園地でヒーローショーのスーツアクターをやっていましたから、頑張りましたよ! ポーズをとったり、やられて倒れたりとか、一通りやったら、『まさにその動きがほしい』と」  パワーレンジャーのセカンドシーズンから参加し、早速、日本からスタントチームを呼んでスーツアクターに起用した。 「現地のスタントマンも一緒にやりました。指導を続けるうちにマスターする人も出てきました。徐々に戦隊流のアクションとはこういうものだという意識が芽生えたんだと思います」(坂本さん) ●全米に与えた影響  パワーレンジャーに日本の戦隊流のアクションの種をまき、少しずつ芽吹いていく喜びを感じながら、思わぬ事態が起きて坂本さんを感動させる。 「アメリカの子どもたちが格闘技を習い始めるという現象が起こったんです。当時はクラスの男の子の半数以上が空手やテコンドーの道場に入門。理由を聞くとパワーレンジャーが好きだからって。それから20年以上経って、今アメリカの第一線で活躍しているスタントマンたちに、スタントを仕事にしたきっかけを聞くと、子どもの頃にパワーレンジャーを観て憧れだったと言われて、感激しました」  パワーレンジャーは今、ヨーロッパ、中南米、アジアなど世界160以上の国と地域で放映される世界的なヒットコンテンツに成長した。今回の映画版は、ド派手なアクションやコンピューターグラフィックス(CG)など最新技術を駆使した映像が魅力のひとつ。ヒーローとなる5人の高校生たちの成長物語も見どころだ。超人的な能力を身につけても、簡単には変身できないことに気づいた5人は、家族や学校などそれぞれが抱える悩みや葛藤を乗り越えて、真のヒーローへと覚醒する。大人が観ても楽しめる作品だ。  アメリカで大きく花開いたヒーロー戦隊。世界で成功した日本のコンテンツには、時代劇から続く日本独自の演出方法が生きている。 (ライター・内山賢一) ※AERA 2017年7月24日号
AERA 2017/07/19 16:00
アマゾンを動かすキーパーソンが立ち返るたった一つのビジョン
作田裕史 作田裕史
アマゾンを動かすキーパーソンが立ち返るたった一つのビジョン
アマゾン「一強」の主役たち(撮影/植田真紗美) 「プライムナウは急ぐことが目的ではない。届くことが大切」プライムナウ担当・永妻玲子(ながつま・れいこ)さん/大学卒業後、国際通信事業者、米系ソフトウェア会社を経て、2009年にアマゾンジャパン入社。プライム(日本版)、ポイント事業のビジネスを推進(撮影/写真部・小原雄輝) 「アマゾンは新しいことにアグレッシブ。仕事はやりやすかった」サプライチェーン担当・鳴坂育子(なるさか・いくこ)さん/大手電機メーカーのSE、ソフトウェア会社、コンサルを経て2004年アマゾンジャパン入社。サプライチェーン・マネジメントシステム導入などに従事(撮影/写真部・小原雄輝) 「働く上では、企業と価値観が合うことが大事だと思います」ライフ&レジャー担当・渡辺朱美(わたなべ・あけみ)さん/九州大学理学部卒業後、日本IBMの執行役員、バイスプレジデント、レノボ・ジャパン代表取締役社長を歴任。2013年アマゾンジャパン入社(撮影/写真部・小原雄輝) 「止まらないシステムはない。一つ落ちても他の二つでカバーする」アマゾンウェブサービスジャパン社長・長崎忠雄(ながさき・ただお)さん/米カリフォルニア州立大学卒業後、米デルやF5ネットワークスジャパン社長を経て、2011年から現職(撮影/写真部・小原雄輝) 「ターゲットはすべての人。服を着る人全員です」ファッション担当・ジェームズ・ピータース(James Peters)さん/リーボック、コーチ・ジャパンなどを経て2015年にアマゾンジャパン入社。アジアのリテール業界で20年以上、うち14年間が日本でのキャリア(撮影/写真部・小原雄輝)  2000年に本のECサイトとして日本に上陸したアマゾン。いまやあらゆるものを扱い、他の追随を許さない巨大ECサイトに成長した。一方で、アエラが行ったアンケートでは、回答した137人のうち「アマゾンを使っている」と答えた人が96%。同時に、「できれば使いたくない」と答えた人が44%もいた。拡大の原動力は。便利なのに不安にさせるものの正体は。AERA 2017年7月24日号では「アマゾン」を大特集。アマゾン・ジャパンのキーマンたちに話を聞いた。 *  *  *  東京・目黒のアマゾンジャパン本社。19階にある受付に、一人、また一人と社員たちが集まってきた。  7月上旬の金曜日、約束の時間は午前10時半。今回のアマゾン特集の扉の写真を撮るために、できるだけ多くの社員に集まってもらってください、と広報を通じてお願いしたのだった。  何人くらい集まりますか?の問いに、広報の答えは「50人から100人」。それが、最終的には170人に膨れ上がり、ご覧のような一枚となった。  集まったのは、人種も国籍も年齢も、性別も服装もバラバラの社員たち。売上高約1・2兆円、取扱商品総数2億種類を超えたアマゾンジャパンは、年を追うごとにサービスの網の目を細かくしながら膨張を続けてきた。いまでは、本やCD、DVDはもちろん、日用品から中古車、ウェディング、リフォームまでを取り扱う。  空白地帯だった生鮮食品も「アマゾン・フレッシュ」としてスタートさせた。 ●できれば使いたくない  しかし、日々の生活に欠かせない存在となる一方で、アマゾンには「秘密主義」「得体が知れない」といったイメージが付きまとう。アエラがインターネットを通じて行ったアンケートでは、回答した137人のうち「アマゾンを使っている」と答えた人が96%。同時に、「できれば使いたくない」と答えた人が44%に上った。  アマゾンなどネット通販の取扱量が急増しドライバーの労働環境が悪化しているとして、ヤマト運輸が当日配送の縮小や配送料の値上げを求めたり、一部の提携事業者が指定日時に荷物を届けられない事態が発生したりするなど、サービス拡充の「ひずみ」ではないかと見られる出来事も相次いでいる。  いったい誰が、何を考えてアマゾンを動かしているのか。これからどうなるのか。できるだけ多くのアマゾン社員の「顔」を見ながら血の通った話が聞きたい。そんな思いで、取材をスタートさせた。 「アマゾンというと、すべてが自動化されているイメージがあるかもしれません。でも、お客さまへの臨機応変な対応は、生身の人間の判断です」  そう話すのは、商品の入荷から出荷、フルフィルメントセンター(FC)と呼ばれる物流センターの在庫管理など、サプライチェーンを統括するSCM事業本部事業本部長の鳴坂育子さん。忘れられない出来事があるという。  2011年3月11日、東日本大震災で東日本のFCや流通網が甚大な被害を受けた。いたるところで交通がストップし、鳴坂さん自身も新宿駅で足止めされた。配送はどうなっているのか、ユーザーは何を必要としているのか……不安を抱えながら夕方になってパソコンを開くと、届いていたのは部下からの「最終確認」メールだった。 ●入社当時とは別の会社  会社に残っていたスタッフが、影響を最小限に抑えるために「どの荷物をどのFCに振り分けるか」「配送が遅れる可能性があることをユーザーにどう伝えるか」など、対応する準備を済ませていたのだ。鳴坂さんはリーダーとして、それを文字通り最終確認するだけだった。 「誰も経験したことのない状況で、マニュアルもない。そんな中でも、アマゾンが目指す『顧客第一』を担当者一人一人が実践し、自ら判断して行動できた。本当に感動しました」  アマゾンは、「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」というビジョンを掲げ、「品ぞろえ」「価格」「利便性」を追求することでこのビジョンを実現する、としている。「顧客第一」は、取材を進めるなかで、繰り返し聞くことになった言葉だ。  アマゾンが日本に上陸したのは00年。鳴坂さんがアマゾンに入社したのが04年。彼女は、会社とその成長の歩みを知る貴重な存在だ。入社当時、アマゾンが扱っていたのは、本、CD・DVD、家電とおもちゃだけ。 「入社当時とは、別の会社のようです」  感慨深げにそう振り返る。  米国で開発された仕組みを日本に導入するプログラムマネジャーとして入社。現在では一般的になったコンビニ配送など、新しい配送サービスが導入されるたびにそれに見合うシステムを構築してきた。 「一般的な会社は、仕組みやプロセスが変わるのを嫌がる。でもアマゾンでは『効率化するなら、どんどんやろう』と新しいことにアグレッシブ。仕事はやりやすかった」 ●日本向けに落とし込む  やると決まれば、実行のスピードは驚くほど速い。ただ、決めるまでは、本当に顧客のニーズに合致しているのかどうかを徹底的に検証する。苦労したのは、米本社に日本独特のニーズを理解してもらうことだ。  例えば、「予約販売」の仕組み。日本ではごく一般的だった予約販売だが、米国では「予約しておくと発売日に自宅に商品が届く」というコンセプト自体になじみがない。具体的な利用シーンを丁寧に伝える必要があった。 「『予定した予約個数になったら販売をストップする』機能も必要になるわけですが、そうした当たり前のことを納得してもらうのが難しかった。ただ、一度理解してコミットしてもらえれば、そこからは本当に速い」  プライムナウ事業部の事業部長・永妻玲子さんも、米本社と議論を重ねながら、日本で新規事業を立ち上げてきた幹部の一人だ。入社は09年。最初の仕事は、日本版「アマゾンプライム」の拡充だった。アマゾンプライムは、同社が成長の柱の一つに位置づける会員制サービスだ。  その後も、日本の独自サービスであるポイント事業のマネジメントを担当。米国の認識は「ポイントは値引きが難しい場合の代替機能」だったが、日本が目指すポイント制は、マーケティングツールであり、顧客とのコミュニケーションツールでもあった。 「サービスの質は、細部に宿る。日本人向けにしっかりと落とし込んでいく必要があった」  永妻さん指揮のもと、15年11月には、地域限定でプライム会員向けに1時間以内に商品を届ける「プライムナウ」がスタート。ここからアマゾンの「利便性」が加速していく。  専用アプリから2500円以上の注文をすることで利用でき、1時間配送だと別途890円かかる。2時間便なら無料。専用の配送拠点が国内に6カ所あり、その近くなら20分で届くこともある。そこまで速さを追求する意味はあるのだろうか。 「1時間配送はご利用方法の一つにすぎません。速さより『確実に受け取れること』を重視しています。あと1時間は確実に在宅されるという方は1時間配送をお使いになり、明朝の朝食の材料を注文したい方は、翌朝の時間指定を利用される。『急ぐ』だけのサービスではありません」(永妻さん)  実際、買われる商品は緊急性の高いものばかりではない。ゲーム機や新刊書籍などは深夜0時の発売解禁と同時に配送するキャンペーンを使うことで、深夜の店頭に並ばなくても「できるだけ早く手に入れる欲求」が満たされる。「ボージョレ・ヌーボー」なども含め「発売日にいち早く買う」ことに意味を見いだす日本人には、フィットしている。 何かあれば立ち返る  では、米本社と日本のどちらが、日本でのビジネスの方針を決めているのか。ライフ&レジャー事業本部の統括事業本部長を務める渡辺朱美さんは日常的に、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長らとともに重要な意思決定にかかわる。 「事案の大小で異なりますが、ほとんど日本で決めています」 と渡辺さん。莫大な投資を必要とする重要案件を除けば、本社とのやりとりは情報共有レベルだという。  パソコンメーカーの社長だった渡辺さん。前々から「もっと動きの速い、消費者に近い仕事がしたい」と考えていた。そんなとき、ヘッドハンターにアマゾンを紹介された。入社を決めたのは、社員が守るべき信条を定めた「リーダーシップ・プリンシプル」=21ページに共感したからだ。  すべての社員がリーダーとして行動することを求められ、そのために心がける信条として14項目が定められている。渡辺さんは特に「Customer Obsession(顧客を起点に行動する)」「Ownership(オーナーシップ)」「Invent and Simplify(革新と創造を求め、シンプルな方法を模索する)」に強く共感したという。 「まさに『これだ!』という感じ。私が部下に伝えてきたことと、まったく同じ考え方だった。働く上では、企業と価値観が合うことが大事だと思います」 「顧客第一」がビジョン、「品ぞろえ」「価格」「利便性」がビジョンを構成する要素だとすれば、このプリンシプルは行動規範。アマゾンで働く人たちは、何かあれば必ずここに立ち返るということを徹底している。 ●アマゾン独特の習慣  おもちゃや車用品、スポーツ用品、DIY、キッチン用品までを含む「ライフ&レジャー」の分野でも同じ。 「これまでeコマースになじまなかった分野の販売を拡大するために、オフラインのサービスを強化していきたい」  と渡辺さん。例えば、車の部品、蛇口や便器などは、商品を購入した後、専門業者による取り付けが必要だが、こうした業者による施工そのものもアマゾンで購入できるようにすることで、今まで対象外だったジャンルも「品ぞろえ」できる。実際、テニスのガット張りなどが商品になった例もある。 「地球一」の追求は、相当なハードワークを強いるのでは?と問うと、渡辺さんは、 「確かに仕事の密度は濃いし、質の高さも要求されますが、メリハリを利かせて仕事をエンジョイしている人が多いですよ」  と答えた。自宅での仕事を可能にする「ワークフロムホーム」という制度があって、月に数回はこの制度を利用して、自宅でたまった書類を片付けるという。両親の介護や子育てなどの事情がある社員を想定して作られた制度だが、それに当たらない渡辺さんも使うことをさまたげられない。その他の平日も、朝は7時に出勤。夕方6時には退社して、休日は庭いじりを楽しむ余裕もある。 「Work Hard, Have Fun, Make History.」  アマゾンジャパンのカフェテリアに掲げられたワークポリシーを、地でいく働き方だ。  明文化されたプリンシプルやポリシー以外にも、アマゾンには独特の習慣がある。  法人向けにクラウドサービスを提供するアマゾンウェブサービス(AWS)の日本法人で社長を務める長崎忠雄さんは、その象徴は「プレスリリース」だと話す。サービスやプログラムを開発しようというときは最初に、それを公に発表する際に使うプレスリリースを書き上げるというのだ。 「作りたいものへの思いが強すぎると、方向性がブレてしまう。お客さまがいま抱えている問題をどう解決し、どんなメリットが得られるのか。それをまとめておくと、迷ったときもそこに立ち返ればいい。結果的にインパクトがある製品が生まれる」  これは、世界中のアマゾンに共通する手法だという。  大人数で会議をすると役職などが気になって発言しにくい場面が生まれるから、会議の参加者は「切り分けた2枚のピザが行きわたる程度の人数まで」という「Two Pizza Rule」もある。 ●6年で顧客10万以上  06年、AWSは世界に先駆けてクラウドサービスの提供を開始。現在は、世界で190カ国以上、数百万の顧客を抱えるまでに成長した。日本では09年にオフィスを構え、データセンターを設置した11年から本格的にサービスの提供を始めた。わずか6年で急成長を遂げ、日本国内だけで、大手企業や官公庁も含めた10万以上の顧客を獲得している。だが、顧客の開拓は容易ではなかった。 「人間は慣れ親しんだやり方を変えることには慎重です。しかも、サービス開始当初は私たちは『信頼の貯金』がない。お客さまの元に足しげく通って顔を覚えてもらい、ご要望があったサービスを一つ一つ追加して、またご提案することの繰り返しでした」(長崎さん)  最優先事項は言うまでもなくセキュリティー。データセンターの建物の管理やアクセス確認などを厳重に行うことはもちろん、地震などでデータセンターが止まってしまうリスクにも備えている。顧客はデータを日本に置くのか、海外に置くのかを選択できるほか、国内3カ所のデータセンターはそれぞれ異なる活断層帯に位置し、電源やネットワークも別系統。万一、一つが止まっても他の二つがカバーできる体制を取っている。 「お客さまからの要望で何かを改善したら、それを他の100万社以上のお客さまにも使っていただける。『規模の経済』が働くのでサービスの質は常に向上していきます。この原理はコストにも働くので、これまで60回以上も値下げしました」(同) ●すべての人がお客さま  急成長中の分野は他にもある。ファッションだ。  ファッション事業部門の統括事業本部長、ジェームズ・ピータースさん自身が、 「アマゾンの中で最もエキサイティングで、最も急成長を遂げているカテゴリーです」  と胸を張る。  実際、ファッション分野におけるアマゾンの動きは目まぐるしい。先月は米国で「プライムワードローブ」という新サービスが発表された。一定の数のアイテムを試着したうえで、7日間のうちに購入するか返品するかを選択できる。まさに、自宅が試着室になるサービス。まだ正式にスタートはしていないが、ネットでの服の買い方に大きな変化をもたらすのでは、と話題を呼んでいる。  昨年からは東京ファッションウィークの冠スポンサーにもなった。東京ファッションウィークといえば、パリコレクション、ミラノコレクションなどと並び世界的にも大きな影響力を持つファッションショー。ハイブランドがずらりと顔をそろえる。  ターゲットはどこなのか。プライムワードローブは、外に服を買いに出かけるのが面倒な人、服を買うことに時間と労力をかけたくない層を狙っているようにみえるが、ファッションウィークでハイブランドに注目するのは、コアなファッション好き。どっちつかずになりませんか? 「ターゲットはすべての人です。すべての人がお客さまだからです」  とピータースさん。ピータースさん自身、一昨年にアマゾンに入社した直後は、まず顧客をセグメントしようと考えた。ターゲット設定はどんなビジネスでも定石。だが、創業者であるジェフ・ベゾスのビデオを見て、考えを大きく変えた。 「ベゾスは明確に、カスタマーは服を着る人全員だ、と言っていた」 ●迷いのなさがエンジン  そこで発想を転換。できる限りの品ぞろえを提供し、顧客が一番早く欲しいものを見つけられるようにすること、つまり、顧客自身が「自己セグメント」できることを目指したのだ。 「美しい写真や言葉で、サイトのルックアンドフィール(見た目と操作感)を改善する。関心を持ってもらえるものを打ち出す。日々、取り扱いブランドを拡充する。これにより、お客さまのセルフセレクションを助けています」  アマゾンといえばサイトの各商品の表示の統一感が特徴だが、ファッションも例外ではない。「写真の最初の1枚の背景は白で、画像全体の85%以上を商品が占めていること」などの規定がある。ブランドにとって、これは独自の世界観を表現する際の足かせにならないか。ピータースさんはこう説明する。 「お客さまは検索結果が一貫していて、見たいものが早く見つけられることを望んでいます」  ここでも、貫かれるのは「顧客第一」と「品ぞろえ」「価格」「利便性」だ。 「1枚目の写真には規定がありますが、2枚目以降は独自に追加できる。アマゾンを経由してブランド自身の特徴も伝わる。すばらしい機会を手に入れることができるのです」  アマゾンは、ピータースさんがこれまで携わってきたどの企業よりもスピーディーだ。 「単に速いだけではプラス、マイナス両方の意味がある。アマゾンの特徴は意思決定からの速さです。意思決定までには深い分析があります」  シンプルなビジョンとそれに基づいてなされる意思決定には、迷いがない。社員全員がそれを信じている。その迷いのなさが、アマゾンを加速させる最大のエンジンなのだ。(編集部・作田裕史、市岡ひかり、高橋有紀) ※AERA 2017年7月24日号
企業
AERA 2017/07/19 11:30
日野原重明さんが在りし日に語った「健康法3つの基本」
日野原重明さんが在りし日に語った「健康法3つの基本」
日野原重明さん (c)朝日新聞社  18日に呼吸不全で亡くなった聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さん。105歳だった。ベストセラーとなった自著『生きかた上手』をはじめ、これまで多くの言葉を残してきた。医療従事者向けの医療誌「メディカル朝日」では、日野原さんが96歳だった2007年にインタビュー記事を掲載。ボランティア活動に関する事項を中心に、健康とはかくあるべきか、日常診察のヒントなど、幅広く語っていた。 (このインタビュー記事は、2007年11月号「メディカル朝日」に掲載されたものです) ――高齢社会のスーパースターでいらっしゃる。お元気の秘訣は? 日野原: 昨夜寝たのが午前1 時半。今朝は5時半に起きたが、体はなんともない。日中は、会議や講演、取材の予定が詰まっていて、合間を縫って診察に回る。さっきは亡くなられた患者さんを看取ったばかり。こんな感じで今日もまた、夜8時頃まで仕事がある。  旅行にもよく出かけています。国内の学会や会合のほか、ユニセフの大使をやっているので海外にもよく行く。来週からスペイン、来月は韓国、来春に台湾。そうそう来年の7月には、ブラジル新老人の会を起こすために、ブラジルに出かけることになっています。楽しみです。  僕の健康法の基本は、睡眠と食事と運動。10年ほど前から、うつ伏せ寝を実行しています。枕を三つ用意して、頭部と、胸と胴の間におき、その上に体ごと乗っかる。そして、もう一つの枕を膝の間にはさむ。こうすると50数えるうちに、もう眠り込んでいる。うつ伏せ寝は、寝付きが良く、睡眠も深いので、毎日4時間くらいの睡眠で大丈夫。しかも、呼吸が腹式になるから肺活量が増える、喘息や痰の多い人は痰が出やすくなるなど、いいことづくめ。ぜひ、皆さんにも勧めたい。  食事は1日1300キロカロリーと決め、夜だけご飯を食べます。肉を1日おきに80グラムくらいずつ食べる。野菜はお皿いっぱいたっぷりと。米国の実験で明らかにされているんですが、飽食のマウスよりもハングリーなマウスのほうが長生きする。ローカロリーこそ長寿の秘訣というのが、最近のアメリカの知見なんですが、僕はそれをかなり前から実践している。  運動は歩くのが基本です。僕は今でもエスカレーターに乗らない。階段を登る。空港の動く歩道にも乗らない。隣を早足で歩く。乗っている人を追い越した時には言いようのない達成感がわき上がってくる。こういうのを大事にしていると、次第に体を動かすのが楽しくなってきます。 ――健康に不安を抱いている患者さんには、どのように接していますか。 日野原: 人間というのはもともと病気を持っている存在。生まれながらにして遺伝子に老化が組み込まれていて、動脈硬化や糖尿病など、いろんな病気の遺伝子を持っている。だから、全くの健康人なんていない。大事なのは「健康感」を持つことです。  健康とは、朝起きた時に「ああ爽やかな日だな。今日はどんなことができるかな。そういえば、孫が帰ってくるな。これは楽しみだ……」などと、生きている幸せを感じ取っている状態を言う。こういう健康感を持っていれば、その人はもう健康なんです。たとえリウマチがあったって薬を飲めば普通に近い生活ができる、糖尿病や高血圧があったって薬さえ飲んでいれば仕事ができる、こんなふうに日常生活に支障がなければ、それはもう健康なんですよ。  ところが、患者さんの中には、あれこれと不安を抱く人がいる。ドックで調べてなんの問題もないにもかかわらず、調子がすぐれないから、もっと調べてほしいと言う。せっかくお金を出したんだから、病気を見つけてほしい……とか。いわば、健康感とは正反対の「不健康感」を持っている。こんな患者さんには、「もともと人間は病気の遺伝子を持っているんだから、精密機械のように完璧な体で生きていくことはできない」と話します。発想を転換させることが大事なんです。  お金を儲けている人はもっともっとお金を儲けたいから、いつまでたっても満足感がない。でも、お金があまりない人はささやかなことにも幸福を感じる。それと同じで、完璧な健康を求め始めると不健康感を抱くばかり。いつまでたっても健康にはなれません。 ――心配症の患者さんも多いと思います。 日野原: 健康を感じるには、運動がいちばんです。私たちは運動をしている間はストレスなんか感じない。烏は飛ぶのをやめると落ちてしまう。だから鳥にとって飛ぶことはストレスではない。人間の場合は、歩くことですよ。歩いていれば病気の心配なんかしない。まずは歩きなさい、と勧めます。それからストレスにはいいストレスと悪いストレスがあって、悪いストレスは胃潰瘍になったりするけれど、いいストレスは病気にはならない。寒稽古や寒中水泳をしても風邪は引きません。積極的に生きでさえいれば、人間は健康を保つことができる。そういうふうにできあがっているんですよ。「ポジティブに生きることこそ、健康への近道」ということを分かってほしい。 ――聖路加国際病院のボランティア活動についてお尋ねします。現状は? 日野原: 現在、合計350人ほどのボランティアが病院内の誘導や入院の世話、食事を始めとした日常生活の支援、健康指導など、多岐にわたって献身的な活動をされています(2007年当時)。 ――始めた当初、反発はありませんでしたか。 日野原: 最初は「素人に何ができるか」という声がありました。でも、患者にとっては、医師よりもボランティアのほうが、いろんなことを聞きやすい。ボランティアから「玄関で待っていますから、どんな服装で来られるか、教えてください」と言われると、患者は「それじゃあ、病院へ行こうか」という気持ちになる。  医者でなければ医学はできないと一般には思われているけれども、これはちょっとおかしいと僕は思う。音大を卒業しなくても作曲家になる人はいるし、文学部を出なくても作家になる人はいる。どんな分野だって、その分野の専門教育を受けなくても、創造的な仕事をしている人がいっぱいいる。ところが、医療については、専門の学校を出た医療従事者しかできないと思われている。そんなことはない。医療には、専門教育を受けていなくてもできることがいっぱいあります。  ライフ・プランニング・センターでは、30年前に、一般の市民に聴診器で血圧を測る方法を教えた。当時、看護学校にも同じことを教えに行った。その頃は、聴診器は医者のもので、それ以外の者が触れるのはとんでもない、という考え方が支配的だったわけです。ところが、教えれば、誰でも聴診器で血圧が測れる。そんなに難しいことではありません。 ――ボランティアだからできるということはありますか。 日野原: 医学は自然科学ですが、ある一定部分は生活科学でもあるんです。19世紀以降、消毒やら薬物やら、近代医学は科学的な考え方を中心において発達してきた。が、今は生活習慣が最重要視されている。何を食べ、どう動き、どう睡眠をとるか、生き方そのもので健康であるかどうかが決まってくる時代になってきている。こういう時代には、人生経験の豊富なボランティアは貴重な存在です。  例えば、僕はたばこを吸ったことがない。だから、「肺に悪いからやめなさい」と言っても、やめるつらさが分からないので、お説教になってしまう。ところが、かつて毎日100本吸っていた人が「朝、食欲がなく、手が震えるわ、吐き気がするわで、大変だったけど、たばこをやめたらこんなに体の調子がいい。つらいのは一時。それを乗り越えたら、うんとラクになりますよ」と言うと、説得力がある。  病気経験のある人が、自らの体験をもとに積極的に生きる方法を語ると、実に説得力がある。若くて元気な医師ではちょっと無理なことが、ボランティアなら可能なのです。 ――ボランティアの皆さんに望むことは? 日野原: 日常の支援活動も価値があるのですが、せっかく貴重な体験をしているのだから、介護や看護、医療の一部分までできるようになってほしい。血糖値の高い患者は自分でインシュリン注射を打つ。ならば、ボランティアだって注射を打てると思う。体温や血圧だけでなく、血糖や蛋白も測れる、そして専門家の意見を参考にしてデータを解釈する。こういう時にはこうだと、一度先生から聞けば、次からは自分でその判断ができる。「門前の小僧習わぬ経を読む」と同じで、医療に関する学校を出なくてもかなりのことができるようになります。ボランティアの皆さんには、もっともっと専門性を身に着けて、医学や医療、看護の本質に到達してほしい。  ボランティアという言葉は、カトリックのミサで瞑想する時に弾かれる音楽であるヴォランタス(voluntas)からきています。心の思いのとおりを音にするわけだから、ボランティアはなにはともあれ自然体でなければならない。「しなくてはならない」と言われてするのはボランティアではない。やはりボランティアは純粋な気持ちで、自分を捧げるという基本が大事です。 ――理想のかかりつけ医はどんな存在でしょう? 日野原: 日本では開業医よりも、病院の先生のほうが偉いと思われている。これは大間違い。大学病院ほど研修医や経験のない人が多くいる(笑)。地域に根付いて診療を行っている開業医のほうが名医であるのは間違いない。でもなぜか、一般の人は大病院に権威を感じ、そちらのほうが良いということになってしまう。  かかりつけ医は、地域に住んでいるから患者の日常生活など、個人的な事情をよく知っている。大学病院なら血圧が高いとなると、さあ血圧降下剤だということになりがちだけれども、かかりつけ医は、その人が今どんな心理状態であるかに思いをめぐらす。そして、「そういえば、子どもが受験だ。だから、血圧が高いのは当然。試験が終わるまで様子を見て、それでも高ければ薬を出そう」といった判断にたどり着く。かかりつけ医にしかできない診察です。  検診なども、患者自身が決めるのではなく、かかりつけ医が、症状を聞いて、どの検査を受けるのかを決めるようにしたらいいと思う。いずれにしても、最近は、若い医師たちが少しずつ、いろいろなことにチャレンジするようになってきているので、あと10年ほどたったら、日本におけるプライマリケアはかなり良くなっていると期待しています。 ――高齢者を診る時のヒントはありますか。 日野原: 高齢者は言ったことをすぐに忘れる。だから、1回言っただけで分かってもらえると思ってはならない。患者は10のうち1を理解したと受けとめるといい。「前に言ったじゃないですか!」という言い方は良くない。ケンカになってしまう。辛抱強く、包容力を持って、気長に「こうですよ、忘れないでくださいね」と説得することです。忘れたら、また同じことを説明する。高齢者を診るのは、気が長くないと務まりません。 聞き手/近藤雅人 メディカル朝日編集長(当時)
シニア健康
dot. 2017/07/19 00:00
新人がたった一度の叱責で休職、遊興生活をSNS投稿し組織崩壊寸前に!
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職場で入社したての新人が上司・先輩との接し方に悩んでメンタル不調に陥っていないか?(※写真はイメージ)  新卒の社員が入ってはや1ヵ月半。研修真っ最中の会社もあれば、短い期間で研修が終わり、上司と新人が一緒に仕事をし始めた会社もあることだろう。そうした状況で起きがちなのが、上司・先輩と新人との価値観のすれ違いや、それが原因の1つとなりうる職場トラブルである。そもそも職場の空気が読めない問題児の新入社員は昔からいたし、入社したての新人が上司・先輩との接し方に悩んでメンタル不調に陥ることも珍しくない。しかし最近では、これまでの職場のやり方では対処がままならない「職場トラブル」も増えている。そこで今回は、私が社労士として見聞きしてきたなかで、最も印象深かった「新人トラブル」の事例を紹介したい。(社会保険労務士 木村政美)  新入社員向けの社内研修が終了し、Aは6月から営業課に配属された。仕事はB課長の指導のもと、営業の同行からスタートし、毎日マンツーマンで営業についてのイロハを教わることになった。そして1ヵ月後からは1人で担当エリアを受け持つようになった。「外回りは性に合っている」とばかりにAは張り切って仕事に精を出していた。  ところが、配属後3ヵ月が経った頃、異変が起きた。さて、Aはこれからどんな行動を起こすのか。本題に入っていく前に、まずは甲社の概要と登場人物を簡単にお伝えしよう。 [甲社概要]  自動車部品を扱う専門商社。社員は約50名。業績は順調で昨春5名の新卒が入社した。新人のAが配属される営業課は少数精鋭の花形部署。課員は担当地域の顧客先を営業車で訪問するが、新規開拓の飛込営業は一切なく、ルート営業が主である。Aを採用したのは、「未来のリーダー候補」として大いに期待をかけていたためである。 [登場人物] A:トラブルを起こした新人。大学では体育会に所属し主将を務めていた。身長は185cmくらい。ガッシリ型の体型で、肌は浅黒くたくましい風貌である。声は大きくてきぱきとしたタイプ B:営業課の課長でAの直属上司 C:甲社社長 D:C社長の友人で社労士 E:営業課の若手リーダー格 ●配属してまもなく突如、異動希望の申し出! 「社長、私はB課長とソリが合いません。他の部署に異動したいのですが……」  Aから突然の申し出に、C社長は驚きを隠せなかった。今までそんな素振りは見せたことがないし、B課長からも報告は受けていない。C社長は早速、B課長に事情を聞いてみた。 「昨日、Aに仕事の進め方について注意しました。かなり細かいところまで指摘したので、ショックだったのかもしれませんね。それに彼に注意した時の口調も少々きつかったかな……」  B課長はAのことを気に留める様子でもなく、苦笑いで答えた。確かにB課長は仕事に対して厳しいが、仕事への指示等はいつも的確で、社内だけでなく顧客からも信頼は厚い。それに普段からAにだけ特別厳しい態度で接していたわけではない。いつもは温厚で軽いジョークも飛ばすくらいなのだ。  しかし、事は簡単には収まらなかった。翌日、始業時間になってもAが出社して来なかったのである。心配になったB課長はAに電話してみたり、LINEに連絡を入れてみたが応答がない。会社から車で5分ほどの場所にあるAの自宅へ行ってみたが、留守なのか出てくることはなかった。  次の日も、また次の日もAは無断欠勤を繰り返した。そして、1週間が過ぎたある日、社長が外出先から戻ると、社員から「社長、Aが出社しています。社長に話があるそうです」と声を掛けられた。  社長室に戻ると、Aが入ってきた。 「A君、今までどうしていたんだ?いくら連絡しても返答がないし……。皆心配していたんだよ」  Aはその問いかけに対して返答はせずに、いきなり病院の診断書を提出してきた。社長がその内容を確認すると「うつ症状により3ヵ月間の療養を要す」と記されている。Aは社長に訴えた。 「私は今まで一生懸命仕事に打ち込んでいたのに、それを認めてくれるどころが、B課長から細かいところまで揚げ足を取るように注意され、大声で罵倒されました。恐怖と悔しさでその夜は眠れませんでした。翌日から出社しようとするとあの場面が思い出されて足がすくんでしまったのです。毎日眠れないし、頭は痛いし、食欲もありません。とにかくB課長とはもう会いたくありません」  C社長は思わぬAの訴えに動揺した。しかし、病院からの診断書がある以上、休職させないわけにはいかない。Aには業務の引継ぎのため3日間出勤するように頼んだが、断られてしまい、翌日からまた出社しなくなった。 「1回叱責されたぐらいで休職だなんて、近頃の若者は何を考えているんだ!?」  学生時代、常にリーダーであったAは、これまで他人から自分の言動に対して注意や指摘を受けたことがない、「お山の大将」的存在だったのである。今回B課長に仕事の進め方等について注意されたAは、これまでの「自分はリーダーなんだ」というプライドがへし折られ、一気に仕事に対する自信と意欲をなくし、メンタルヘルス不調になってしまったのだ。 ●休職中、Aのフェイスブック投稿が発覚!社内の雰囲気は最悪… 「社長、大変です!これを見てください!」  Aが休職してから1ヵ月が経とうとしていた頃、B課長が持ってきたスマートフォンの画面を見ると、そこにはAの写真がフェイスブック上に投稿されていたのである。 「今日の波は最高でした!ゴキゲンだぜ!イェイ!」  サーフボードを立てかけて仲間たちと満面の笑みを浮かべている。文章を読むと、彼はハワイでサーフィン三昧の日々を過ごしていたのだ。 「どういうことだ?彼はうつ病で休職中のはずだったんじゃないか!?」  周りの社員たちも、AのFB投稿を見て大騒ぎ。これまでAの仕事の穴を埋めるために、中には残業や休日出勤を余儀なくされた者もいた。課全員でAの職場復帰を待つべくフォローしてきたのに、皆が一様に裏切られた気持ちになった。 「Aなんか、このまま会社を辞めてしまえばいいじゃないか!?」とばかり、呆れは怒りに変わり、社内の雰囲気はみるみるうちに悪化した。困り果てたC社長は悩み抜いた挙句、大学時代の旧友でもあるD社労士に連絡をした。 「Aをクビにすることは可能だろうか?」 「おいおい……、社員はそう簡単にはクビにできないぞ。確かに休職中に海外旅行していたのは良くないが、それだけの理由で直ちに懲戒免職処分は難しいな」 「それじゃどうすればいいんだ?」 「まず、Aの家族に連絡を取って、Aに帰国後すぐ出社するように伝えてもらうんだ」  その後のやり取りで、C社長がD社労士から受けたアドバイスは以下の内容である。 (1)Aにはこれまで知り得た状況を説明し、休職後、病院で治療を受けていたかを確認する。 (2)元気であれば仕事への復帰を促す。 (3)引き続き療養が必要であれば治療に専念させ、休職中の過ごし方のレクチャーを受ける。 (4)Aのこれまでの経緯とこれからの対応について、時系列で記録に残す。  C社長は、早速Aの実家に連絡をした。1週間後、Aが出社すると、社長はAに声をかけた。 「フェイスブックを見たよ。ハワイに行っていたそうじゃないか。元気そうで良かったな。それなら、そろそろ仕事への復帰はどうだ?忙しくて困っているんだ」 「先ほどB課長を見かけましたが、やはり足がすくんでしまってダメです。もうB課長とは会いたくありません」  さらに社長はAから話を聞くと、休職後、病院には1回も行ってないこと(ハワイに行っていたのだから当然である)、休職中は好きなことをしていいと思っていたことがわかった。D社労士の助言どおり、休職中の過ごし方についてのレクチャーや定期的な電話、メール、面談による状況確認、1日の過ごし方についての報告等がいかに必要であるかを身につまされた。確かにAの言動には反省すべき点が多々あるが、会社側の対応がきちんとできていなかったのも事実である。  その後、病院で治療を受けるようになったAから、「出社できません」と報告を受けている。営業課から他部署への異動も不可能ではないが、中小規模の会社であるがゆえに、B課長と顔を合わせずに済ますのは困難である。 「いい人材だと思って採用したが、失敗だったのか?人は見かけと履歴書だけでは判断できないものだな……(ハーッ)」とC社長の悩みとため息は、深くなるばかりであった。 ●Aの休職中、社員の業務過多で退職希望続出の事態に!  あれから半年が経過した。しかし、Aが復職する様子はなかった。この頃、甲社では取引先との大口契約が次々と決まり、ますます業務過多になっていった。営業課では、Aの業務を他の社員が肩代わりして行っていたが、それもすでに限界に達している。C社長としては自分が採用した手前もあり、Aの復職を待っていたかったが、他の社員たちが納得しなかった。 「Aがいつ復職するかわからないし、もし復職したとしても、もうAと仕事は一緒にできません。クビにして新しい社員を入れてください。そうしなければ私が退職します。こんな忙しい状態、もうやっていられません」と営業課の若手リーダー格であるEは、辞表を出すと言わんばかりに訴えた。実績のあるEに今退職されては非常に困る。しかもEだけではない。Aの扱いに不満を抱いた数人の社員からも退職希望が出されていたのだ。まさに社内、特に営業課の雰囲気は最悪だった。  困り果てたC社長はAに電話をかけ、「具合が良くなったら早く仕事に復帰してほしい」旨を伝えたところ、「私はB課長だけではなく、もう会社の皆さんとも会いたくありません。どうせ僕の悪口を言いたい放題しているんでしょ?同期から聞きましたよ。ヒドイですよね。私は一生懸命仕事をしていたのに……。会社が原因で病気になったんだから訴えてやりますよ」と拒否されてしまった。 ●休職が長引くAの問題や他の社員の不満にどのような対処・対策を講じたか?  さて、その後、C社長はどう対処しただろうか。C社長はD社労士からアドバイスされた前述の(1)~(4)までの対策を実行してとりあえず急場はしのいだが、Aの休職が長引いている関係で新たな問題を抱えてしまった。そこで改めてD社労士に相談した後、以下のような対処・対策を行った。 (1)社員の補充問題  早急に営業課へ社員を補充する。長時間労働は労働基準法違反にあたるので気をつける。 (2)Aの処遇問題  Aの処遇については冷静に対処する必要がある。なぜならAは社内での評判を同期から聞いてパニック状態になっている可能性があるからだ。 (3)新入社員対象の研修見直し  特に若年層に多い「新型うつ」対策としてセルフケア研修を取り入れる。また、仕事の指示を受ける際の心構え、社内でのコミュニケーションの取り方等の研修期間を設ける。 (4)管理職対象のハラスメント研修の実施  仕事の指示の出し方について、パワーハラスメントになるかどうか判断に迷うところがあるため、課長以上の管理職を対象に、ハラスメントに関する研修を実施する。 (5)新入社員に対する職務指導制度の見直し  職務を遂行していく上での疑問点とか、困った場合の相談事がある場合、親子ぐらいの年齢差がある上司には話しにくいことがある。そこで入社3年~5年の若手先輩社員をつけ、業務のチェックやアドバイス等を行う「ブラザー・シスター制度」を導入することにした。兄弟姉妹のような密なコミュニケーションを図ることで新入社員は円滑に仕事を進められるようになり、指導係になった社員はリーダー力の向上にも繋がる。 (6)新入社員採用基準の見直し 「新入社員は『ただの石ころ』。これを『ピカピカに輝くダイヤモンド』にするのは社長の力量である」  C社長はD社労士から言われた上記の言葉が、心に「グサリ」と突き刺さった。採用時から「ダイヤモンド」を探そうとするから失敗する。「石ころ」でも会社の貴重な戦力に磨き上げることは可能なのだ。甲社のような会社の規模からすると、それは社長の役目になるであろう。Aのトンデモ言動により他の社員にも悪影響を与えてしまったことに、C社長は猛省した。そして社員のため、会社の発展のためにも、この問題に向き合って社内改善に尽力し、良い職場環境作りに向け踏み出したところである。  今回は「新人トラブル」について紹介したが、現在、社労士等が相談に乗る企業の悩みで増えているのが「問題社員」「部下を潰す上司」等に関するもの。本事例のように、周囲の迷惑も顧みず、無断欠勤をしたり、休職中に海外で遊んでいたり、あるいは奴隷のように部下を扱い、仕事で失敗したらネチネチと責め続け、部下を潰して退職に追い込んだりといった上司の話も耳にする。  こうした問題ある社員や上司を切り捨てるだけでは解決につながらない。世間の事例を普段からよくリサーチし、同じことが職場で起きたらどう対処すべきかという共通認識を持っておくこと、そしていざトラブルが起きた時は適切に対処することが、企業関係者にとって重要なのである。今後、機会があれば、皆さんによりバラエティに富んだ事例をお届けしたいと思う。 ※本稿は事実に基づいて構成していますが、社名や個人名は全て仮名です。
働き方
ダイヤモンド・オンライン 2017/07/18 00:00
もたいまさこ「40代からおばあさん役。最近はテレビに怒るようになっちゃって…」
中村千晶 中村千晶
もたいまさこ「40代からおばあさん役。最近はテレビに怒るようになっちゃって…」
もたいまさこ/1952年、東京都生まれ。舞台芸術学院卒。代表作にドラマ「やっぱり猫が好き」、映画「かもめ食堂」「それでもボクはやってない」などがある(撮影/堀内慶太郎) 映画「ハローグッバイ」は7月15日から東京・渋谷のユーロスペースほか全国順次公開。監督:菊地健雄/配給:アンプラグド (c)2016 Sony Music Artists Inc.  この人が出る映画は観たい。そう思わせる筆頭が「もたいまさこ」ではないだろうか。今回は39歳の監督と初タッグ。認知症のおばあさん役だ。 「認知症には前から興味があってNHKの特集などを見ていましたけど、患者さんは千差万別で『これを参考に』というのがあるわけじゃない。難しかったけど、手探りで演じました」  主役は2人の女子高校生だ。派手め系のはづきと優等生の葵。交わることのない2人が、おばあさんと出会い、変わっていく。 「おばあさんの記憶からは大切なものがどんどんはがれていく。でもひとつだけ一番覚えていることが『一通の手紙をある人に渡す』ことだった。その相手が誰か──それがこの映画の素敵なところだと思います」  友情がテーマでもある。 ●長電話をした高校時代 「自分も高校生のころはよくあんな熱量で、あんなにしゃべっていたなあと思います。友達と休み時間も放課後も話して、家に帰って電話して。あの年頃ってまだ言葉を持っていないから、本でも音楽でも自分の気持ちに一番近いものを探すんですよね。だから音楽がすごく必要だった。誰が好きだったかって? ザ・ゴールデン・カップスです(笑)」  話したことはないが、気になる同級生がいた。 「『あの子、けっこう大人なのかな』とかね。いま会って『あなたどういう人だったの』って聞いてみたい人は何人かいます」  劇団時代の交友はいまも続いている。 「3◯◯(さんじゅうまる)時代の友人とは、今も時々会って飲みながら話をすることもあります。私はどちらかといえば、はづきタイプかな。若いころは独りでいることはあんまりなかった。いまのほうがずっと独りでいますよ」  もたいさんの生活、気になる。 「撮影で朝早くから夜まで働いていると、そのあとプッツリ糸が切れたように放心していることが多いんです。『あ~あ、やることはいっぱいあるんだけどなあ』って思いながら一日ダラダラして、そのくせ『ごはん食べない?』とか誘われると、のんきに出かけてしまいますが」 ●また猫と暮らしたい  以前は猫と暮らしていた。 「人懐っこい、怒ることを知らない優しい猫でした。20歳まで生きました。ペットロスにもなったけど、仕事で家を空けることを考えると切なくて。また飼いたいなあと思いながらもう10年以上になりますね」  独りテレビに怒ることもある。 「さすがに精神衛生上よくないなあと思って、このごろはいやなニュースは全部チャンネルを変えてしまうのですが、それがいいのか悪いのか」  現在、64歳。40代からおばあさん役をやってきた。 「全然いやじゃなかったですよ。素じゃなく出られるほうがちょっと楽というか。そうじゃないと『恥ずかしい』気持ちが先に立っちゃうんです。扮装してやれるなら、それに紛れたい。でも、もうほとんど老年がリアルになってきてるから」    それはそれで楽しい、と笑う。 「動作遅くなるよねえ、字が見えなくなるよねえとか、もう実感としてありますからね。いままでは外郭のおもしろさだけで『楽しい』と思ってたことが、内側に入ってきたというか」  昨年春、93歳の母を看取った。これからのことを考えますか? 「もうなるようにしかならないですよ。開き直ってます」  なんだか力が湧いてきた。(ライター・中村千晶) ※AERA 2017年7月17日号
AERA 2017/07/16 11:30
あなたのその血圧「仮面高血圧」かも!? ◯◯すると血圧200超え…
あなたのその血圧「仮面高血圧」かも!? ◯◯すると血圧200超え…
24時間血圧測定器。ベルトにつけることもできるが、首からかけても良い。  病院で測っても、血圧は正常値。だからといって安心はできない。職場で働いているときや寝ている間に血圧が高くなる「仮面高血圧」の可能性があるからだ。週刊朝日MOOK「おいしい暮らしの相談室 糖尿病&高血圧」では取材記者が実際に24時間、血圧を測定。仮面高血圧の隠れたリスクがわかった。 *  *  *  血圧は一日のさまざまな状況下で変動する。血圧が上がるのは主に起床時、興奮時、緊張時、ストレスがたまっているとき、激務時など。一方、血圧が下がるのは就寝時、リラックス時、入浴時、飲酒時など。 「病院で測る血圧だけでは、実は判断できません。普段は正常値なのに、病院では緊張して血圧が上がる『白衣高血圧』や、逆に、病院では正常値なのに、勤務中や夜間など特定の時間に血圧が高い『仮面高血圧』などがあるからです。病院で正常値と言われているので、血圧が高い時間があることに気づきにくいのです。そのまま放置すると、心筋梗塞や脳卒中などの命にかかわる血管病を発症する危険性が高まります」  東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌医師は、そう指摘する。桑島医師によると、白衣高血圧と仮面高血圧はそれぞれ900万人前後いるとされている。ただ、白衣高血圧は検査時だけ上昇してしまうので、普段は正常に近い。 問題は仮面高血圧で、ポイントは「職場」と「夜間」だ。 「普段は正常値なのに、職場での血圧が高くなるのが職場高血圧。特に、上司と部下の板挟みになる中間管理職は血圧が高い傾向がみられます。以前、東京都の職員300人を対象に、仕事の合間に血圧を測ってもらったところ、病院では正常値だった職員の約23%が140を超える高血圧でした。仕事の合間の数値ですから、勤務中はもっと高いと推測されます。民間企業でも同じ調査をしたところ、33%が職場高血圧でした」  病院では正常血圧(130~139/85~89mmHg)なので健診でわからず、職場高血圧が何年も見逃されてしまう。すると、数年後には持続性の高血圧になりかねないのだ。 もう一つの仮面高血圧である「夜間高血圧」は、どのようなものか。 「一般的に、夜眠っているときは日中より10~20%、血圧が下がります。ところが就寝中に血圧が下がらないタイプの人もいます。血管を道路にたとえると、就寝中もダンプカーが走り続けているようなものなので、血管が傷みやすい。夜間に上の血圧が150mmHg以上ある人は、脳卒中や心臓病を発症する確率が118mmHgの人の4倍という調査結果があるほどです」  起きているときの血圧は自分でチェックできるが、寝ているときに測るのは難しい。  自分も職場高血圧や夜間高血圧かもしれない――。そんな不安を抱える人におすすめなのが「24時間血圧計」だ。左手の上腕に腕帯を巻き、記録装置を首からかける。30分ごとに血圧計が自動で血圧を測って記録するため、利用者は何もしなくていい。記録装置をズボンのベルトにつけることもできる。保険が適用されるので、3割負担だと1日600円で利用できる。まずは病院で医師に相談してみるとよい。  実は、筆者にも思い当たる節があった。  50代ではあるが、毎年、健康診断を受けてもすべて「異常なし」。今年3月の健診時の血圧は上が110だった。数値だけなら問題はないはず。が、締め切りに追われ、ほぼ徹夜で原稿を書いていると、血圧が高いことがあった。仮面高血圧かもしれない――。  そこで、筆者も24時間血圧計で測ってみた。  締め切りが近い原稿を2本抱えていたせいか、全体的に高めだったが、上が200を超えるほど跳ね上がった時間帯があった。うたた寝していたときに本書の編集担当デスクから電話があった17時台と、翌11時に24時間血圧計を装着した状態で撮影していたときだ。カメラマンの指示に従って慣れないモデルを務めていたら、まさかの200超えを記録。楽しく執筆しているときは高くないが、仕事で緊張しているときは、高めに出ていることがあらためてわかった。  一方、低かったのは、ジムで楽しく運動をしたあと、自宅に戻りリラックスしていた20時前後。上が120くらいだった。  血圧計を借りた日に血液検査もしたが、すべての値が正常。どこも悪いところがなかっただけに、ストレスが大きく影響しての高血圧のようだ。  病院での血圧測定では正常値なので降圧薬は飲んでいなかったが、今回の24時間血圧計の測定結果と異常がなかった血液検査の結果を見て、血管を広げる作用と利尿作用があるカルシウム拮抗薬(アムロジピン)と、血圧が高いときにストレスを鎮める精神安定剤を処方された。  血圧が気になるようであれば、仮面高血圧かどうかもチェックしてほしい。(取材・文/庄村敦子)
健康朝日新聞出版の本病気読書
dot. 2017/07/11 11:30
「サスペンスより怖い」松居一代VS船越英一郎の全面戦争の裏側
「サスペンスより怖い」松居一代VS船越英一郎の全面戦争の裏側
松居一代氏(左)と船越英一郎氏 (c)朝日新聞社 <私を 助けてください>  女優の松居一代(60)が、自身のブログにこう書いたのは、7月4日夜。その後、松居が自ら語る動画が、ユーチューブに投稿された。  船越英一郎(56)との離婚問題を巡る報道などについて、「私の命をかけたメッセージです」と10分以上、自分の主張を訴えた。終始カメラを見据え、これまで親しまれた明るいキャラとは全く違う鬼気迫る雰囲気だった。  動画の衝撃は大きく、またたく間に再生回数は100万回を突破した。8日17時現在では270万回に達している。  第2弾の動画では、船越が「不倫をしている」などと指摘。性機能改善薬を服用していたなどと、船越についてあけすけに語った。  騒動の少し前の6月27日に、松居は自分のブログで「1年5ケ 月も尾行され続けている」「サスペンスより恐ろしく怖い怖い真実」などとつづっていた。動向が心配されていたが、動画で夫を非難する急展開となった。  船越はNHKのお昼の情報番組「ごごナマ」のMCだが、7月5日の放送では騒動には直接触れなかった。「今は早く過ぎてほしいと思うこともありますけどね」と、騒動を連想させるようなことをサラリと口にしたぐらいだった。船越はその後も発言を控えている。不倫は否定していて、離婚に向けて調停をしているという。  2006年には、いい夫婦の日のパートナー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた夫婦。なぜ「泥沼」のバトルに発展してしまったのだろうか。芸能リポーターの石川敏男さんは、こう語る。 「2年前ぐらいにお互い冷静に考えようと別居を始めましたが、なかなか離婚に踏み切れなかった。周りには早く離婚しろと言われていたようですが、自分の仕事もありますし、このままでいいのなら、それでもいいと思っていた。ところが、亡くなった川島なお美さんが昔の女だったと言い出したり、ご先祖の位牌(いはい)を彼のマンションの前に置いたりした。そういう積み重ねがあって、彼もあきらめがついた」  “ユーチューバー松居”とも言える大胆な行動について、夫婦問題研究家の岡野あつこさんは言う。 「とても不安だったんだと思います。このままでは負けてしまうと、ギリギリの抵抗をしたのではないでしょうか。『全面戦争』とブログに出した時点で、どうせ負けるなら捨て身でやろうと思ったのかもしれません」  石川さんも松居の気持ちを推し量る。 「自分が全部失って、彼だけ生き残るのが嫌だったのでは。船越さんは同じ土俵に立つとつぶれてしまうから、今のように黙っているのがいいのでしょう」  松居はその後もブログで、<不倫相手は私の友達です。彼女は人妻です。不倫をして2年半です>などと書き込んでいる。あくまでも戦う姿勢を崩していない。  船越サイドは目立った応戦はしていないが、離婚調停の手続きを進めるとみられる。  注目されるこのバトル。待たれるのは、公平なレフェリーの登場かもしれない。(本誌・太田サトル) ※週刊朝日 2017年7月21日号より加筆
不倫男と女
週刊朝日 2017/07/09 07:00
月曜は自殺に心筋梗塞、脳卒中が多発! “ブルーマンデー”を乗り切る方法
月曜は自殺に心筋梗塞、脳卒中が多発! “ブルーマンデー”を乗り切る方法
発見曜日別にみた自殺者数(2016年の1日平均)(週刊朝日 2017年7月7日号より)  会社や学校が始まる月曜日になると、憂鬱になる「ブルーマンデー」。「サザエさん」が放映される日曜夜に自覚する人もいて、別名「サザエさん症候群」と呼ばれる。“ブルマン”に陥らず、1週間のスタートをいかに快適に迎えるか。ちょっとしたコツと心がけが、あなたの人生を変える。  東京都内の情報通信会社に勤める女性(46)は、丁寧な仕事ぶりで上司の信頼が厚い。ただ、毎週月曜日は、実は憂鬱な気分だ。 「頑張れ自分!」  そう心の中で繰り返し、駅から職場への地下道を歩く。ロックをガンガン聴きながら心を奮い立たせて、会社へ向かう。それでも、「午前中は眠くて仕方ない。忙しいはずなのに、何から手をつけてよいのかわからない始末」という。  トイレで「あれ、地震?」とめまいを感じる日もある。月曜日はいつも頭がぼーっとする。朝から、早くも週末が待ち遠しい思いになる。  多くの社会人にとって、くつろいだ「オフ」から仕事モードの「オン」に切り替わるのが、月曜日。うまく気分を転換できる人がいる一方で、乗り切れない人も多い。  くらしや住まいの情報を扱う「オウチーノ総研」(東京都)の「『ブルーマンデー』実態調査」(2014年)によると、回答者(土日が休みの勤労者451人)の4割以上が、日曜夜や月曜朝に憂鬱になると回答した。また、全体の5割近くが、1週間のなかで月曜日が最も憂鬱と答えている。  月曜日という重荷は、実際に多くの人の心や体をむしばんでいる。  厚生労働省がまとめた「2017年版自殺対策白書」をみると、男女ともに月曜日の自殺者が最も多い。職場での腰痛も、月曜日に最も多く発生している。腰痛は体への急激な負荷に加え、心理的な要因もきっかけになることが知られている。このほか、脳卒中や心筋梗塞が月曜日に発症しやすいとの調査結果もある。  では、月曜日をどう乗り切ればよいのか。  月曜日が1週間のスタートという会社や組織が一般的だけに、会議や上司への報告なども多い。月曜午前を休むわけにはいかない。  愛知県の旭労災病院の木村玄次郎院長は「土日のリラックスモードから突然仕事モードに切り替えたときが要注意。スロースタートが大事です」と、月曜日の過ごし方をアドバイスする。  木村院長は、労働者健康安全機構が今年3月発表した「職場高血圧に関する調査研究」の代表者を務めた。その結果が興味深い。  対象者は、夜勤がなく土日休みで平日働く65歳未満の207人。休日、月曜日、金曜日の各日4回(起床時、午前10時、午後4時、就寝前)、血圧と心拍数を計測した。すると、月曜日は、ほかの日と違う傾向がはっきりと表れた。  注目したのは、収縮期血圧と心拍数を掛け合わせた「ダブル・プロダクト(W‐P)」の値。木村院長は「心臓にかかる負荷のことで、血圧単体よりも心血管疾患に直結するバロメーター」と解説する。  脳卒中や心臓病の発症に関係すると言われるこの値が、月曜午前になると大きく上がっていることがわかった。  心筋梗塞や脳梗塞などの心血管事故が月曜午前に多く起きることは、以前から知られていた。しかし、原因がよくわからなかった。今回の調査結果から、W‐Pの上昇が心血管事故に関連することが示唆された。  先行き1週間をにらんで仕事の予定を考える。月曜午前のそのストレスが、W‐Pを上昇させている可能性がある。木村院長が、スロースタートの重要性を訴える理由だ。  木村院長は月曜日の仕事量を抑える重要性に触れつつ、「(2月に始まった)プレミアムフライデー以上に、重要かもしれない」と指摘する。  実際に、「月曜日対策」に動いている企業もある。  通販サイトなどの運営会社「シー・コネクト」(東京都)は2月から、毎月末の月曜日を「プレミアムマンデー」として、社員向けグルメイベントを始めた。  昼休みに社員が集まり、出身地のご当地グルメを食べたり、その地域のクイズを楽しんだりする。ご当地グルメの食費は会社が負担。参加した社員の半数以上が「月曜日がいつもより楽しくなった」と話しているという。  同社は通販事業という特性上、顧客対応や商品出荷などで、金曜日の一斉早帰りが難しい。そこで、「月曜日をいつもよりちょっと楽しみに思える日にしたい」と取り組み始めた。 「オフ」と「オン」の境目の月曜朝に、自宅とも職場とも違った非日常の場を設ける手もある。  例えば、「エクストリーム出社」。出勤前の早朝約2時間に、登山、観光、海水浴などアクティブな体験を楽しむ。自己啓発のための「朝活」にも似ているが、もっと過激で極端(エクストリーム)な活動が特徴だ。  日本エクストリーム出社協会代表の天谷窓大氏は「月曜日が憂鬱になる人は、これから憂鬱な日になると先取りしてしまい、自分で自分にのろいをかけている節がある」と話す。月曜早朝に何かに夢中になれば、気の持ち方が変わってくるかもしれない。  月曜日の過ごし方に、問題意識を持つ人は多い。 『「ゆううつな月曜日」をシンプルにやり過ごす28のテクニック』の著者、中島孝志氏は、全身にエネルギーをチャージした状態で過ごせるのが月曜日のよさという。気分が乗らないときには、自分に対してご褒美を与えるようにしている。  中島氏は「私の場合は早朝ジムです。食いしん坊さんならば、ホテルの朝食などでもいい。通勤時に、心に秘めたかわいいあの子に出会えるでもよい」と話す。楽しいことを思い描いて血圧を安定させ、免疫力も上げるというのが中島流だ。 『「月曜日がゆううつ」になったら読む本』の著者で精神科医の西多昌規氏は、睡眠の重要性に注目する。 「現代人は睡眠負債(睡眠の借金)がある。生活リズムを大きく乱す休日の不摂生に注意すべき」という。  西多氏は、睡眠障害や抑うつ・不安などを研究している。睡眠不足が続くと、それが借金のように積み重なる。解消するためには、週半ばに仕事を切り上げて早めに帰宅して眠る日を設けるなど、睡眠量を増やす工夫が必要という。  昨年まで、米国スタンフォード大学で睡眠の研究室に在籍していた。研究室は、月曜日午後1時から定例会議。週末に乱れた体内リズムを整えるため、月曜日が大切だと考えられていた。 「会議というよりは雑談ですね。7~8人の参加者の前で、それぞれのプロジェクトの進捗状況を伝える。報告しながら色々な情報もシェアでき、すごく楽しい。車をどこで買ったらいいのかなど、生活に役立つ情報を集められました。会議よりも緩い集まりを月曜日に設けて、そこでリズムを作るというのも一つの手です」(西多氏)  日本でも月曜日に会議を開く組織は多い。しかし、営業成績報告の場だと気が重い。「何となく楽しそう」と気楽に受け止められる会合ならば、心が軽くなり、爽快な月曜日のきっかけとなるかもしれない。  働く人の心の健康(メンタルヘルス)は、今や多くの企業や組織の課題。心身の健康管理は、従業員個人の問題としてだけでなく、経営全体のテーマとしても認識されている。従業員の健康に配慮する「健康経営」を掲げる企業が、最近急速に増えた。  山形県南東部に位置する上山市は、そんな健康経営を応援する地域づくりを進めている。かみのやま温泉や美しい森林など地域の資源を生かし、ドイツ語で「健康保養地」を意味する「クアオルト」事業に取り組む。  週末に温泉地に滞在し、森林ウォーキングや栄養バランスのよい食事をとるプログラムを、企業の社員らに提供する。同市内で実施されたウォーキングの心理的影響の調査によると、森林の中を歩いた後は「リラックス感」や「はつらつ感」が高まり、効果が翌日以降も続く傾向があったという。  同市クアオルト推進室の高橋ちぐみ保健師は「日曜日に森の中を歩くと、月曜日も、はつらつと過ごせます。企業のブルーマンデー対策にも生かせるのではないでしょうか」と話す。  損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険(東京都)は6月、上山市との間でクアオルトについての連携協定を結んだ。ブルーマンデー対策に特化した目的ではないが、社員の健康づくりを支える健康経営の一環だ。  約3200人の全社員に対し、上山市での1泊2日のクアオルト体験を勧める。滞在費の一部を会社が補助。社員が健康意識を高めるきっかけづくりにするねらいだ。  ちょっとした体験や小さな心がけで気の持ち方は変わる。ブルーではなくハッピーな月曜日を迎えられる工夫をしてみてはいかが。 ※週刊朝日 2017年7月7日号
健康働き方病気
週刊朝日 2017/07/03 07:00
企業に「サウナ部」が続々と誕生する理由
小野ヒデコ 小野ヒデコ
企業に「サウナ部」が続々と誕生する理由
新日本監査法人 EY Japan/部員数:20人、おすすめサウナ:スカイスパYOKOHAMA(横浜市)、宴会場で撮影。全員がかぶっているのがサウナハット。今回取材した企業サウナ部のなかでは、最も女性部員の数が多かった(撮影/写真部・小原雄輝) コクヨエンジニアリング&テクノロジー/部員数:28人、おすすめサウナ:スパ ラクーア(東京都文京区)、撮影当日は九州からテレビ電話で参加する社員の姿も。手に持っているのは同社サウナ部特製タオル。サウリーマンになる!?(撮影/写真部・小原雄輝) みんなのウェディング/部員数:6人、おすすめサウナ:ウェルビー今池店(名古屋市)、サウナ部代表の瀬尾さん(写真中央)がかぶるサウナハットは、奥さまの自家製。出張の多い部員が多く、全国のサウナ情報をカバー(撮影/写真部・小原雄輝) Retty/部員数:15人、おすすめサウナ:マルシンスパ(東京都渋谷区)、サウナハットをかぶる同社サウナ部長の畑上さんの手には、サウナのロッカーキーをデザインした腕時計が。こだわりはさすが(撮影/写真部・東川哲也) 6月6日、東京・錦糸町にあるサウナ「ニューウイング」で第3回「サウナサミット」が開かれた。石川県から駆けつけたサウナーも。「申し込みは2日で埋まりました」と吉田健支配人(撮影/写真部・小原雄輝)  もはや、サウナは中高年男性だけの娯楽場ではなくなった。女性を意識したオシャレな施設も増え、社員のコミュニケーションの場として活用する企業も出てきた。 「水風呂は何度の設定ですか?」  そんな「マニアックな質問をする客が増えている」と、東京・池袋にあるスパ施設「タイムズ スパ・レスタ」支配人の堀内祐也さんは言う。芸能人がサウナ好きを公言したり、専門誌が発行されたりと、近年、ブームになっているサウナ。愛好家が増えるにつれ、その趣向も細かくなっているようだ。  同スパでは、サウナブーム以前から「ロウリュ」のサービスを開始した。ロウリュとは、サウナ発祥の地・フィンランドで生まれた入浴法の一種。高温に熱した石に水をかけ、熱い水蒸気を発生させて発汗を促すもの。発生した熱い水蒸気をスタッフがタオルなどであおいで客に浴びせかけるドイツ式は、正確には「アウフグース」と呼ぶが、日本では明確に使い分けはされていないようだ。 ●サウナー市民権を獲得  堀内支配人はこう話す。 「ロウリュ目的で来るお客さんの動きははっきりわかるようになった。仕事帰りのビジネスパーソンなど、サウナ愛好家(以下、サウナー)は着実に増えています」  サウナ情報は主にSNSを中心にサウナーの間で共有され、なかでもカリスマ的存在なのがヨモギーさん(41)だ。愛好家を集めるイベント「サウナサミット」も仕掛ける。一日2回、年間700回以上サウナに通うヨモギーさんは、サウナブームの影響をこう語る。 「元々サウナが好きな人はいたでしょうが、ブームによって市民権を得て、より本格的にサウナを楽しむようになってきています。2年ほど前からサウナハット(のぼせ防止のためにかぶるサウナ用の帽子)を着用した人をたまに見かけるようにも。施設側も水風呂の設定温度を工夫するなど、サウナーに理解を示すようになってきています」 ●真の主役は「水風呂」  企業内の「サウナ部」も続々と誕生している。活動自体は社内のサウナ好きでサウナに行くという、いたってシンプルなもの。ただ、侮ってはいけない。仕事にもプラスの影響が出ているという。  監査法人最大手、新日本監査法人のサウナ&スパ部代表・高須邦臣さん(41)は自ら「CSO(Chief Sauna Officer)」と名乗り、サウナ部の真骨頂をこう説いた。 「サウナに入るときは服だけでなく、肩書や世間体など背負っているものも全部脱ぎます。職場ではなかなか話せないような話も腹を割って話すことができるし、リラックスした状態での語らいは、飲みニケーションを超える効果があると感じます」  同社サウナ&スパ部は2016年8月に10人で結成し、今では20人が所属する。そのうち、8人が女性だ。  5月31日、同社のサウナ&スパ部の活動に本誌女性記者(33)も同行した。向かったのは横浜にある「スカイスパYOKOHAMA」。眼下に横浜の夜景を見ながら楽しめるのが売りのようだ。女性部員の日向野(ひがの)奈津子さんの案内で、いざサウナへ!  14階からの眺めに癒やされながら、ジトッと汗が噴き出してくる。ただ、室温75度のなかに長時間いるのはつ、つらい……。  10分ほど経過すると、日向野さんはサウナを出て汗を流し、水風呂に一気に肩まで浸かった。この日の水温は17度。思わず躊躇した記者だが、サウナの魅力は水風呂。むしろ、「水風呂に入るために、サウナに入る」(高須CSO)という。  それは、今回取材したすべてのサウナ部の部員たちが口を揃えたところだ。日向野さんは、 「私も最初は水風呂が苦手でしたが、慣れるとハマります。今は週に2回ほどサウナへ通っています。むくみが取れて、冷え症も改善しました」  サウナー界では水温は低ければ低いほど評価されるようで、9度以下の水風呂を「シングル」(サウナー用語その5)と呼ぶことも教えられた。  サウナで「ととのった」(サウナー用語7参照)後は、施設内のレストランで乾杯。渇いたのどに流れ込むビールは格別だ。部員の小澤ひろこさんに仕事への影響を聞くと、 「私の部署では、製品などのモノではなく、専門性を売っている。最終的に重要になるのが、人間関係。知識や経験のある人と社内でつながるのは限界がある。その点、サウナ&スパ部での交流は、面識のなかった人にも仕事の相談がしやすいです」  宴会後は自由解散となるが、全員がまたサウナに戻っていった……。「飲み食いしたものをプラマイゼロにする」のだとか。同社はこうした活動を、月1回程度のペースで行う。7月は週末を利用して初の静岡遠征を実施する予定だ。 ●サウナ中も「学び」あり  コクヨエンジニアリング&テクノロジーにもサウナ部がある。活動は月2回程度で、部員は28人。同社サウナ部代表の川田直樹さん(32)は、仕事へのプラスの影響をこう話す。 「仕事上の不安を持っていても、普通は直属の上司に相談するしかない。しかし、サウナ部には新人から中堅クラスまで、様々な部署から人が集まっている。世代や部署を超えて、業務上の悩みなどを共有でき、アドバイスもできます」  また、同社ならではの「学び」もあるようだ。 「オフィス空間を作るのが我々の仕事ですが、サウナの施設にもヒントはあります。自然と素材などに目が行き、みんな壁とかをずっと触っています(笑)。建築士の資格試験にも、温浴施設に関する出題があるんです。会社自体も資格者を出したいという考えもあり、サウナを楽しむだけでなく、勉強にもなっています」(川田さん)  健康効果も、仕事にプラスの影響をもたらしている。結婚式場の口コミサイトを運営する「みんなのウェディング」サウナ部代表の瀬尾圭太さん(34)は、「業績に悩んでいる社員はサウナに行き、前向きになってほしい」と話す。 「基本はサウナ、水風呂に入り、休憩をする──その流れが1セット。サウナで血管が拡張され、水風呂で収縮する。全身に血が回り、乳酸(疲労物質)も汗で出る。自律神経が整い、気持ちもポジティブになります」 ●最初の一歩は部員集め  瀬尾さんは営業本部長として、すべての営業社員の成績を見る立場だ。サウナ部員のいる部署は、予算達成が早いと確信している。他社のサウナ部同様、サウナ部がコミュニケーションの活性化にも一役買っているというが、サウナ内での座り位置に上下関係はないのだろうか。 「サウナ室の座る場所は、大別すれば三つに分かれます。最も熱い通気口の下、次いで上段、下段の位置になります。慣れている人間が熱い位置に座り、できるだけ同じタイミングで出たり入ったりできるようにしています。そこに会社での立場は関係ありません」(瀬尾さん)  サウナ効果が業績に直結するかは定かでないが、日本サウナ・スパ協会理事で事務局長の若林幹夫さんは、効果をこう話す。 「一日中パソコンに向かっている人も多く、肩こりに悩むビジネスパーソンは多い。サウナ浴で血流がよくなると肩こりもなくなり、汗とともに乳酸も排出される。サウナと冷水の交代浴により自律神経の乱れを治し、不眠や食欲不振の解消、精神状態も安定します」  今回、各社にサウナ部の結成の経緯を尋ねた。どの部も熱心なサウナー社員の声掛けから始まっていた。グルメ情報の実名口コミサイトを運営する「Retty」のサウナ部は、畑上英毅さん(31)が部員を集めた。畑上さんはサウナに通って15年。今では週に6回は通う強者だ。  畑上さんは昨年4月に入社したばかりだが、すでに部員は畑上さんを含め15人。従業員数は100人だから、かなりの割合と言える。サウナの本場、フィンランド出身の社員もいる。本国のサウナには水風呂がなく、最初は驚いていたという。  活動は月に1回程度。他社との違いは、サウナ後に施設内で食事をとらないことだ。 「食事をする場所は自社が運営するグルメ口コミサイトで選んでいます。いつかは、サウナの口コミサイトも作りたい」  そう畑上さんは夢を語った。 ●飲み会以外の楽しみ方  続々と企業に誕生するサウナ部。中心メンバーは、20代から40代の若手・中堅世代だ。  千葉商科大学講師(労働社会学)の常見陽平さん(43)は、その背景をこう分析する。 「サバイバルゲームやトライアスロンなど、若手のビジネスパーソンを中心に社内での飲み会以外の楽しみ方が増えている。共通するのは面倒くさいこと。一体感が得やすいからです。サウナもその一つでしょう。人と人との関係が希薄化するなか、結局は繋がりを求めている」  今回、各社おすすめのサウナ情報も掲載した。「都心部のサウナは男性限定のところが多く、男女で集まれる場所はまだまだ少ない」(若林さん)と課題もあるが、一度、御社でもチャレンジしてみては。ただし、飲酒直後の入浴や、高血圧など体調に不安のある方はご注意を。 (編集部・澤田晃宏、小野ヒデコ) ※AERA 2017年7月3日号
企業健康働き方
AERA 2017/06/26 16:00
無気力な霞ヶ関 “忖度官僚”はこうして生まれる
福井洋平 福井洋平 作田裕史 作田裕史
無気力な霞ヶ関 “忖度官僚”はこうして生まれる
「今のように官僚それぞれの個性もわかっている長期政権が(官僚の)人事に介入すると、各省が官邸の評価を気にするようになってしまう」と経産官僚出身の松井孝治慶應大教授(元民主党参院議員)は言う(撮影/写真部・東川哲也) 財務省/かつて首相の筆頭秘書官を出すのが通例だった財務省だが、現在はその影響力が落ちているとも言われる(撮影/今村拓馬) 経済産業省/経産官僚の今井尚哉氏が首相のスケジュール管理をする政務秘書官につくなど影響力が増しているとされるが、「経産省出身者は官邸に入っても組織の利害を代弁しない」とみるOBも(撮影/今村拓馬)  委員会採決省略の強行採決、実在した「怪文書」……。「安倍一強」のもと、自民党はなぜここまで傲慢になってしまったのか。その源流を「政・官の関係」「派閥弱体化」「小選挙区制」の現場で考察し、いかにして現在の一強体制が作られていったかを明らかにする。AERA 2017年6月26日号では自民党を大特集。  国民の意思を代表する政治家に、専門性と公平・中立性をもって対峙する──。安倍一強体制は、そんな政と官の緊張関係に異変を生じさせている。政府与党の顔色をうかがう官僚組織を生み出したのは、いったい誰なのか。 *  *  * 「永田町や霞が関で、議員も、役人も議論する風景がめっきり減った。これは危機的ですよ」  ある総務官僚が、そう声を潜めた。民主党政権時代の混乱にも辟易したが、安倍晋三首相や菅義偉官房長官の荒っぽい答弁や会見のやりとりに、不安を感じる。身の回りで自由な議論が減り、前川喜平・前文部科学事務次官の前代未聞の告発で、官邸主導の息苦しさも感じるようになった。  政治学者の御厨貴・東京大学名誉教授は教え子の官僚たちが「昔に比べると相当疲弊している」と言う。 「昔は年次を重ねれば大きな仕事を任せてもらえる期待があったが、今はそれがないためです」 ●下がるモチベーション  中央官僚の無気力を生む構造は、2014年に誕生した内閣人事局制度と安倍一強体制の二つの要素から生まれている。内閣人事局はそれまで各省庁がまとめてきた人事のうち、幹部公務員約600人について首相の意向を反映させるための組織。官邸が人事権を握ったことで、政治家の意向を官僚が聞く、もしくは「忖度(そんたく)」するようになった。また、官邸の強化は官僚ヒエラルキーに大きな変化をもたらした。 「昔は本省で次官になることが目標。今は官邸や内閣官房、内閣府にいるほうが仕事ができるし、本省組は一生懸命やっても官邸に行く官僚にかなわないと思うと、努力しなくなる」(御厨氏)  安倍官邸を取り仕切っているのは菅官房長官と杉田和博官房副長官、第1次安倍政権期も安倍首相を支えた経済産業省出身の今井尚哉秘書官や警察庁出身の北村滋内閣情報官ら、政官問わず首相の長年の「お友達」だ。 「菅官房長官はよく人を見ていて、菅さんのお眼鏡にかなうかどうかで(引き上げられる)人が区分されている。何らかの政策を導入し、成功したという客観的な要件があればいいのですが、それは見えない」(同)  官邸という頭脳部分ばかり大きくなり、足を持っている各省のモチベーションが下がってどんどん枯れている──。御厨氏は、そう憂う。  官僚は高い専門性と知識を持つが、政治家を中心に構成する内閣の部下であり、その意思を受けて動くのが建前だ。だがかつては官僚が政策を取り仕切り、1970年代からは自民党側が官僚と結び「族議員」を中心として政策決定のイニシアチブを担ってきた。その構図が国益ならぬ「省益」優先として批判を受け、96年に発足した橋本龍太郎内閣は中央省庁の再編、首相権限強化や首相補佐官増員といった行政改革を進めた。01年に発足した小泉純一郎内閣は首相直属の「経済財政諮問会議」を使いこなし、官邸の意向が族議員を通さず各省庁に直接影響を及ぼすようになった。 ●「官邸何するものぞ」  だが、そうした「政治主導」の流れの中でも、官僚は政治家と正面から対峙していた。財務官僚出身で小泉政権スタッフも経験した岸本周平・民進党衆院議員は「小泉政権期でも官僚は官邸に対してはっきりものを言う風があった。政治批判もしていたし、激しい論争もありました」と言う。  党内で政権と距離を置く議員に国会質問などで知恵をつけ、自分たちの思うような政策実現に結びつけた官僚も存在していた。わずか1年で倒れた麻生太郎内閣で筆頭秘書官を務めた岡本全勝内閣官房参与は、「官僚も『官邸何するものぞ』くらいのことを思っていたかもしれない。今の官邸主導の動きは政策遂行に関してはあるべき姿で、うらやましくてしょうがない」と言う。  警察官僚出身で、小泉政権で首相秘書官を務めた小野次郎氏(元民進党参院議員)は、新しい施策に官僚側が「○年○月の閣議決定に反する」と抵抗し、「昔の閣議決定にいつまでも縛られるんだったら、内閣を代える意味もない」と反論してきたと振り返る。 「官僚組織が大事にしているのは継続性や公平・中立性。小泉政権は政治主導を進めていましたが、そういった官僚組織に対してはリスペクトをもって運営してきたと思います」 ●官邸の口出しに緊張  継続性や公平・中立性は政治家にはなかなか持ちえない特質だ。岸本氏は前川前事務次官のモチベーションは政策決定のプロセスがないがしろにされたことと読む。「獣医学部新設の条件として閣議決定された『日本再興戦略2015』、いわゆる“石破4原則”が破られたことが彼の主張のポイントなのです」  だが、前川氏に続く動きは見られない。安倍一強体制が、こういった政治と官僚の緊張関係を失わせつつあるのだ。  今年6月、「慰安婦像」をめぐり駐韓大使を帰国させた安倍政権を批判したとされる韓国・釜山総領事が着任1年で異例の退任をさせられた。 「太平洋戦争前夜でも米国にとどまり交渉ルートを探っていたのが外交。継続性を失わせる政府の対応を批判したことで更迭されるとなれば問題ではないでしょうか」(政界関係者)  こうした「恣意的」に映る人事が官僚を萎縮させているという声に対し、前出の岡本氏は、 「昔から審議官以上は形式上は内閣承認人事だったし、制度的には何も変わっていない。また、官僚は省内で政策議論ができるか、実行力があるかでまずは評価される」  として、官邸主導人事を「臆測」だと一蹴する。民主党政権時代に参院議員として公務員制度改革にかかわった松井孝治慶應大学教授も「官邸が省庁の人事案に対してものを言うのは想像する限り1~2割程度では」と語る。ただ、現状は潮目が変わりかけているとも分析する。 「もともと官僚人事は大臣が口を出すこともタブーだった。制度が変わり、官邸から人事に一つ二つ口を出されると、それだけでビビッと緊張が走る」 ●官僚を軽んじた民主党  安倍一強体制のもと、安倍首相や菅官房長官ら安倍官邸にも官僚の「生きた」評判が蓄積されてきている。その蓄積が、霞が関に不安を与えているのではないかと松井氏は言う。  財務官僚出身の北神圭朗・民進党衆院議員は2、3年前にある幹部官僚に「民主党政権期を経て官僚は政治家に直言するようなことをしなくなり、良き文化が失われた」と言われた。 「民主党の未熟な政務三役クラスが官僚を軽んずる扱いをして、政務三役会議に官僚を立ち入らせなかったりもした。官僚の専門性や士気は大事にすべきだった。霞が関は今でも民進党を嫌っている」(北神氏)  官僚の無気力は、こうした民主党の未熟な「政治主導」にも原因があったと北神氏は振り返る。また、内閣人事局制度のモデルとなったイギリスでは、若い時に幹部候補の人材は内閣で3年程度働くので、各省庁で人事評定が共有化され、あからさまに恣意的な人事がやりづらくなっているという。岸本氏は「民主党政権期に人事局制度がスタートできたとしても、こういう伝統がないからうまく使いこなせたかは疑問。恣意的に運用してしまった可能性も十分ある」と話す。  官僚の人事に関して強い立場の官邸には、自制とバランスが求められる。松井氏は、 「さもなければ(議院内閣制ではなく)大統領制のようになってしまう。本来は二大政党制による抑制、均衡が働くことが望ましいのです」  だが、野党による均衡は図られず、官僚からは談論風発の気概は失われていく。さらに、「官僚の意見を聞いて丁寧に合意形成せず、ビシビシ物事を決めているため、支持率が高くなっているという側面もある」(北神氏) 「忖度官僚」を生み出しているのは、安倍一強政権を選択し続けている有権者でもあるのだ。 (編集部・福井洋平、作田裕史) ※AERA 2017年6月26日号
安倍政権
AERA 2017/06/25 07:00
じょうぶで育てやすいハーブのトップ「ミント」を活用してみませんか?
じょうぶで育てやすいハーブのトップ「ミント」を活用してみませんか?
ここぞというときのサポーター「ミント」 夏至を迎えました。梅雨の盛りで、まだ夏はこれからという時期なのに、これから日が短くなっていくというのは妙な気持もしますね。 夏至は古来農作業の目安として考えられた二十四節気の一つです。夏至の時期前後は農作業が最も忙しく、夏至から数えて11日目を「半夏生」といい、ここまでに田植えや仕込みを終わらせて一休みするとしています。 6月末で1年の折り返し、現代人私たちも1年の前半の仕込みの時期で何かと忙しい時期ですね。 今回は、今の時期、苗もでまわり、挿し木でふやしていきやすいミントをとりあげます。 ここ一番の頑張り時、疲労回復や消化促進、神経強壮や頭脳明晰、抗菌などで薬効が注目されてきたハーブのミントがききそうです。 こんなにあるの?たくさんあるミントの種類 清涼感ある香りが特徴のミントは、ギリシャ神話にも登場するほど歴史がふるく、ギリシャ人やローマ人によって入浴用の香料や、お料理やドリンクの風味づけとして愛用されてきました。 宴会では、おもてなしの表現として食卓にミントの香りをこすりつけて磨いたとされています。 日本には、江戸時代に中国から伝わり、ハッカという和名で親しまれています。 種類は、お馴染みのペパーミントをはじめ、クールミント、スペアミント、パイナップルミント、ペニーロイヤルミント、グレープフルーツミント、オーデコロンミント、カーリーミント、コルシカミント、アップルミント、など多数です。 お気に入りのミントを栽培するのもいいですね。 ミントは、成長力がつよく、いきよいよく伸びるので、様々な種類を一緒に植えたくなりますが、単独で大き目の鉢にうえることをお勧めします。根詰まりがおきないよう、水はけをよくするためにごろ土をいれるとよいです。 ミントは湿り気があり肥沃な土地を好むので、何年もうえているものは、株分けや挿し木をして、環境をよくしてあげます。パイナップルミント ミントのハーブ足湯がおすすめ ハーブバスは、リラックス以外にも、肌がすべすべになった、体の芯からあたたまった、関節が良く動くなどもききますが、体調やお肌にあうかなどもあるため、最初は足湯からはじめてはいかがでしょう? 葉や茎がしっかりしたラベンダーやローズマリー、レモンバーム、カモミール、そしてミントは、入浴に適するハーブとして知られています、お好みのものをあわせていれてもよいですね!生でもドライでも、ミントのよい香りがします。ドライのものは、ガーゼにくるむとよいですね。もっとお手軽なものでいくとエッセンシャルオイルやハッカのオイルもおすすめです。 この季節、匂いが気になる足、つかれた足、むくんだ足がさっぱりとしますね。 ミントを使ったドリンクいろいろ、ミントの緑茶はいかがですか? オレンジジュース、グレープフルーツジュースなどのフレッシュジュースとミントの相性は抜群です。スイカジュースにもあいます。夏の定番といえば、ライムソーダ。炭酸水200CCにライム半個、、ミントの葉4~5枚が目安です。ジンジャエールに添えてもいいですね。 朝のホットドリンクも、夏なのでさっぱりさせたい場合、紅茶にレモンとミントを浮かべます。レモンスライス1枚にミント3~4枚が目安です。意外においしいのが、ミントの緑茶。ミントは4~5枚×人数分を急須にいれ、煎茶をそそぎます。ホットでもアイスでも。 蒸し暑い日がこれからやってきます。毎日、お水とハーブをボトルなどにいれて冷蔵庫で冷やしておくと、いつでも飲めて、美味しいミント水でこまめに水分補給ができますね。ミント緑茶。お好みでお砂糖を入れる方も。 昨夜の夏至の夜をキャンドルナイトですごされた方もいらっしゃるのではないでしょうか? キャンドルナイトは夏至の当日20時から22時まで電気を消し、ろうそくの明かりだけで過ごすというものです。節電を意識し、今自分の持っているものに感謝し、家族・親しい人との絆を持つ時間として夏至の前後の週末に行うのもよいですね。 キャンドルパーティーで、ミントで彩る食卓はいかがですか?また半夏生に、仕事を一段落させた労をねぎらい、ミントやキャンドルでゆったりした時間をもつのもいいですね。 1年の後半戦にむけて、パッと気分がかわり、新しいアイデアも沸いてくるかもしれませんよ! よい1日をお過ごしください。
tenki.jp 2017/06/22 00:00
松井珠理奈が飛び、宮脇咲良が叫ぶ アイドルとプロレスの共通点とは?
福井洋平 福井洋平
松井珠理奈が飛び、宮脇咲良が叫ぶ アイドルとプロレスの共通点とは?
(右)松井珠理奈さん(20)「豆腐プロレス」ハリウッドJURINA役/宮脇咲良さん(19)「豆腐プロレス」チェリー宮脇役(撮影/伊ケ崎忍) 愛川ゆず季さん(34)/元スターダム所属(撮影/写真部・小原雄輝) 赤井沙希さん(30)/DDTプロレスリング所属(撮影/写真部・小原雄輝)  AKB48グループメンバーがプロレスラーに扮し戦う「豆腐プロレス」が人気だ。女性アイドルも続々プロレスに参戦し、賞をとる選手もあらわれた。プロレスとアイドル、一見遠そうなジャンルを股にかける女子が増えているのは、なぜなのか。  プロレスラーだった父の急死を機に、普通の女子高生(宮脇咲良)が父を裏切った元弟子率いる道場に立ち向かうためプロレスデビュー──今年1月から放送されているドラマ「豆腐プロレス」(テレビ朝日系、毎週土曜深夜0時5分~)は、宮脇さんやライバル役の松井珠理奈さんら総選挙上位メンバーを含め、AKB48グループのメンバーが多数出演している。試合シーンはスタントを立てずアイドル本人が打撃技や組み技をあわせて撮影。月に2回、リングでロープに飛んだり受け身を取るなどの練習を重ねてきた。  本格的トレーニングが必要なため、番組出演の意思があるメンバーが手をあげる方式。出演を躊躇するメンバーもいる中、宮脇さんは「新しい世界を一から学べて成長できる」と真っ先に立候補した。  今年1月に東京ドームのプロレス興行を初めて生で観覧して「アイドルとプロレスは似ている」と実感した。 ●喜怒哀楽ぶつかり合う 「倒れそうになっても、声援を力に変えて選手が立ち上がっていた。私たちもファンの方たちに支えられてばかり。どちらもファンがいなければ成立しないジャンルなんだと感じました」  プロレスは場外乱闘や2人がかりの攻撃が一定程度認められるなどルールの幅が広く、選手や技の個性も多様。選手の喜怒哀楽さまざまな感情がぶつかり合い、そこにファンが感情移入する競技でもある。宮脇さんはそこにもアイドル、特にAKB48グループとの共通点があるという。 「私たちは夢の世界の住人ではない。きれいなところだけ見せるのではなく、悲しんだり落ち込んだりしたことをそのまま言うほうがファンの方は支持してくれます。そこもプロレスとすごく似ているなと」  試合部分のトレーナーのプロレスOBからは、悔しい時にリングを叩くなど大きな動きで感情を表現することも学んだ。 「今は、頑張ったり熱くなることがかっこ悪いと思われる時代。そんな時代に私たちアイドルもプロレスも自分の感情をむき出しに、ダメなところも見せたくないところも見せている。そこが私は好きです」(宮脇さん) ●人形から人間になった  ドラマにとどまらずアイドル、特に女性アイドルが実際にプロレスラーになるケースがここ数年急増している。その先駆者が2010年にプロレスデビューしたグラビアアイドルの愛川ゆず季さん(34)だ。彼女にとってプロレスは、自分を「人形から人間にしてくれた」存在だった。  プロレス入り直前はブログのアクセス数を稼げなければ引退といった企画をやるなど「崖っぷちアイドル」といわれていた。 「デビューしてすぐ、雑誌の表紙に出たいという目標を何の努力もせず実現してしまった。その後は、仕事をもらっても出たとこ勝負。がんばれ、と言われるけど、何をがんばればいいのと思っていました」  そんな時、事務所からプロレス入りを勧められ、初めて「打ち込める目標」を手にした気がした。デビュー後は女子プロレス団体「スターダム」に所属。アイドルだからと思われたくなくて「明日のことを考えない、捨て身のプロレス」を心掛けた。体はきつく、家に帰ってコスチュームのまま寝てしまうことも。ベテランのダンプ松本に試合で「ボコボコ」にやられ、実家に帰ってしまったこともあった。 ●もがいてる姿隠すなと 「技術では他の選手に簡単に追いつけないので、わかりやすい努力をしようと思いました。練習も全部参加して移動も他の選手と一緒のバスに乗って、会場の椅子出しもしたし、仕事も両立して、空き時間は一切ないようにしてました」  そのファイトスタイルはファンの心をつかみ、プロレス界では最も権威のある「プロレス大賞」女子部門を2年連続で獲得した。愛川さんも、プロレスは「人間の根本にある喜怒哀楽すべての感情を出して勝負したい人たちの集まり」と表現する。 「どこかコンプレックスがある人が、何かに勝ちたいと思ってやる競技がプロレス。私もたくさん挫折したけど、そのすべてをさらけ出して観客に響かせることが快感でした」  心身の限界から13年に引退した愛川さんと入れ替わるようにデビューしたのが、人気プロレス団体「DDTプロレスリング」に所属するモデル、タレントの赤井沙希さん(30)。昨年に先輩レスラーとの一騎打ちで敗れた後、リング上で「なんでもがいてる姿を隠そうとするの」「(負けて泣いている)その汚い面をカメラに見せなさいって言ってんの」と公開説教を受けた。 「それまではきれいなところだけを見せるのがプロレスと思っていたので、衝撃でした」  長身のプロポーションに加え、父はプロボクサーとしても活躍したタレントの赤井英和という話題性もある。だが、彼女がファンを引き付けるのは追い込まれた時に出た「本性」だ。初めて他団体に出場したときはその団体のファンからツイッターで罵声を浴びせられノイローゼ寸前になったが、試合が始まり相手選手にたくさんセコンドがついているのを見て気が楽になり、顔面を張り合う大熱戦を見せた。 「こっちはセコンド1人なんだからあんたも1人で来いや、と思いましたね。人は簡単に死なないな、と思って戦っています」  DDT傘下の女子プロレス団体には「沙希様」という「よく似た選手」が登場し、相手選手を「白ブタ」「ペリカン」「汚い格好でリングにあがらないで」と罵ってファンのブーイングを浴びる。セリフは事前に作ったものではなく、「思ったことをそのまま言っている」という。 「リング上は学校じゃない、みんな横並びじゃないんだから、もっと人をねため、恨めとほかの選手に言いたいですね」  女性アイドルの「旬」は男性以上に短い。きれいな一面だけを見せる仕事に飽き足らなくなった時、彼女たちは全人格と感情をかけて戦えるプロレスのリングを目指すのかもしれない。 (編集部・福井洋平) ※AERA 2017年6月26日号
AERA 2017/06/20 16:00
バブル時代の「ベルサッサ」って!? バブ男・バブ女の“仰天体験”
バブル時代の「ベルサッサ」って!? バブ男・バブ女の“仰天体験”
日経平均株価の推移と第一生命「サラリーマン川柳」の一句 「クルマ買いなよ。マイホームは?」「若いうちはお金使わなきゃ」。今、バブルおじさん、おばさん(以下「バブ男」「バブ女」と略)が価値観を押しつける“バブルハラスメント(バブハラ)”が職場で蔓延し、若者から冷ややかな視線を浴びている。そんな価値観の違いからすれ違う若者と「バブ男(お)」「バブ女(じょ)」だが、バブル世代にも言い分があるようだ。  アラフィフの本誌女性記者(昭和44年生まれ)がバブル世代の思いを伝えたい。  あのころは、バブ女のほうがバブ男よりいい思いをしていたはず。「メッシー」「アッシー」を使い分け、飲みに行ってもお財布を出すふりしてお金は出さない。  まずは元・丸の内商社OL(54)の話。 「当時は、正午が近づくとお財布だけ持ってタクシーに乗って昼食へ。ホテルランチが日常茶飯事で、土用丑の日は鰻を食べに神田へ。六本木や銀座で飲んだ後はいつも自宅(東京・成城)にタクシー帰り。冬には、金曜夜に会社から大型バスで苗場(スキー場)へ直行、日曜夜に東京に戻るというのを毎週やっていたね」  記者が91年に入社した外資系金融機関では、多くの人が5時の終業ベルとともにさっさと帰る「ベルサッサ」。結婚して寿退社が当たり前の時代だから、30すぎれば肩たたき。彼氏がいない人は、仕事よりアフター5の婚活にいそしんだ。  結婚式は、スポットライトやドライアイスの豪華な演出も多かった。ゴンドラに乗って演歌歌手みたいに登場する披露宴や、4回お色直しする“花嫁全然見られない”式もあった。毎週披露宴や2次会に顔を出す友人もいて、給料の大半がご祝儀に消えても、「自分のときに取り返すもんね」。  男性会社員(49)は語る。 「車にサーフボードを載っけて六本木で女の子を拾って遊ぶ。いい車に乗ってイイ女乗せるのがかっこいいよね、という時代。最近の若者は、車にも恋愛にもカネをかけないみたいだけど、俺らの時代みたいな、動物的な生き方がかっこ悪いと感じているのかも。だから、自分は若い人を飲みに誘わないよ。わかっているから、価値観の違いを」  バブル世代が集まると、当時の話に興じてしまう。あのころは楽しかったねぇと、ネタ半分、説教半分。つい、若者にも伝えたくなってしまうほどの「二度と味わえない」と感じる体験。それがバブルだった。  50代のバブ男は「今の中高年はハッピーじゃないから、話していると乗ってきちゃう。悪気はないですよ」。教訓を垂れると気持ちいいし、若いころは自分も年長者の説教に学んだ、という。 「24時間戦えますか」というCMがはやった時代だ。土日でもアフター5でも上司の頼みなら動いた。が、今の若者はどうだろうか。飲みに誘って、「それ、業務命令ですか」とは寂しい。  バブル世代には、「昔と今は情報や選択肢が違う。われわれの時代の価値観との比較は無意味」と若者に寄り添う元バブ男(48)もいる。一方で、バブルの価値観から抜けない人も。  会社員のバブ女(50)は今もブランド服を身にまとい、ことあるごとに海外旅行を楽しんでいる。「今の若者は『働いたご褒美に海外旅行』という感覚がないのかしら。不安が多いのはわかるけど、未来は明るいと思ってほしい」。バブ男もバブ女も数え切れないほどの出会いと失敗を重ね、人生を謳歌してきた。  実は、記者は学生時代まで臆病者だった。が、社会人になってバブ男とバブ女に感化され、前向き精神が身についた。“バブル菌”とともに鈍感力もつき、いろんなことにたくましく挑戦できるようになった。が、もし違う時代に生まれていたら、きっと違う生き方をしていたと思う。  世代が違えば、考え方が違うのは当たり前だ。「バブル世代はうざい」「今の若者は……」なんて互いに言ってないで、明るく仲良く、今を一緒に生きようじゃありませんか。 ※週刊朝日 2017年6月23日号
働き方
週刊朝日 2017/06/20 11:30
「バブルおじさん」に若者は冷ややか 職場にはびこる“バブハラ”
「バブルおじさん」に若者は冷ややか 職場にはびこる“バブハラ”
「バブルおじさん・おばさん度」チェック(週刊朝日 2017年6月23日号より)  最近、バブルがブームだ。1990年前後の経済の回顧本が話題を集め、バブルをネタにするお笑い芸人が大人気。バブル入社組は今や管理職世代で、会社でも幅をきかす。でも、そんなバブルおじさん・おばさんたちが若者から冷ややかな視線を浴びていること、知っていますか?  東京都内のシンクタンクに勤める会社員男性(32)は、50代の男性上司からよくこう言われる。 「男は働いてなんぼ」「若いときの苦労は買ってでもしろ」  上司は午後6時半の終業前に近づいてきては、「明日までに資料をつくってくれ」と事もなげに言う。男性は妻と共働き、2歳の子がいて、家事や育児を分担中。さすがに仕事は断れないが、内心うんざりだ。 「専業主婦に支えられた男ばかりではないことに気づいてほしい。現状を伝えても『昔は徹夜してでも仕事した』と逆に説教される。理解してもらえません」  働き方、人づきあい、休日の過ごし方、お金の使い方……。1990年前後に入社して現在50歳前後のバブルおじさんと、20代~30代前半の若手の意識は大きく違う。いつの時代も「今どきの若者は」と世代間の溝はある。ただ、最近は次元が違うようだ。  バブル期は実質経済成長率が5%前後だったが、近年はほぼゼロ成長。女性の就業率(25~34歳)はバブル期に5割台だったが、今は7割台。人口減少・高齢化社会を迎え、医療や介護の負担が重苦しい。ネットや携帯電話が普及し、経済も社会も激変した。  ライフネット生命保険の出口治明会長は、著書『働く君に伝えたい「お金」の教養』でこう記している。 <「昔はよかった」というおなじみのフレーズでみなさんを惑わせる困った人たちがいる。その困った人たちこそ、かつてのバブル期を20代から30代のときに経験したおじさん、おばさん世代。通称「バブルおじさん」です>  記者(33)は「ゆとり」よりやや上の世代だが、バブルおじさん、おばさん(以下「バブ男(お)」「バブ女(じょ)」と略)への若者の苛立ちに共感する。その煩わしさは、“バブルハラスメント(バブハラ)”だ。  東京都内の女性公務員(33)は昨年のボーナス支給時、50代のバブ女との会話がうっとうしかった。 「何に使うの。海外旅行、お洋服?」。女性が「貯金します」と言うと、「何それっ? 若いうちは使わなきゃ。給料は上がるから、何とかなるわ」。バブ女は同僚にも「聞いて、全部貯金だって」と同調を求め、「年上相手のうえ、一対多数で苦しかった」と女性。  バブ男やバブ女と若者はすれ違う。なぜ海外旅行に行かないの、家や車を買わないの、お酒を飲まないの、残業しないの?……。  都内のIT企業勤務の男性会社員(27)はバブ男の上司との飲み会で、「子供ができたら、車を買え」と勧められた。「いらないですよ」と答えると、「今どきの若者は夢がないな」と説教される。車は維持費もかかり、特に憧れない。電車の旅も悪くなく、必要ならレンタカーを借りればいい。正直にそう思うだけなのに。  人材サービス会社で働く男性(30)はバブ男の上司に、身内だけで結婚式を挙げると報告した。すると、「職場の人は呼ばないのか」とけげんな表情。男性は「盛大な式でお披露目し、上司も招待されるイメージなのでしょう。でも、上司を呼ぶと堅苦しいし、節約もしたくて身内でやりました」。  男性銀行員(27)は上司のバブ男と飲みに行っても、1次会で帰る。翌朝聞けば、バブ男たちは4次会まで重ねてタクシー帰り。その感覚が信じられない。 「おもしろい話が聞けるなら、つきあいますが、仕事の話や小言は聞きたくない。時間とお金の無駄ですね」  男性は親しい友人や同期を呼び、よく家飲みをする。「気楽で、沈黙があっても気まずくない」という。  住まいも価値観が違う。  大学職員の男性(28)は、40代の上司からマイホームをよく勧められる。 「とりあえず、中古マンションを買ったらいい」 「お金がない。まだいいです」 「賃貸に住み続けるのは無駄。いらなくなれば、売ればいい。ローンも家賃も払うことには変わらない」 「今は生活が精いっぱい」  そんなやりとりが続いた。男性の思いはこうだ。  ローンは頭金をためる必要があるし、利息もかかる。中古を買っても資産価値が下がって売れないか、もし売れても安いだろう。  どこの職場でも、世代間のギャップを感じる人が多いのだろう。第一生命「第30回サラリーマン川柳コンクール」で、愛知県の30代女性はこう詠んだ。 ゆとりでしょ? そう言うあなたは バブルでしょ?  約11万5千人が投票し、6千票近くを集めて1位に輝いたのがこの句だった。 ※週刊朝日 2017年6月23日号
働き方
週刊朝日 2017/06/20 11:30
進化するグルメ缶詰が飲兵衛を救う
進化するグルメ缶詰が飲兵衛を救う
パケ買いしたくなるようなスタイリッシュなパッケージも増えた新世代のグルメ缶詰(撮影/写真部・大野洋介)  疲れ切った。酒場に行く元気も、自力でつまみを作る気力もない。でも飲みたい! そんな夜のお供には、缶詰がイイ。 「利尻島産むしうに」やら、「だし巻き」やら、「名古屋コーチン胡麻担々」やら「貝柱のアヒージョ」やら……日本料理店の元板前あたりが開いた、創作料理店のメニューではない。なんとこれ、本当にある「缶詰」なのだ。  またの名を「グルメ缶詰」とも呼ばれるクオリティーで、お値段は1缶300~1千円前後が中心。しかも最近は、近所のコンビニやスーパーで、手軽に買えるものも増えている。  そんな缶詰の進化話の前に、ちょっとその歴史のおさらいから。実は缶詰のルーツは1800年代の初め、かのナポレオンが遠征するフランス軍のために、食品の長期保存のアイデアを公募したことにさかのぼる。  このとき採用されたのが、ガラスびんに料理を真空詰めにして、びんごと加熱して殺菌するアイデア。数年後、これをヒントに、ブリキの缶に食品を真空詰めにして保存する「缶詰」が発明された。 ●万年床から料亭へ  とまあ当初は最先端技術を駆使したバリバリのイノベーションだった缶詰技術だが、200年の時を経た現代の日本では、味気ない酒のつまみの代名詞に成り下がったこともあった。サバ缶とワンカップを開けるときの「プシュ」音のハーモニー。これほど、万年床のアパートに似合うものもなかった。  そんな缶詰が、大きく様変わりしたのはここ数年のこと。缶詰で酒を飲む「缶詰バー」の草分け、「mr.kanso」を運営するクリーン・ブラザーズの川端三知夫さんはこう話す。 「1号店を大阪市の南堀江に開いたのが2002年。当時はおつまみになる缶詰といえば、サバとツナくらいしか思いつかないような時代でした。それが今、店で用意する缶詰は300種類以上。爆発的に増えました。さまざまな食品の缶詰開発に、多くのメーカーが挑戦して、おいしい缶詰が数多く登場した結果ですよね」  そもそも「どんな食品でも、詰めるだけなら可能」(川端さん)という缶詰だが、缶を開けたとき、食品本来のおいしさを簡単に再現できるかというと、そうでもない。実は同社も、全国から見つけてきたおいしい缶詰300種類以上をバーで提供しているほか、自社でもオリジナル缶詰を開発。ネットショップや店頭で販売もしている。  たとえば、ヒットしている同社オリジナル商品の「だし巻き」。老舗料亭とのコラボで、関西のおつまみの定番「だし巻き」を缶詰にした商品だが、 「製造工程で、缶への加熱の温度と時間を少しずつ変えながら、味や食感の変化を観察、時間をかけてようやくたどり着いた自信作です」(同)  なるほど、そのふんわり+ジュワーの食感は、上等な器に盛りつければ、料亭で仲居さんが運んできてもおかしくないレベル。こうして「おいしい缶詰」が続出したころ、東日本大震災をきっかけに防災意識が高まり、保存食としての缶詰も注目されるように。 ●家飲みブームにマッチ  また前後して、おいしくなった新世代の缶詰が「家飲み」「宅飲み」のブームにもマッチ、こうして数年前から空前のグルメ缶詰ブームが起こっている。  このブームをリードしてきたのが、大手缶詰メーカーだ。明治期から缶詰の販売を行ってきた大手食品卸「国分グループ本社(国分)」は、1990年代以降市場規模が縮小の一途をたどっていた缶詰製品に危機感を感じ、2010年、缶詰製品の新たな展開を仕掛ける。今やグルメ缶詰の代名詞にもなっている「缶つま」シリーズの販売開始だった。  缶詰を素材にしたつまみのレシピ本『缶つま』(世界文化社)の発売をきっかけに、「おいしいおつまみの素材」という用途を絞り込んだ缶詰「缶つま」シリーズを開発。 「無料のレシピブックなどとともに初年度発売された14アイテムは、500~800円という、缶詰にしては高めの価格にもかかわらず、年間100万個以上を売り上げるヒットになりました」(国分広報部) ●リアリティーを重視  こうしてグルメ志向の缶詰という、缶詰界の新たなジャンルを確立。現在は、「缶つま★レストラン」や、燻製アレンジの「缶つまSmoke」「缶つまプレミアム」「缶つまホルモン」など、高級居酒屋のつまみ風から、一杯飲み屋のつまみ風までラインアップも充実させ、100種類以上のシリーズ商品を世に送る。  というわけで、大盛り上がり中のグルメ缶詰ワールド。人気の30種類の人気投票を、編集部でおこなった。ルールはこう。mr.kansoのネットショップや、国分が運営するセレクトショップ「ROJI」(東京・日本橋)のほか、デパ地下、コンビニなどの缶詰売り場を物色して、人気の缶詰商品を購入。編集部にいた約30人が、ワイン(白・赤)、日本酒、ビールという3種のアルコールとのマリアージュで、それぞれ相性がいいと思った商品に投票した。  ちなみに缶詰といえば、世の女性誌では、缶詰を素材に使ったレシピを紹介する企画が花盛りだが、AERAではそれらを尻目にリアリティーを重視。 「仕事でヘトヘトになって家に帰り着いた時でも、開ければすぐさまおいしいつまみになるかどうかが知りたい」  という、酒好きデスクのリクエストで、ノミネートした缶詰の加熱や調理は一切なし。開けたまんまを味わって投票した。  まず、ずらりと並べてわかったのは、ナポレオンもびっくりの豊富な缶詰のバリエーションだ。たとえば昔の缶詰おつまみの定番、オイルサーディンなど魚介類の缶詰にしても、アヒージョ風に仕上げたり、はたまたトマト煮など凝った味付けを施したりと、1ランクも2ランクも進化している商品が多い。  そして、ここでファンファーレ! 気になる投票結果は……。  まずビールとの相性で人気を集めたのが「イベリコ豚ランチョンミート缶詰」(アシストバルール)だ。コンビーフのイベリコ豚版のようなミート缶で、「素材の濃厚な味わい」を冷たいビールでぐびぐび洗う至福の時が楽しめる。  続いてワインの部で得票トップは「缶つま★レストラン 厚切りベーコンのハニーマスタード味」(国分)。「甘じょっぱさがいい」と、とくにすっきりした白ワインとの相性の良さを挙げる声が多かった。日本酒では、「かにみそ かに肉入り」(マルハニチロ)がトップ。かに缶は昭和のお中元の定番だったが、こちら「かにみそ」缶。かに肉の存在もしっかり生きていて、日本酒をちびちびやるのにぴったりの一品となっている。 ●グランプリは……あれ  そしてワイン、ビール、日本酒の3部門の票をまんべんなく集め、グランプリに輝いたのは、意外にもこちら。「いぶりがっこ」(こまち食品工業)だった。  いぶりがっことは、秋田県の名物として知られる大根の漬物のこと。いぶり、つまりスモークした風味がほんのり香る、大根漬物界の重鎮だ。その缶詰は「歯触りのよさ」や「きっぱりした塩気がいい」などのコメントとともに大量得票。たしかに、缶詰を感じさせないパリパリとした食感や切り立ての味わいが、どんな酒にもよく合う。  だったら、缶詰じゃなくてもよくない?とか言わないで。こちら賞味期限3年の長期保存が身上。仕事でヘトヘトになって帰り着く予定のある酒ラバーたち。常備せよ! ※AERA 2017年6月5日号
グルメ
AERA 2017/06/05 16:00
6月の詩歌 ──「雨」が連想させるイメージ
6月の詩歌 ──「雨」が連想させるイメージ
明日から6月。一年の半分が過ぎようとするこの時季は、雨の季節でもあります。 家事や仕事で外まわりをする人にとって、長く続く雨はうっとうしいものですが、一方で、降り続く雨を題材にした名曲も多く、日本人は雨に様々な情緒を読み込み、古くから「雨」はいくつかのイメージに彩られてきました。 そこで今回は、平安時代からのイメージを詩歌とともにひもといてみましょう。しのつく雨に、かたまって雨宿りする猫たち…… 逢引もままならない雨の日 「万葉集」には「雨障(つつ)み」という言葉があって、雨の日は基本的にこもっているべきものであったと考えられています。逢引(あいびき)も雨の日にはするべきではないと考えられてきたのです。天からこの世に降るものは、神聖で危険なものであったからです。 そんな信仰もあって平安時代には、「雨」は恋人に会えない、ぼんやりと一人でもの思いするというイメージを伴っていました。 〈つれづれのながめに増(ま)さる涙川 袖のみ濡れて逢うよしもなし〉藤原敏行 この「ながめ」は「長雨」のことで、「眺め」との掛詞になっています。「つれづれ」はすることもできないぼんやりした心理状態を表しますから、恋人にも会えないので、「長雨」をなんとなく「眺め」ているしかしょうがない、ということだったようです。 〈今はただうき身にうき世にありかねて まどうつ雨ぞ友になりぬる〉慈円 物憂(ものう)いので、雨の音が友達になる、といっているのです。雨が続くとなんとなく考え事をしてしまいますね。俳句にも次のようにあります。 〈ありとあるものの梅雨降る音の中〉長谷川素逝 〈梅雨に入るはるかなる世を見つめつつ〉野見山朱鳥雨を題材にした名曲、みなさんはいくつ思い出せますか? 一人もの思い、ものを書く 雨が降っているため恋人に会えないので、手紙を書きます。気分はどちらかというと、内省的なものになっていきます。「雨」が「ものを書く」ことを誘いかけるのです。 〈時鳥(ほととぎす)雲居(くもい)のよそに過ぎぬなり 晴れぬ思いのさみだれのころ〉後鳥羽院 〈漏らすなよただ手習とことよせて 書き流しつる水茎(みずくき)の跡〉飛鳥井雅経 まとまった文章などではなく、なんとなく手元の紙にいたずら書きをすることを「手習」といいましたが、物思いにふけりながら、書き流してしまった筆跡を他人には見せないでください、という意味です。「水茎」は筆跡のこと。 このような複数のイメージが重なって、「雨」と「書くこと」が言葉の歴史の中で結びついているのです。 〈おほかたにさみだるるとや思ふらむ 君恋ひわたる今日のながめを〉和泉式部 〈五月雨(さみだれ)にもの思ひおれば時鳥 夜ふかく鳴きていづち行くらむ〉紀友則 〈先頭を駈(か)けゆくわれもそして わが未来も雨脚(あめ)に先取りされつ〉福島泰樹 〈梅雨の雷(らい)何か忘れゐし胸騒ぐ〉加藤楸邨 雨はいろいろなことを思わせます。過去のことだけではなくて、未来のことや何か忘れてしまったことにも思いはめぐります。この先、雨が降った日には、王朝人にならって、メールではなくてハガキを書いてみてはいかがでしょうか。雨には、手書きの文字が似合います
tenki.jp 2017/05/31 00:00
がらんどうの銀河の岸辺で・宮沢賢治「春と修羅 序」後半を読み解く
がらんどうの銀河の岸辺で・宮沢賢治「春と修羅 序」後半を読み解く
5月もいよいよあと2日を残すところ。春は終わり、季節は梅雨、夏へと向かいます。 さて、先ごろ、拙文「『透明な幽霊』とは何か?宮沢賢治『春と修羅 序』前半を読み解く」で、宮沢賢治生前唯一の詩集「心象スケッチ 春と修羅」の、難解とされる序文の前半について解釈を試みました。賢治の人間観/生命観とは、生命は摂食と呼吸によりたえず外界と交じり合い、未来や過去とも行き来する(銀河交流)電燈だとするものである、と読み解きました。「序」の後半では、賢治の科学・文化観が、詩的イマジネーションをもって叙述されます。 「春と修羅 序」は既存の歴史や宗教への挑戦状だった 「春と修羅」出版から約一年経ったあとにしたためられた私信で、賢治は「春と修羅 序」についてふれています。 前に私の自費で出した「春と修羅」も、亦それからあと只今まで書き付けてあるものも、これらはみんな到底詩ではありません。私がこれから、何とかして完成したいと思って居ります、或る心理学的な仕事の仕度に、正統な勉強の許されない間、境遇の許す限り、機会のある度毎に、いろいろな条件の下で書き取って置く、ほんの粗硬な心象のスケッチでしかありません。私はあの無謀な「春と修羅」に於て、序文の考を主張し、歴史や宗教の位置を全く変換しやうと企画し、それを基骨としたさまざまの生活を発表して、誰かに見て貰ひたいと、愚かにも考へたのです。 (大正14(1925)年2月9日 森佐一あて封書より) 反響の少なさに落胆していることから卑下した表現をとっていますが、賢治がその「序」にこめた思いが、壮大な既存世界への挑戦状だったことがわかります。では何を、どう「変換」しようとしたのでしょうか。 記録や歴史 あるいは地史といふものも それのいろいろの論料(データ)といつしよに (因果の時空的制約のもとに) われわれがかんじてゐるのに過ぎません 人類が営々と記録してきた書物による「記録」は、「けだし(考えてみるに)」人が感覚器官を通じて感じたりさまざまな印象を抱いたりするのとまったく同じで、私たちがそう感じて受け取っている印象、イメージに過ぎない、と賢治は言います。 歴史資料も科学の示す証拠(エビデンス)も、全てただの無意味な主観にすぎないのだ、と賢治はいっているのでしょうか。 「変換」により、見えなかった透明な生物たちがあらわれ出る 「序」はここからこう続きます。 おそらくこれから二千年もたつたころは それ相当のちがつた地質学が流用され 相当した証拠もまた次次過去から現出し みんなは二千年ぐらゐ前には 青ぞらいつぱいの無色な孔雀が居たとおもひ 新進の大学士たちは気圏のいちばんの上層 きらびやかな氷窒素のあたりから すてきな化石を発掘したり あるいは白堊紀砂岩の層面に 透明な人類の巨大な足跡を 発見するかもしれません ここで語られている「氷窒素」の気圏から発掘される「化石」は、すでに多くの研究者に指摘されているように、「銀河鉄道の夜」の中で、ジョバンニとカムパネルラが唯一下車するシーンで対応する箇所があります。 「いや、証明するに要るんだ。ぼくらからみると、ここは厚い立派な地層で、百二十万年ぐらい前にできたという証拠もいろいろあがるけれども、ぼくらとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、あるいは風か水やがらんとした空かに見えやしないかということなのだ。」(「銀河鉄道の夜」<七、北十字とプリオシン海岸>より) 銀河の河原で、巨大な太古の牛の化石を掘り出している大学士はこういいます。彼にとっては立派な厚いしっかりした地層が、もしかしたらそれは自分にはそう見えてるだけで他の者から見たら「風か水かがらんとした空」に見えるんじゃないか、と心配しているのです。 実際、発掘現場は銀河の河原なのですから、地球上の私たちがもしその場所を望遠鏡で観測しても、「がらんとした空」空虚な宇宙空間があるだけでしょう。 たとえば動物の分類にしても、アライグマの仲間とされていたパンダがクマの仲間に分類されるようになったり、ワシやタカの一種と考えられていたハヤブサがスズメの仲間にふりわけられたり、あるいは古生物学も、冷血動物の爬虫類とされ、直立してのろのろ歩いている想像図の恐竜が、あっという間に羽を生やして鶏のようにちょこまか駆け回る想像図につけ換わったり、天文でも冥王星が惑星からはずされてしまったりと、科学の「定説」はめまぐるしくアップデートされ、現在言われている定説や事実も、いずれまた書き換えられることになるのは間違いがないでしょう。 しかし賢治は、こうした科学的定説のめまぐるしい変化をもって、移り変わる科学を信用するなとか、間違いの連続だといっているわけではありません。それらはそのときは実際に「そう感じられるままに事実だった」といっているのです。しかし一方、たとえどんな精密機材で測定して得たデータも、再現性の高い科学的エビデンスも、すべてそれは「そのように見えて(感じられて)いるもので、普遍ではなく常に変動するのだ、といっているのです。 そのように科学を観測者の感じるままのものだと認識するのならば、将来、精妙な大気や水の中か、また何もないとしか思えない場所から、目に見えない生物の痕跡を見つけることも出来るようになるだろう、というのです。 これらの喩えはきわめて美しく、またスケールが大きい奇抜なイマジネーションですが、実際私たちが「生命」というものを地球上に生きる炭素を素材とした生物を想定している限りは、気圏に痕跡を残す巨大な孔雀も、恐竜時代に存在していた透明な人類の痕跡も見つけることは出来ないでしょう。賢治は、これを単なる詩人のイマジネーション、ただの空想や比喩として提示していたわけではないこと、実際に本当にそれらのものが見つかるはずだと考えていたことこそが、この「序」の持つ意味です。 近年、科学の世界では宇宙には珪素を素材とした、地球上の生物とは全く異なる生命体がいるかもしれない、という仮説が提示されてきています。珪素だけではなく、何千度に燃える恒星の中にすら、熱そのものを呼吸する生命体がいないとも限らないのです。 「巨大な人類」のイマジネーションは、グノーシス主義の教義の中で、「アダム・カドモン」なる始原の巨人がいたとされます。おそらく賢治はそれも知っていました。賢治の生きた時代、19世紀の終わりから20世紀の前半は、オカルティズム(神秘主義)が世界的に大流行した時代だったからです。 賢治はトシに出会えたのか? さて、いよいよ結びのくだりです。ここも一見難しい言い回しが登場します。 すべてこれらの命題は 心象や時間それ自身の性質として 第四次延長のなかで主張されます 「第四次延長」とは、相対性理論の「四元ベクトル」のことだと容易に理解できます。「四元ベクトル」とは、物体の存在に無関係に空間と時間が普遍的座標で存在しているとする三次元空間(ユークリッド空間)に時間と光速度を乗じた四次元時空のことです。アインシュタインの特殊相対性理論を説明する理論的モデルとして1907年にヘルマン・ミンコフスキーによって提唱されました。賢治が「春と修羅」を著す大正13年の二年前、アインシュタインが日本に来日し、日本では大変なアインシュタインブームが巻き起こっていました。賢治自身がアインシュタインに言及したことは、メモの断片に「アインシュタイン先生」と記したものが見つかっているのみですが、賢治が、当時の最先端の相対性理論や量子力学に影響を受けていたことは間違いありません。 賢治にとってはミンコフスキー時空の理論は大いに救いになったはずです。なぜなら、時間と空間はひとつであり同じものなのですから、この世界、地上をどこまでも、この世の果てまで旅すれば、三次元空間から四次ベクトルの時空に入り込み、死んだものたちに出会えるかもしれないとも考えられるから。それが妹トシを思って1923年7月31日から8月12日にかけて、北海道を経由してサハリン(樺太)までの鎮魂旅行でした。それは詩篇として「オホーツク挽歌」の詩群、「銀河鉄道の夜」の死者たちとの旅へと昇華します。賢治の思いは、この世に生きている誰もが抱いている「会えなくなった愛する者に会いたい」という願いに満ちているため、読者の誰もの胸を締め付ける共感を呼ぶのでしょう。 それにしても、「幽霊を見ていた」とも一部の評伝で伝えられる賢治は、トシ子の幽霊に出会えたのでしょうか。 《みんなむかしからのきやうだいなのだから けつしてひとりをいのつてはいけない》 ああ わたくしはけつしてさうしませんでした あいつがなくなつてからあとのよるひる わたくしはただの一どたりと あいつだけがいいとこに行けばいいと さういのりはしなかつたとおもひます (青森挽歌) どなたかポーセを知っているかたはないでしょうか。けれども私にこの手紙を云いつけたひとが云っていました「チュンセはポーセをたずねることはむだだ。なぜならどんなこどもでも、また、はたけではたらいているひとでも、汽車の中で苹果(りんご)をたべているひとでも、また歌う鳥や歌わない鳥、青や黒やのあらゆる魚、あらゆるけものも、あらゆる虫も、みんな、みんな、むかしからのおたがいのきょうだいなのだから。チュンセがもしもポーセをほんとうにかあいそうにおもうなら大きな勇気を出してすべてのいきもののほんとうの幸福をさがさなければいけない。(手紙 四) これらを読む限り、会えなかったと思われます。石炭袋に消えたカムパネルラを思って泣いたジョバンニのように、がらんどうの銀河のような、凍てついた原野を流れる川の岸辺で立ち尽くして慟哭したのではないでしょうか。 地理学者で宮沢賢治研究で著名な米地文夫氏によれば、宮沢賢治は晩年、書きついで来た従来の童話から、より年長に想定した長編の「少年小説」の執筆を構想しており、「銀河鉄道の夜」はその少年小説への脱皮と転換をうかがわせる描写があると指摘しています。37年で閉じられた賢治の人生が、50年、60年と続いていたら、どんな作品が著されたのかと思うと、その早すぎる死を恨みたくなります。そう思う私たちに宛てたメッセージが上記の「手紙 四」なのではないでしようか。 参考文献 「プリオシン海岸挿話」について 米地文夫
tenki.jp 2017/05/30 00:00
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